2025年8月7日
京都自治体労働組合総連合
1.物価高騰に追いつかない2025年人事院勧告
人事院は8月7日、国会と内閣に対して、2025年人事院勧告・報告を行った。25春闘における賃金引き上げを反映し、4年連続で月例給を引き上げ、一時金を改善したものの、物価高騰に及ばず生活改善には不十分な勧告と言わざるを得ない。
勧告・報告の概要は、①官民較差が15,014円(3.62%)であることから、初任給について大卒12,000円、高卒12,300円引き上げ、30歳代後半までの職員に重点を置き引き上げするとともに、その他の職員については改定率を逓減させつつも昨年を大幅に上回る引き上げ改定、②一時金は0.05月(再任用職員0.05月)引き上げ、年間4.65月(同2.45月)とし、期末手当と勤勉手当で等分に引き上げ、③自動車等使用者の通勤手当について距離区分の上限を現行「60km以上」から「100km以上」に引き上げるとともに、金額も引き上げ改定するとともに駐車場等の利用に対する通勤手当を新設、④月例給与の水準が地域別最低賃金を下回る場合にその差額を補填する手当を新設、⑤本府省業務調整手当の支給対象に本府省の幹部・管理職員を加え、51,800円を支給するほか、本府省の課長補佐級職員の手当額を10,000円、係長級以下の職員の手当額を2,000円引き上げ⑥昇格の際の在級期間要件を廃止、⑦育児や介護などに限らない職員の様々な事情に応じた無給の休暇の新設等について具体的な検討などである。
2.2025年人事院勧告・報告の問題点
2025年人事院勧告・報告は、異常な物価高騰にあえぐ公務労働者の生活実態から目を背け、労働基本権制約の代償機関としての役割を放棄し、政府の公務員総人件費抑制政策を推進する立場からの勧告・報告である。
① 25国民春闘において、「すべての労働者の賃上げで景気の回復」にむけ官民一体でたたかった結果を反映して、4年連続で月例給・一時金とも引き上げを勧告した。
人事院は「民間企業の賃上げの状況等を反映して、昨年を上回る高水準のベースアップ」というが、俸給表の平均改定率は4級で2.9%、5級から10級で2.8%と、中高年職員では物価高騰に追いついていない水準である。生計費原則を重視し、全世代の生活改善につながる給与水準を確保することを強く求めるものである。
② 初任給の引き上げは高卒で12,300円にとどまり、最低賃金近傍であることに変わりはない。来年4月以降月例給与の水準が地域別最低賃金に相当する額を下回る場合に、その差額を補填するための手当を支給するとしているが、公務への人材確保の観点からも、俸給表水準のさらなる改善が求められる。
③ 民調における比較対象規模を約20年ぶりに「50人以上」から「100人以上」に戻したことは、わたしたちの強い要求を一定反映したものではあるが、民間相場に公務が追いつくためにはさらなる比較対象規模の引き上げが必要である。今回、本府省職員に限って、比較対象企業規模を従来の「500人以上」から「1,000人以上」に見直し、その較差を持って本府省業務調整手当の引き上げに充てることにしたことは、本府省と地方の格差を拡大させるものであり、地方の国家公務員水準を上回らないよう技術的助言を受けている地方自治体にとっては、職員の士気の低下を招くものである。改めて、比較企業規模を1,000人以上にすることを求めるものである。
③ 一時金の0.05月引上げは、職場や組合員の期待に見合った水準とは言えない。再任用職員の支給月数は、再任用職員の職務・職責が定年退職以前からほとんど低下していない実態を重視し、常勤職員との均等・均衡待遇を早急に実現することを求める。
④ 地域手当の見直しについて、2026年度の支給割合が示されたが、2024年度での非支給地は今年度4%から来年度7%の引き上げとなっている。府内自治体においても最低限国並みの引き上げを求め、早期に8%にするよう求めるものである。
