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東日本大震災による災害廃棄物の広域処理についての見解 [2012.4.16]

東日本大震災による災害廃棄物の広域処理についての見解

2012年4月13日

京都自治体労働組合総連合
執行委員長 池田豊

京都府職員労働組合連合
執行委員長 森吉治

京都市職員労働組合
中央執行委員長 小林竜雄

 政府は、東日本大震災において岩手県、宮城県で発生した災害廃棄物約2045万トンのうち約400万トンの処理を全国の自治体に要請しました。
 京都府の山田知事は、府内市町村に受け入れを呼びかけ、4月6日には「舞鶴市、宮津市、福知山市、京丹波町が前向きに検討している」との回答を環境省に送付しました。
 京都市も焼却灰を大阪湾広域臨海環境整備センター(フェニックス)への埋め立てを前提に、3か所の焼却施設で試験焼却する意向を伝えています。既に受け入れを表明している大阪市も海面埋め立て(北港処分地、フェニックス)の方針ですが、国が海面処分の安全指針を策定していないため、京都市を含め広域処理ありきで「出口なき廃棄物処理」という事態になってます。
3月28日山田知事は、京丹波町の瑞穂環境保全センターを訪れ、京都での焼却灰のみならず、大阪湾フェニックスでの埋め立てが無理な場合は、京都府に要請があれば保全センターで埋め立てる意向を明らかにしています。続いて4月4日には舞鶴市で「舞鶴は焼却と埋め立ての施設があり条件が整っている」と述べ試験焼却を依頼しました。
 全国的には多く自治体が受け入れを拒否し、3月25日に独自の受け入れ基準を決定した関西広域連合においても、和歌山、徳島両県が「現時点では困難」との立場を表明している中で、京都の広域処理推進に向けた対応は住民説明、合意を無視した突出した動きと言えます。

 自治体の基本的責務は「住民及び滞在者の安全、健康及び福祉を保持すること」(2000年改正前の地方自治法)にあり、地方自治体が災害廃棄物を受け入れる場合でも、住民の命と安全を守る立場からの慎重な対応が必要であると考えます。
 私たちは、災害廃棄物の処理問題に際して、住民と地域の命と安全を第一とし、被災した地域の真の復興に資するものにする必要があるとの立場から次の見解を明らかにするものです。

■「封じ込め、拡散させない」を基本にした対応をとること

 1995年の阪神淡路大震災における約2000万トンの災害廃棄物は2年あまりで9割以上を処分し復興への足掛かりとしました。今回の災害廃棄物の処分の大きな立ち遅れは、地震と津波による被害の甚大さだけではなく、主要な要因は東京電力福島第一原子力発電所事故による放射能汚染によるものであり、その責任は、東京電力と国にあることは明らかです。
 国際的事故評価尺度レベル7という原発大事故で放出された膨大な量の放射性物質は、大気、海洋、土壌を広範囲に汚染し、瓦礫となった災害廃棄物も同様に汚染されました。
 「放射性廃棄物は、封じ込め拡散させないことが原則」であり、災害廃棄物についても放射能汚染されたものは封じ込めを第一義的対応とすべきで、全国への拡散処理による希釈的対策を優先させるのは、日本全体に汚染を拡大するにほかなりません。

 災害廃棄物をめぐり被災自治体の首長からも声があがっています。「市内に瓦礫処理専門のプラントを作れば、自分達の判断で今の何倍ものスピードで処理ができる」、「後2年でかたづけるという政府の公約が危ぶまれているというが、無理をして早くかたづけなくてはいけないのだろうか。10年、20年かけてかたづけた方が地元にお金が落ち、雇用も拡大する。税金を青天井に使って全国に運びだす必要がどこにあるのか」と語っています。
 また南相馬市の防災林構想は、広域処理が岩手県、宮城県の災害廃棄物の福島県(南相馬市)での受け入れを想定していないため、瓦礫の確保が困難となっていると言われています。
 災害廃棄物の処理に当たっては、復興への再利用の道を開くなど、被災地の要望に耳を傾け、実態に即したものとなるよう法整備、財政上の措置をとることが必要です。

