2024年人事院勧告に対する声明
月例給・一時金引き上げも、生活改善には不十分な勧告
「すべての労働者の大幅賃上げ」をめざし、2024年秋季年末闘争に全力を!
2024年8月8日
京都自治体労働組合総連合
1.物価高騰に追いつかない2024年人事院勧告
人事院は8月8日、国会と内閣に対して、2024年人事院勧告・報告を行った。24春闘における賃金引き上げを一定反映し、3年連続で月例給を引き上げ、一時金を改善したものの、物価高騰に及ばず生活改善にはほど遠い勧告と言わざるを得ない。
勧告・報告の概要は、(1)官民較差が11,183円(2.76%)であることから、初任給について総合職(大卒)29,300円、一般職(大卒)23,800円、一般職(高卒)21,400円引き上げ、若年層に特に重点を置き、30歳代後半までの職員にも重点を置いた引き上げ改定、(2)一時金は0.10月(再任用職員0.05月)引き上げ、年間4.60月(同2.40月)とし、期末手当と勤勉手当で引き上げ、(3)地域手当の級地区分をこれまでの7段階から5段階にし、都道府県単位で大くくり化、(4)扶養手当について配偶者に係る手当を廃止し、子にかかる手当を月額3,000円引き上げ13,000円に、(5)通勤手当の支給限度額を在来線の運賃等と新幹線等の特別料金等を合わせて1ヵ月150,000円に引き上げ、育児、介護等のやむを得ない事情により転居し新幹線等により通勤を必要とする職員にも要件を緩和、(6)非常勤職員の賃金・労働条件については言及なし、(7)長時間労働の是正に向けて、業務量に応じた人員の確保を担当部局に要請、などである。
2.2024年人事院勧告・報告の問題点
2024年人事院勧告・報告は、異常な物価高騰にあえぐ公務労働者の生活実態から目を背け、労働基本権制約の代償機関としての役割を放棄し、政府の公務員総人件費抑制政策を推進する立場からの勧告・報告である。
(1)24国民春闘において、「すべての労働者の賃上げで景気の回復」にむけ官民一体でたたかった結果を反映して、3年連続で月例給・一時金とも引き上げを勧告した。
人事院は「約30年ぶりとなる高水準のベースアップ」というが、人事院がモデル試算した定期昇給分を加えても、月収で4.4%の給与改善にとどまり民間の春闘結果を下回っており、この間の物価高騰に追いつかず、生活改善からほど遠いものである。人事院は、実質賃金が減少し続けている事態に対応すべきであり、生計費原則に基づく大幅な賃上げを行うよう強く求めるものである。
(2)2年連続ですべての号俸を改定したものの、物価高騰に伴う実質賃金の低下は、全世代にわたるものであり、若年層の給与改善ととともに、とりわけ世帯の生計を担う傾向にある中高齢層の生活改善が深刻な課題となっている。中高齢層が在職する号俸の改定率を逓減させることは容認できない。中高齢層の生活と労働の実態を踏まえ、生計費原則と職務給原則を重視し、俸給表全体を改定するとともに、全世代の生活改善につながる給与水準を確保することを求める。
今回の勧告で大卒初任給(一般職試験)を23,800円引き上げ、月額220,000円とし「大幅引き上げ」とするが、民調結果で大卒新卒事務員は220,368円であり、ようやく民間並みに追いついたというレベルのものであり、公務への人材確保の観点からも、さらなる改善が求められる。
(3)一時金の0.10月引上げは、職場や組合員の期待に見合った水準とは言えない。再任用職員の支給月数は、再任用職員の職務・職責が定年退職以前からほとんど低下していない実態を重視し、常勤職員との均等・均衡待遇を早急に実現することを求める。また、「特に優秀」区分の成績率上限を現行の「平均支給月数の2倍」から「平均支給月数の3倍」に引き上げることは、生活給としての一時金の性格を薄め、職場に分断を持ち込むものであり、容認できない。
(4)地域手当については、基本的に都道府県単位に「大くくり化」されるものの、級地区分による20%もの地域間格差の課題は残されたままである。また、京都府内の自治体においては、支給割合の変更に伴い、賃下げとなる自治体が生じる。地域手当は廃止し、基本給に繰り入れるべきである。