⑤ 自動車等使用者に対する通勤手当について、距離区分の上限を現行「60km以上」を「100km以上」に引き上げ5km刻みで新たな距離区分を設ける(2026年4月)とともに、現行の「60km以上」までの距離区分についても引き上げ改定を行う(2025年4月遡及)ことは、かねてから引き上げを求めていたわたしたちの要求に一定応えたものである。また、駐車場等の利用に対する通勤手当について1ヵ月あたり5,000円を上限として新設(2026年4月)することも、わたしたちの強い要求が実現したものである。
⑥ 本府省業務調整手当については、本府省の職員の職務・職責が重くなっていることを踏まえ、支給対象に本府省の幹部・管理職員を加え、51,800円を支給するほか、本府省の課長補佐級職員の手当額を10,000円、係長級以下の職員の手当額を2,000円引き上げる、としている。人事院は「この措置により、恒常的に超過勤務を行っていた本府省の課長補佐級職員が室長級に昇任した際に、職責が高まるにもかかわらず給与が減少する状況は改善されることとなる」と言及している。本府省職員の長時間労働の実態を放置し、手当で措置することは本末転倒である。
⑦ 職員が昇格するために原則として一定の期間昇格前の級に在級することを求める在級期間に係る制度(在級期間表)を廃止することは、いわゆる「特急組」の昇任・昇格を更に加速させる意図が見え、さらなる格差拡大が懸念される。また、在級期間制度に関連する初任給制度等の諸制度についても見直しを行うこととされており、自治体においては前歴換算の見直し等の改善も求められる。
⑧ 非常勤職員の処遇改善については、一切触れられていない。諸手当や休暇制度など常勤職員と同様の制度を求めるとともに、昨年、国の期間業務職員については「3年公募要件」が撤廃されたが、自治体では引き続き3年公募、5年公募要件を課しているところがある。公募要件を撤廃し雇用の安定化につなげるたたかいが求められる。
⑨ 超過勤務縮減については、最重要課題と位置付け、月100時間などの上限を超える超過勤務の最小化に向けて、不退転の決意で取組を進めるとしているが、「個々の職場の実情をくみ取った縮減策を示し、その着実な実施を伴走支援していくほか、超過勤務時間の適正な管理や長時間の超過勤務の縮減に関する調査・指導を行っても取組が不十分な場合は、新たに実施する臨時調査などでより一層の取組と改善状況の報告を求めていく」などにとどまっており、具体的な人員確保までは踏み込んでいない。
⑩ 育児や介護などに限らない職員の様々な事情に応じた無給の休暇の新設等について、具体的な検討を進めるとしているが、わたしたちは、仕事と家庭生活の両立のために必要な休暇は有給で措置することを求めており、今後の動向に注視が必要である。
3.全組合員の力を集めて25秋季年末闘争に全力を!
国民・労働者の生活は、物価高騰による引き続く実質賃金の低下で、悪化の一途をたどっている。最低賃金引き上げの中央最低賃金審議会の目安は加重平均63円(6.0%)と、2020年代に1,500円の政府目標を達成するには、引き上げを加速させなければならない数字である。今後地方最低賃金審議会での中央目安額を上回る答申を求めるものである。また、京都府・京都市の人事委員会勧告にむけて、公務員賃金が持つ社会的役割を明らかにし、一歩でも二歩でも国を上回る勧告で、「すべての労働者の大幅賃上げ」の実現をめざす運動を引き続き官民総がかりで推進する。
25賃金確定闘争では、生計費原則に基づき、生活改善できる賃金の引き上げ、会計年度任用職員の処遇の抜本的改善と雇用の安定、実効性ある時間外労働上限規制と長時間労働解消、人員増、ハラスメント防止対策の充実など、職場で奮闘するすべての職員とその家族のくらしを支え、安心して働くことができる賃金・労働条件の確立にむけた運動を強めることが必要である。
25賃金確定闘争での要求の前進に向け、職場を基礎に全組合員が学習や職場要求懇談などへの参加を追求するとともに、すべての取り組みを組織の拡大強化につなげ、全単組で増勢が実現できるよう大いに奮闘しよう。
京都自治労連は、自治労連に固く結集し、単組・組合員の皆さんと力をあわせ25秋季年末闘争を全力で推進するものである。