2017年人事院勧告に対する声明

4年連続の基本給・一時金引上げも生活改善にほど遠く
「霞が関」優遇、地域間格差拡大の2017年人事院勧告に断固抗議する!

2017年8月8日
京都自治体労働組合総連合

1.「霞が関」優遇、地域間・世代間格差拡大の「給与制度の総合的見直し」をいっそう推進する17人事院勧告

  人事院は8月8日、国会と内閣に対して、2017年人事院勧告・報告を行った。

 主な内容は、1)17春闘において官民一体でたたかった成果である4年連続の賃金引上げを反映し、4年連続で月例給・一時金とも引上げ、再任用職員も含めすべての職員の賃金を増額としたこと、2)昨年に続いて「給与制度の総合的見直し」を推進する立場で、「霞が関」優遇の「本府省業務調整手当」を4月に遡及して引上げるとしたこと。3)非常勤職員の給与について人事院の給与指針改定に基づき各府省を指導。4)長時間労働の是正にむけ民間法制の議論を踏まえた検討に言及―などである。

 勧告・報告の概要は、?官民較差631円(0.15%)に基づき俸給表の引き上げ改定を行い、初任給1,000円引き上げ、若年層も同程度引上げ、その他はそれぞれ400円引上げ、全号給を増額としたこと、?一時金(ボーナス)は、一時金官民較差から0.10月引上げ、年間4.40月とし、0.1月の増額分はすべて勤勉手当に充てたこと、?「給与制度の総合的見直し」を推進する立場から、「本府省業務調整手当」の係長級900円・係員級600円を今年4月に遡及して引上げるとともに、2018年4月からは係長級6%・係員級4%相当額にそれぞれ引き上げるとしたこと、?「給与制度の総合的見直し」の現給保障廃止による原資を活用して昇給抑制1号分の回復を2018年4月1日現在37歳未満の職員に行うこと、?民間の住宅手当の支給状況を踏まえた検討、?再任用職員の給与について、定年の引上げにむけた具体的な検討との整合性に留意しながらの必要な検討、?非常勤職員の給与について、人事院の給与指針に基づく改善にむけた府省の指導、?長時間労働の是正にむけた職場マネジメントの強化、民間法制の議論を踏まえた実効性ある措置の検討−などである。

2.2017年人事院勧告・報告の問題点

 人事院は、労働基本権剥奪のもとで、その代償機関として、国家公務員の賃金労働条件を維持向上させていくことに責任がある。

 17人事院勧告の基本的特徴は、政府の公務員総人件費抑制をさらに進める立場から、「霞が関」優遇、地方切り捨て、地域間格差拡大などを具体化する一方、喫緊の課題である臨時・非常勤職員の均等待遇の実現と抜本的な処遇改善、長時間労働解消などの具体的な勧告・報告を避けていることである。

 2017年人事院勧告・報告は、次のような問題点を持っていることを指摘する。

 第一に、2017年の官民較差に基づく改定は、俸給表・一時金とも引上げとし、4年連続の「プラス勧告」としたことである。これは、民間春闘で中小労組での健闘に見られるように、4年連続賃金引上げの実現など、全労連・自治労連などが17国民春闘を「全労働者の賃上げで景気の回復」をスローガンに、官民一体でたたかった運動の前進の反映である。しかし、官民較差は前年を下回り、俸給表引上げ額も「給与制度の総合的見直し」実施による2%賃下げをすべて回復するには至っていない。加えて、2018年3月末での「給与制度の総合的見直し」経過措置期間終了に伴う賃金引き下げ回避措置を設けないことなど、政府の公務員賃金抑制政策に沿った政治的かつ不当な勧告である。また、昨年に引き続いて、「給与制度の総合的見直し」の推進として、官民較差631円のうち19%にあたる119円を国家公務員の中央省庁勤務者だけに支給される「本府省業務調整手当」引上げの原資に充てるなど、「霞が関」優遇、地方切り捨て、地域間格差拡大の差別的配分を強行したことは断じて認められないものである。さらに、今年も、一時金の増額分をすべて勤勉手当に充てており、能力・成績主義強化の勧告と言わざるを得ない。

