「給与制度の総合的見直し」推進による地域間格差拡大、2年連続のプラス勧告も生活改善に程遠く−2015年人事院勧告をうけて

「給与制度の総合的見直し」推進による地域間格差拡大、
2年連続の「プラス勧告」も生活改善にほど遠い
2015年人事院勧告に断固抗議する!

2015年8月6日
京都自治体労働組合総連合

1.地域間・世代間格差拡大の「給与制度の総合的見直し」を中止せず、政府と一体となって公務員総人件費削減をすすめる15人事院勧告を厳しく糾弾する。

  人事院は8月6日、国会と内閣に対して、2015年人事院勧告・報告を行った。その内容の一つは、15春闘で「すべての労働者の賃上げで景気回復」の運動の前進が反映され、俸給表・一時金とも2年連続で増額改定の「プラス勧告」とし、基本給は再任用職員も含め増額としたこと。二つ目は、労働組合だけでなく地方団体からも批判、矛盾点の指摘がある「給与制度の総合的見直し」を中止せず、地域手当引上げを前倒しするなど、政府と一体となって地域間格差拡大、公務員総人件費削減をすすめる立場をあらためて明らかにしたこと。三つ目には、職場実態を顧みず、長時間労働と公務版「残業代ゼロ」をおしすすめる「フレックスタイム制」の勧告を強行したことである。

 人事院は、昨年の勧告で、政府の要請に基づき「給与制度の総合的見直し」を強行し、総務省は未実施自治体に対して「地方人事委員会の勧告がなくとも実施せよ」と、あからさまに地方への介入を行っており、人事院はそのことに異議すら表明していない。このように、政府と一体となって「給与制度の総合的見直し」を強行しようとする姿勢自体が、人事院の役割を自ら放棄し、公務員賃金削減を推進する機関に変質したものと断じざるを得ない。

 勧告・報告の概要は、「2015年官民較差による改定」では、?官民較差1,469円(0.36%)に基づき俸給表の引き上げ改定を行い、初任給2,500円の引き上げなど若年層に厚く配分するとともに、再任用職員給料も含む全号給を増額としたこと、?一時金(ボーナス)を0.10月引上げ、年間4.20月に、?「給与制度の総合的見直し」による地域手当引上げを15年4月に遡及して実施し地域間格差をさらに拡大すること、?「フレックスタイム制」導入の強行、?諸手当改善は見送り、?フルタイム再任用の必要性は触れるも定年延長への具体的言及はなく、再任用賃金の抜本的改善見送り、?臨時・非常勤職員の均等待遇、処遇改善への言及なし、?ストレスチェックの導入を報告、?公務員制度改革に関する報告−能力・実績に基づく人事管理の推進−など、である。

 京都自治労連は、京都公務共闘や公務労組連絡会に結集し、「給与制度の総合的見直し」阻止・中止、人事評価制度の押し付け阻止、生活改善につながる公務員賃金の改善を求め、たたかいに全力をあげるものである。

2.2015年人事院勧告・報告の問題点

 人事院は、労働基本権剥奪のもとで、その代償機関として、国家公務員の賃金労働条件を維持向上させていくことに責任がある。その上で、今回の2015年人事院勧告・報告の問題点を大きく5つの点で指摘しておきたい。

 第一に、昨年、政府からの要請に基づき勧告を強行した「給与制度の総合的見直し」について、公務労働者の生活悪化だけでなく、民間労働者賃金や地域経済への影響、地域間格差の拡大など、多くの問題点の指摘を無視して中止せず、2016年4月に引上げ予定の地域手当を15年4月に遡って引き上げることなど、地域間格差をさらに拡大し、総体として公務員総人件費削減を進める立場に立っていることである。このことは、本来、中立・公正な第三者機関であるべきはずの人事院が、政府による人事院勧告制度をも無視する地方への不当な介入にも異議を唱えることもなく、政府と一体で「公務員賃下げ実行機関」に成り下がっていることを証明するものである。

