約60年ぶりの「勧告見送り、報告のみ」−2013人事院「報告」をうけて

憲法違反の賃下げ容認、賃金制度の全面改悪を目論む13人事院「報告」に断固抗議する!

2013年8月8日
京都自治体労働組合総連合

1.憲法違反の賃下げ容認、約60年ぶりの「勧告見送り、報告のみ」、総人件費抑制、賃金制度全面改悪を進める13人事院「報告」を厳しく糾弾する。

  人事院は8月8日、国会と内閣に対して、1954年以来となる「勧告なし、報告のみ」という、2013人事院「報告」を行った。その内容は、昨年4月からの国家公務員の賃下げ(平均7.8%)を容認し、減額前の月例給が民間との較差が小さく給料表の改定なし、ボーナス(一時金)も官民の支給月数が均衡しており改定なし、給与制度の総合的見直しの実施というものである。

 人事院は、昨年の勧告では、減額措置前の比較で給与改定を見送り、本年についても、昨年の方式を踏襲し、公務員の賃金実態が相当程度民間を下回る中においても勧告を見送った。このことは、国公法第28条「情勢適応の原則」にもとづく人事院勧告制度がまったく機能していないことを明らかにするもので、法で定めた国家公務員の賃金のあり方(生計費や民間との均衡等)や人事院の役割を放棄したものであり断じて認めるわけにはいかない。

 報告の概要は、?月例給の較差は減額前76円(0.02%)−公務が民間より低い。減額後だと29,282円(7.78%)−だが、減額前の官民較差が小さく給料表の改定は行わない。?一時金(ボーナス)は、現行3.95月で、民間3.95月と均衡しており改定なし。?雇用と年金の接続(再任用職員の給与)については、報告見送り。 ?給与減額措置終了後に、俸給表構造、諸手当のあり方を含む給与制度の総合的な見直しを実施できるよう準備に着手。 ?公務員制度改革に関する報告−幹部職員人事の一元管理、内閣人事局の設置と人事院の機能移管等。 ?配偶者帯同休業制度に関する意見の申出。 ?人事評価の適切な実施・活用−など、である。

 京都自治労連は、京都公務共闘・公務労組連絡会に結集し、国家公務員の賃下げ違憲訴訟の支援とともに、地方公務員への賃下げ強要を許さず、賃下げ中止を求める闘いとあわせ、希望者全員が任用される再任用制度の確立、退職強要につながらない早期退職募集制度の実現などの闘いに全力をあげるものである。

2.2013人事院報告の問題点

 人事院は、労働基本権剥奪のもとで、その代償機関として、国家公務員の賃金労働条件を維持向上させていくことに責任がある。その上で、今回の2013人事院「報告」の問題点を大きく4つの点で指摘しておきたい。

 第一に、昨年4月から実施されている憲法違反の平均7.8%の賃下げを容認していることである。国家公務員370名を原告として「国家公務員賃下げ違憲訴訟」が闘われているが、憲法で保障された労働基本権、対等平等の関係で労働条件を決定するとした労働基本法、スト権剥奪のもとでの代償機関としての人事院勧告を無視し、労働組合との合意のないままの一方的不利益変更、など憲法違反であることは明らかである。13報告でも、「特例減額措置は民間準拠による改定とは別に東日本大震災に対処するための臨時特例であることを踏まえて」として、削減前のもらってもいない賃金と民間との比較により、勧告を見送るという「賃下げ」容認をしていることが最大の問題である。

 第二には、雇用と年金の接続に関して、再任用職員の賃金水準等の勧告を先送りしたことである。2014年4月から年金が支給されない定年退職者が発生するもと、再任用職員は賃金も確定せず、生活不安を増大させるものであり、重大な問題である。

 第三には、給与減額措置終了後の更なる賃下げにむけて、俸給表構造、諸手当のあり方も含めて、給与制度の総合的見直しを実施できるよう準備に着手するとしたことである。主な検討課題として、「民間の組織形態の変化への対応」「地域間の給与配分のあり方」「世代間の給与配分のあり方」「職務や勤務実績に応じた給与」などであるとしている。給与制度の全般にわたる見直しは、成績主義強化、総人件費のさらなる抑制により、公務労働者の生活を悪化させるとともに、地域給与の見直しが地域経済にも重大な影響を及ぼしかねない問題を持っている。

 第四には、臨時・非常勤職員の処遇改善が急務であるにもかかわらず、昨年に続き何ら触れることもなく、人事院としての役割を放棄し、均等待遇に背をむけていることである。最低賃金水準の非正規雇用公務員は、世界標準である均等待遇からほど遠く、官製ワーキングプアとしての実態は、社会的にも批判が強まっているもとで、何ら言及がないことは、格差を追認・推進するものと言わざるを得ない。

 以上のように、労働基本権剥奪の代償機関としての人事院ではなく、政府の都合のいい公務員づくりのための人事政策推進のための人事院であると言わざるを得ない。

3. 全組合員の力を集めて13秋期年末闘争をたたかおう

 この10年あまりで年収が75万円(35歳持ち家、妻・子ども2人扶養)も下がっていることに加え、昨年4月からの国家公務員7.8%賃下げと地方公務員への賃下げ強要により、すべての公務労働者の生活が悪化しているもとでの勧告見送りは、賃下げを固定化するとともに、働きがいを奪うものであり、断じて認めるわけにはいかない。そもそも、人勧制度無視の「国家公務員7.8%賃下げ」そのものが違憲であり認められない。また、こうした攻撃は9月ともいわれる消費税増税決断への「地ならし」であり、民間労働者の賃下げにもつながり、賃下げの悪魔のサイクル、消費不況から大恐慌を招きかねないという点でも許すわけにはいかない。

 参議院選挙後、安倍政権の暴走がより加速し、国民要求との「ねじれ」をいっそう際立たせている。脱原発・再生可能エネルーへの転換、消費税増税阻止、社会保障制度の充実、憲法改悪反対などを国民の過半数が求めており、これらの要求実現にむけて、自治体労働者が今こそたたかいに立ち上がることが求められている。

 景気回復には労働者賃金の底上げが必要であり、最賃闘争に全力で取り組まねばならない。また、公務員賃金削減阻止と中止をさせる闘い、安心して働くことのできる再任用制度実現など、公務員の賃金・労働条件改善の闘いも国民的な支持を広げていくことが求められている。これから、「13人事院報告」を受け、各単組での要求書提出や交渉がはじまるが、私たちの賃金労働条件の改善は、景気回復や民間賃金改善にも影響を与えることと併せ、働きがいのある職場づくりは住民サービスの向上にとっても必要であることに確信をもって闘おう。同時に、「地域経済再生」、「脱原発」、「TPP参加阻止」、「消費税増税阻止」「社会保障改悪ストップ」、「憲法改悪反対」、「地方自治を充実させ道州制に反対する課題」など、地域の方々との共同闘争の構築、国民的な大運動が求められている。共同の力を発展させ、安倍政権の暴走を許さず、秋期年末闘争を旺盛にたたかおう。

 京都自治労連は、組合員の皆さんとともに全力をあげて秋期年末闘争をたたかうものである。