 真に公務労働者の生活改善に資するためには、生計費原則に基づく大幅賃上げ、「給与制度の総合的見直し」の中止、国家公務員7.8%特例賃下げ分の回復措置などを勧告に盛り込むべきである。さらに、初任給をはじめ若年層の民間との賃金較差は依然として大きく抜本的な改善を行うべきである。17人勧は改善原資の差別的配分、能力・成績主義強化、中高年層の賃金抑制継続など、公務労働者の生活改善の立場に立たない人事院の実態を明らかにしている。

 第二に、「雇用と年金の接続」に関して、実効的な制度確立と再任用職員賃金の改善には言及しない一方で、定年の引上げにむけた具体的検討との整合性に留意した検討を行うとしていることは看過できない。国家公務員の定年の引上げは、「骨太方針2017」でも触れられているように「国策としての成長戦略」として推進するものであり、定年引上げだけでなく、定数管理や60歳時の給与水準をどう引き下げるかも検討するとしており、17人事院勧告・報告での言及は、今後さらなる賃金抑制の具体化にもつながりかねないことを指摘するものである。

 第三に、長時間労働の是正について、上限規制にかかわる民間法制の議論を踏まえた措置の検討、「働き方改革」と勤務環境整備のためのフレックスタイム制の活用促進、ハラスメント防止対策などの言及に留めていることは、人事院が真に長時間労働是正の立場に立っていないことを証明しているものである。真の長時間労働の是正には、何よりも人員の増員が不可欠であり、人員の増員なくして長時間労働の是正はありえない。また、労働時間の上限規制に関わる民間法制の論議をふまえた措置を検討するとしたことは、繁忙時の「100時間未満の超過勤務」を人事院としても認める方向すら示唆するものであり、公務職場の長時間労働の実態を無視するものである。人事院は、厚労省のガイドラインにもとづく勤務時間の適正な把握と業務量にふさわしい人員の確保こそ意見表明すべきである。

 第四に、臨時・非常勤職員の処遇改善について、「人事院の非常勤職員給与指針改正内容に沿った処遇改善にむけ各府省の指導」との言及に留めたことは不十分と指摘せざるを得ない。臨時・非常勤職員は、最低賃金水準ぎりぎりでの労働を強いられている実態にあり、均等待遇実現と抜本的な処遇改善が急務となっている。その意味では、最低時間額をただちに1000円以上に引き上げることなど、人事院として積極的な賃金改善にむけた姿勢を明らかにすべきである。今回、抜本的な処遇改善への具体的言及がなかったことは、格差是正に背を向けるものとして指摘するものである。

3. 全組合員の力を集めて17秋季年末闘争をたたかおう

 この間、2005年勧告の「給与構造改革」、東日本大震災後の7.8%特例賃下げ、そして「給与制度の総合的見直し」などにより、公務員賃金は大きく引き下げられ、公務労働者の生活は悪化している状況にある。そのもとで、4年連続のプラス勧告はされたものの、政府による地方公務員賃金抑制攻撃、地方切り捨て、地域間格差の拡大など、公務労働者の賃金をめぐる状況は厳しさを増している。今後、京都府・京都市の人事委員会勧告にむけて、国人勧への追随を許さず、公務員賃金が持つ社会的役割を明らかにして、「すべての労働者の賃上げ」の実現をめざす運動を官民総がかりで推進しなければならない。

 17秋季年末闘争は、憲法改悪阻止、戦争法・「共謀罪」法廃止、安倍「働き方改革」・労働法制改悪阻止、「地方創生」の名による地域破壊を許さず、2018年京都府知事選挙勝利、安倍政権の退陣を求める運動を大きく広げなければならない。憲法遵守義務を持つ自治体労働者・労働組合として、これらの国民的要求運動の前進に全力をあげるとともに、賃金確定闘争では、生計費原則による賃金闘争の推進、「給与制度の総合的見直し」中止、長時間労働解消と人員の増員など、安心して働くことのできる賃金・労働条件の確立にむけた運動を強めることが必要である。

 17秋季年末闘争での要求の前進に向け、住民との共同の運動を広げ、おおいに奮闘しよう。そして、あらゆる取り組みを組織の拡大強化につなげ、11月の京都自治労連結成70周年にむけ、全単組で増勢を実現できるよう職場を基礎におおいに奮闘しよう。

 京都自治労連は、自治労連や公務労組連絡会に結集し、単組・組合員の皆さんと力をあわせ17秋季年末闘争を全力でたたかうものである。