■濃度規制、総量規制による安全の確保

 環境基本法をはじめ廃棄物処理法などでは、放射性物質は規制の対象から除外されています。また原子炉等規制法においては、事故により発電所施設外に広範囲に拡散された環境汚染への対処を想定していません。
福島第一原子力発電所事故前は、ICRP(国際放射線防護委員会)やIAEA(国際原子力機関)の示した基準にもとづき、放射性セシウム濃度が100Bq/kg以下であれば、放射性廃棄物として扱わなくても良く(クリアランスレベル)、再利用可能としてきました。それを超える場合は、低レベル放射性廃棄物として厳重に管理され、現在も全国の原子力発電所から排出される放射性廃棄物にはこの基準が適用されています。
 ところが、昨年8月11日、国は「災害廃棄物の広域処理の推進について」(環境省)において、災害廃棄物の焼却灰の放射濃度が8000Bq/kgを下回る場合は「特段の問題は生じない」として、十分な説明も根拠の明示もないまま、広域処理を推進するために80倍の基準を設けました。
原子力発電所からの廃棄物は厳重に管理され、その外では80倍もの基準を適用することが本当に安全なのか、また、関西広域連合独自の基準として設けられた2000Bq/kgが科学的根拠のある安全な基準なのか、大きな疑問と不安を抱かざるを得ません。

 放射性物質による地域と住民の安全を考える際には、濃度規制と同時に総量規制も必要であると考えます。
 濃度のみの規制では、規制値を上回る災害廃棄物や灰を、規制値を下回る通常の廃棄物や灰と混合、希釈すれば容易に規制値をクリアすることができ、実質的に濃度規制を有名無実化することが予想されます。
 私たちは、濃度規制はもとより処分場単位での量的規制や、移送・運搬、焼却場での撹拌作業など希釈的作業、測定におけるサンプル手法等についての規制などについても厳密化をはかり、明確化を図ることを求めます。

■災害廃棄物の広域処理に関しての対応

「放射性廃棄物は、封じ込め拡散させないことが原則」を全てのレベルで順守すべきです。今回のような非常時でも、国及び東京電力の責任において、近隣に抑え込むとともに、市民の生活環境に放射性物質が漏れ出すことのないように、国及び東京電力による集中的かつ長期的な特別な管理を維持・継続することが必要です。
(1)災害廃棄物であれ焼却灰であれ、その様態に関わらず、国と東京電力の責任で、IAEA及び原子炉等規制法に基づく基準で処理すること。
(2)放射性物質の濃度規制だけではなく総量規制を導入すること。
(3)災害廃棄物の処理については、被災地での処理が迅速に進むよう、国の責任で被災自治体の支援を行うこと。また災害廃棄物の処理に当たっては、復興への再利用の道を開くなど被災地の要望を良く聞き対応すること。
(4)災害廃棄物の処理に際しては、全国的にも地域の雇用と経済に役立つものとし、利権構造を生み出さないこと。
(5)災害廃棄物の放射性セシウム濃度の計測方法については、科学的根拠に基づく方法によるものとするとともに、手順等を明確にして公表すること。

〇住民が安心して生活するために対処すべき事項
放射能に汚染されていない災害廃棄物など、安全性が確認されたガレキ等の広域処理については、専門家による委員会の設置のほか、住民への説明と合意が必要です。また、市民が将来にわたって安心して生活することのできるハード面の条件整備を行うことが必要です。
(1)焼却処理のための設備の基準や、焼却灰の保管や埋立等の処理施設の基準を明確にし、公表すること。
(2)事前の環境影響調査及び事後のモニタリング調査については、土壌検査、水質検査及び大気中の放射性物質降下量の検査を必ず実施すること。また、周辺に汚染が拡大していないことを定期的に検査してホームページなどで公開し続けること。リアルタイムでの監視、情報公開と即自的対応の体制をとること。
(3)専門家による委員会の設置にあたっては、内部被爆に関する専門家を加えること。
(4)住民への説明会は、焼却施設周辺住民だけでなく、広く住民に対して行うこと。
(5)放射性廃棄物の不法投棄や不適正処理等については、罰則を含めた規制整備を行うこと。

〇作業に直接かかわる労働者へ安全のために対処すべき事項
 災害廃棄物の運搬に従事する労働者、焼却施設で働く労働者、保管等に従事する労働者が安心して働くことのできる条件整備を行うことが必要です。
(1)放射線被爆を防止するための基準や作業手順について明確にすること。
(2)作業従事者については、万が一、一般公衆の被爆限度量である1mSv/年を超える放射線量を浴びる可能性もある。したがって、放射線による健康障害の防止を定めた労働安全衛生法第22条に基づく電離放射線障害防止規則を拡大適用すること。

以上

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