 第二に、2015年の官民較差に基づく2015年改定は、俸給表・一時金とも引上げとし、2年連続のプラス勧告となった。これは、民間での2年連続ベースアップの実施などに見られるように、全労連・自治労連などが15国民春闘を「全労働者の賃上げで景気の回復」をスローガンに、官民一体でたたかった運動の前進の反映である。しかし、俸給表引上げは、「見直し」実施による2%賃下げで支給額は変わらず、物価上昇率にも遠く及ばず、公務労働者の生活改善には程遠い内容であること。それに加え、官民較差1,469円のうち俸給表引上げには280円しか充てず大部分を地域手当引上げの原資とするなど、中央省庁優遇の差別的配分を行ったことも許せない。また、一時金の増額分を勤勉手当で措置するなど、成績主義の色彩を強める勧告と言わざるを得ない。真に公務労働者の生活改善に資するためには、「見直し」を中止し、国家公務員7.8%特例賃下げ分の回復措置を勧告に盛り込むべきである。また、初任給をはじめ若年層の民間との賃金較差は依然として大きく、中高年層の賃金抑制も継続するなど、公務労働者の生活改善の立場に立たない人事院の実態を明らかにしている。

 第三には、労働組合と職場からの多くの反対の声を無視して、全職員を対象とする「フレックスタイム制」導入の勧告を強行したことである。今回の「フレックスタイム制」は、「国家公務員の女性活躍とワークライフバランス推進のための取組指針」に基づき、政府が人事院に対し、「幅広い職員がより柔軟な働き方が可能となるようなフレックスタイム制の導入」を求め、人事院が忠実に具体化したもので、この手法は、「給与制度の総合的見直し」勧告にも見られたものである。公務への「フレックスタイム制」の導入は、「残業代ゼロ」など労働法制大改悪の先例ともなる内容を持っており看過できない。今回の勧告は、長時間労働と「残業代ゼロ」を推し進めるものであり、断固反対するものである。

 第四には、雇用と年金の接続に関して、「定年延長」への人事院の態度を明らかにせず、再任用職員の賃金水準も「引き続き検討」とし、再任用職員の処遇改善を放置していると言わざるを得ない。このような人事院の不誠実な姿勢は、再任用職員の生活不安を増大させ、勤務へのモチベーションも低下させるなど、重大な問題点を持っている。

 第五には、臨時・非常勤職員の抜本的な処遇改善が急務であるにもかかわらず、具体的措置に何ら触れることもなく、人事院としての役割を放棄し、均等待遇に背を向けていることである。臨時・非常勤職員は、最低賃金水準ぎりぎりでの労働が強いられている実態にあり、官製ワーキングプアへの社会的批判が強まっているもとでも賃金改善の具体的言及がなかったことは、格差を追認するものと言わざるを得ない。

3. 全組合員の力を集めて15秋期年末闘争をたたかおう

 10数年来続く、公務員バッシング、公務員賃金削減などにより、公務労働者の生活が悪化している。そのもとで、昨年に続き、若干の改善勧告はされたものの、地域間格差の拡大と、「給与制度の総合的見直し」実施への不当な介入が強まっており、今後出される京都府・京都市の人事委員会勧告が持つ意味合いは極めて重要になる。公務員賃金が、地域経済に大きな影響を及ぼすことはこれまでの運動の中で明らかにされており、地域再生をめざす立場からも、「すべての労働者の賃上げ」をめざして、官民総がかりの運動をいっそう推進しなければならない。

 15秋期年末闘争は、「戦争法案」廃案、安倍内閣退陣を求め運動を大きく広げなければならない。憲法改悪阻止、消費税増税ストップ、社会保障の拡充、原発再稼働阻止、労働法制改悪阻止、TPP参加阻止、政府のいう「地方創生」ではなく地方再生など、渦巻く国民要求の実現にむけて、自治体労働者が今こそたたかいに立ち上がることが求められている。

 戦後70年、憲法遵守義務を持つ自治体労働者・労働組合として、「戦争法案」廃案に全力をあげるとともに、賃金確定闘争では、「給与制度の総合的見直し」阻止、安心して働くことのできる賃金・労働条件の確立にむけた運動を進めていくことが必要である。

 これから、15秋期年末闘争が本格化するが、学習と団結を強め、15賃金確定闘争での前進、「戦争法廃案」など住民要求の前進をめざして、共同を広げ、おおいに奮闘しよう。そして、あらゆる取り組みを組織の拡大強化につなげよう。

 京都自治労連は、組合員の皆さんとともに全力をあげて15秋期年末闘争をたたかうものです。