<声明>
2012年6月13日
国の責任を放棄する生活保護制度改悪は許さない
―生活保護は憲法に保障された国民の権利―
京都自治体労働組合総連合
執行委員長 池田 豊
生活保護受給に関わって、昨今一部マスコミによる人気タレントの親族の受給に対して異常な報道がなされている。一連の報道では、現行制度上不正受給にあたらない当該の事例に対して、不正受給であるかのような印象を与えるなど、生活保護制度利用者と国民を分断し、生活保護制度そのものに対して誤解を招く内容になっていることは見過ごすことができない。
一連の報道による生活保護バッシングを追い風に、厚生労働省は6月4日、国家戦略会議に報告した生活保護制度の改悪案を盛り込んだ「生活支援戦略」骨子で生活保護費の削減を推し進めようとしている。骨子では、財界や自民党が求める生活保護基準の引き下げの検討とともに、扶養義務者の資産調査を行い、「扶養が困難な理由を証明する義務」を課そうとしている。現在でも生活保護の申請があると、福祉事務所から親族に照会文章が送付され、申請が親族に知られたくないと、保護申請をためらう大きな要因となっていることからみても、扶養困難な証明の義務付けは、生活保護を受ける権利を侵害するものでしかない。
これまでも、生活保護制度利用者に対する機械的な就労指導の強化や、管理体制強化をねらって警察官OBの福祉事務所への配置など、受給抑制のための「運用」の締め付けを行ってきたが、今回の骨子は、生活保護法そのものの改悪に踏み込むものであり決して許されるものではない。
政府の生活保護制度「適正化」の背景には、野田内閣が大企業の負担軽減とそのための財政削減を目的とした、新自由主義に基づく「構造改革」をいっそう協力に推し進めようとする動きがある。
生活保護制度利用者が劇的に増加している背景には、社会保障制度の改悪とともに、不安定雇用労働者の増大、派遣切り、極めて脆弱な雇用保険制度や年金制度がある。今の生活保護制度では、本来必要とする人の2割程度しか利用できていないという根本的な問題もある。こうした問題が、札幌や埼玉、東京などで起きた「餓死」「孤立死」といった悲惨な事態を引き起こす要因となっている。
政府が最低賃金の引き上げや労働者派遣法の抜本的改善など「働くルール」を確立し、社会保障制度全体を拡充し、こうした事態をなくすことこそが早急にとるべき政策である。
今、自治体に求められることは、一部マスコミによる誤った報道や、厚労省による過重な就労指導の強化、警察官OB配置による管理体制強化等に追随することなく、憲法25条が定める「健康で文化的な最低限度の生活」を保障するための生活保護制度の運用、そして福祉事務所の人員をはじめとした実施体制を拡充することである。
私たちは、自治体に働くものとして、住民の生活実態に目を向けるとともに生活保護制度を住民から遠ざける運用や制度改悪に反対し、国の予算の充実を求めるとともに、福祉事務所の体制の充実と専門性の確保にとりくみ「税と社会保障制度改革」を許さないたたかいとあわせて奮闘するものである。