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中丹地域医療再生計画(案)についての検討メモ(第一次)

2010・1・13 京都自治労連・病院対策委員会

1,はじめに

「中丹地域医療再生計画(案)」としているが、舞鶴地域の公的病院再編が「中丹医療圏全体の医療機能・連携強化につながる」という位置づけになっており、実態は「舞鶴の公的病院の再編計画」とも言える内容になっています。2007年に始まった舞鶴地域の公的病院再編構想については、その当初からいくつかの基本的問題点を指摘(別紙参照)してきましたが、その後、再生基金を申請するための「再生計画」として一定の内容が明らかにされた事をふまえて、「計画」内容について若干のコメントを行います。(地域医療再生基金についての全般的なコメントは、別紙のとおり)

2,中丹地域医療再生計画案に対するコメント

(医療機能)

[1] 計画の柱は、「高次の救急をになう基幹病院の創設や、医療提供体制や救急体制の堅持」などとなっており、このこと自体は地域医療の課題として必要なことではあるが、計画の内容を見ると、3病院の再編統合・ネットワーク化と大幅な病床削減などを伴っており、大幅に後退した地域医療の現状固定や、地域医療の医療バランスをさらに悪化させる危険性などを内包している。

[2] 舞鶴地域の公的病院は、府北部全体や福井県の嶺南地域などの医療ニーズにもこたえてきた。これまでの各病院の果たしている役割から見ても、検討の視点が舞鶴地域・中丹地域に矮小化されている側面が強い。北部地域全体の4疾病5事業対策との関係も明らかになっていない。また、国立医療センターが重要な役割をはたしている精神科医療の位置づけについて全くふれられていない。

[3] 中丹医療圏は人口10万対の病床数で府内最多であることなどから、「病床数の削減が必要」との認識になっているが、府の「地域医療計画」の基準病床数からみれば現状でも不足している。また、府北部全体としても病床数が不足しており、これが再編でさらに悪化することになる。

[4] 再編後は、日赤病院は、現状のまま150床維持となるが、サテライト病院となるため、西舞鶴地域の医療機能が低下する危険があり、舞鶴の地域医療のバランスをさらに悪化させる危険がある。

[5] 市民病院は療養病床等を検討されているだけで規模は明らかになっていない。結局のところ、国立医療センターの規模を約60床増やして、市立病院を大はば縮小するだけとなる危険がある。

[6] 基幹病院は400床規模とされており、医療センターを2年前までの規模(395床、昨年339床に削減)に戻して基幹病院化し、市立病院の一般病床を廃止するものでしかないのではないか。基幹病院としての機能は高まるが、病床規模全体としては現状よりさらに悪化することになる。

(医師確保)

[7] 共済病院が再編から離脱したことで、府立医大の派遣が中心の3病院での再編となったため、医師の一層の流出の危険性は少なくなったが、3病院の医局間の調整が十分進むのか不安材料もある。

[8] 課題として、「医師の配置バランスの適正化と偏在の解消」を上げているが、舞鶴市民病院の医
師数が大はばに減少して異常な事態にある現状を前提としている。ニーズの少ない診療科の医師の削減で救急医など不足する分野を補うという内容であり、医師の確保目標数や確保計画などを明らかにしていないことなどからも、医師数の回復等の方向に向かわない危険がある。

[9] 高次救急を担う救急医や麻酔化医はじめ短期に確保すること困難な診療科もあり、府立医大がこれを担えるのか不安材料もある。医師の集約と施設整備だけ先行という危険もある。

(財源・運営母体など)

[10] 設置主体や運営母体をどのようにするのか、建設資金や運営資金など財源をどのように負担するのかなど、肝心かなめのことがいまだに明らかにされていない。

[11] 事業費の内訳は、総事業費83.2億のほとんどが施設整備費になっており、国の再生基金についても施設整備に当てることになっている。新政権が当初の「再生基金100億円枠」(施設整備中心)を廃止し、医師確保等を中心に25億円枠のみにしたが、この政策変更との矛盾もある。 

[12] 計画内容の救急搬送システムや医師疲弊防止対策などは、病院の再編を前提にしない検討も可能であると考えられ、施設整備事業の「高次の救急に対応する基幹病院整備」についても、現状の共済病院または国立医療センターの強化の延長線上に構想することも可能ではないか。

[13] 再編・統合という大きなリスクを伴う計画のみに依存して拙速に進めるのではなく、現状の病院
をそれぞれ充実するとともに、病院間連携・診療科ごとの連携を抜本的に強化し、当面の医療再建に努力する事を前提とし、病院再編については住民参加で長期視点で議論するべきではないか。

[14] 北部全体課題の高次救急体制などは、「舞鶴の再編待ち」ではなく京都府が責任をもって整備する立場が重要ではないか。例えば「計画終了後に実施する事業」で、「高次救急に対応する病院として体制を充実」とはのべているが金額は明記されず、運営経費等についても明記していない。


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