(5)扶養手当については、配偶者に係る扶養手当を廃止し、その原資を用いて、子に係る手当を月額を3,000円引き上げるとしている。民調でも家族手当制度がある企業(全体の74.5%)のうち、半数以上(53.5%)の企業が配偶者に家族手当を支給しているにもかかわらず、昨年9月に全世代型社会保障構築本部で「企業の配偶者手当の見直し促進」に取り組むとされ、さまざまな事情で扶養対象となっている配偶者への配慮もなく、政策的に配偶者に係る手当を廃止しようとするものである。
(6)通勤手当の支給限度額は、在来線の運賃等、新幹線等の特別料金等を合わせて1ヵ月当たり150,000円に引き上げ、また、新幹線等に係る通勤手当について、育児、介護等のやむを得ない事情により転居し新幹線等による通勤を必要とする職員にも要件を緩和するとした。支給限度額の引き上げは私たちの要求の成果である。一方、燃料費等物価高騰の中で切実な要求であった「交通用具利用者」の通勤手当については見直されていない。物価高騰の情勢と、交通用具でしか通勤できない地域事情を勘案した制度とすべきである。
(7)再任用職員については、「異動の円滑化」に資する手当として「地域手当の異動保障等、研究員調整手当、住居手当、特地勤務手当及び特地勤務手当に準ずる手当並びに寒冷地手当を支給する」とされたが、ごく一部にとどまっており、基本給水準、期末・勤勉手当の月数、扶養手当等、全ての手当について正規職員と同様とすべきである。
(8)非常勤職員の給与改定については、一切触れられず、両立支援等に係る制度についてのわずかな言及にとどまっており、極めて遺憾である。「3年公募要件」については、人事院が6月28日に「期間業務職員の適切な採用について」を一部改正し、「3年公募要件」を撤廃したとはいえ、任期は1年のままであり、今後「無期転換ルール」の創設など、雇用の安定の実現と労働者としての地位と権利を早急に保障することを強く求める。また、切実な要求である病気休暇の有給化など、早急に措置すべき課題の解決が行われなかったことは問題である。
(9)働き方について、勤務間インターバルにより睡眠時間を含む生活時間を十分に確保することは不可欠であるとしているが、11時間の勤務間インターバル確保は各省庁の努力義務にとどまっており、インターバルが毎日は確保できない場合は民間事例も参考に健康確保のため講ずべき措置を検討するにとどまっており、長時間労働縮減へ早急な対策が求められる。
(10)仕事と生活の両立支援として、育児時間の取得パターンの多様化、超過勤務の免除との対象となる子の範囲の拡大、子の看護休暇等の見直しなどに言及されており、私たちの要求に一定、応えたものである。しかし、超過勤務の免除の対象は小学校就学前にとどまっているなど、不十分であると言え、さらなる拡大を求めるものである。
3. 全組合員の力を集めて24秋季年末闘争に全力を!
国民・労働者の生活は、物価高騰による引き続く実質賃金の低下や地域経済の疲弊などで、悪化の一途をたどっている。国が、景気回復のために直接打てる有効な手立ては、最低賃金の大幅引き上げと公務員賃金の大幅引き上げにほかならない。政府の責任として「物価上昇を超える賃上げ」を求めるものである。今後、京都府・京都市の人事委員会勧告にむけて、国人勧への追随を許さず、公務員賃金が持つ社会的役割を明らかにして、「すべての労働者の大幅賃上げ」の実現をめざす運動を引き続き官民総がかりで推進する。
24賃金確定闘争では、生計費原則に基づき、生活改善できる賃金の引き上げ、会計年度任用職員の処遇の抜本的改善と雇用の安定、実効性ある時間外労働上限規制と長時間労働解消、人員増、ハラスメント防止対策の充実など、職場で奮闘するすべての職員とその家族のくらしを支え、安心して働くことができる賃金・労働条件の確立にむけた運動を強めることが必要である。
24賃金確定闘争での要求の前進に向け、職場を基礎に全組合員の行動参加を追求するとともに、すべての取り組みを組織の拡大強化につなげ、全単組で増勢が実現できるよう大いに奮闘しよう。
京都自治労連は、自治労連に固く結集し、単組・組合員の皆さんと力をあわせ24秋季年末闘争を全力で推進するものである。
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