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「公立病院に関する財政措置の改正要綱」についてのコメント

2009/1/13、京都自治労連・山本裕(自治労連・自治体病院闘争委員)

総務省自治財政局は、昨年12月18日、「平成21年度地方財政対策の概要」を発表し、この中で「公立病院に対する財政措置を充実」するとしていましたが、その内容が12月24日に明らかにされた、来年度の政府予算案に盛り込まれました。そして12月26日には、その概要をしめした「公立病院に関する財政措置の改正要綱」が示されました。

 改正要綱の概要は、「公立病院に関する財政措置のあり方等検討会の報告書」(以下「検討会報告」)や、この間の国会論戦での政府答弁などを踏まえたものとなっています。

今回の財政措置は、検討会報告に対する自治労連書記長談話(08年12月16日)でも示しているように、地域医療・自治体病院の充実と、ガイドラインを前提にしない財政支援の強化などを求めて取り組んできたこの間の私たちの運動や、自治体病院関係者などからの要求を一定反映したものになっています。同時に、ガイドラインの内容が一定反映している部分も残されています。

 財政措置の具体的な内容は未定であり、今後発表される「平成21年度地方財政計画」やこれに関する総務省通知などに留意し検証してゆく必要がありますが、来年度の病院財政運営や今後の運動に関わるものでもありますので、自治財政局からの聞き取りの内容を含めて、現時点での一定の評価と今後の対応方向などについて、以下にコメントします。

1,今回の財政措置の概要(聞き取り内容を含む、要綱は別紙参照)

 検討会報告を踏まえて改訂し21年度の病院への交付税措置総額を約700億円増

? 普通交付税措置の充実(600億円、実質400億円)(検討方向は下記で未定)
* 医師確保等(300億円増を想定)・・・公営企業法適用病院の全部が対象
1病床当たりの交付税措置単価のUP。(現在は、1病床約50万円)
* 救急告示病院(100億円増を想定)・・・救急告示病院が対象
従来、特別交付税で措置していたもの(200億円)を普通交付税に振り替え、同時に100億円増。救急告示病院の普通交付税としては、合計300億増に。従来のABC区分などがどうなるかは未定。

? 特別交付税措置の充実(100億円、実質300億円)(検討方向は下記で未定)
* 過疎地対策(80億円増)・・従来から「不採算地区病院」対象に措置
「不採算地区病院」の規定を緩和し対象を約90病院増、病床単価UP
非「人口集中地区」や150床未満も対象に、外来要件をなしに。
* 救急医療施設(150億円増)・・救命救急センター、小児救急提供病院
措置単価のUP。従来の救急告示病院分(200億円)が普通交付税に移行するので救急分の特別交付税としては、合計、マイナス50億円
* 周産期医療病床(15億円増)・・病床当たり単価のUP
* 小児医療病床(55億円増)・・病床当たり単価のUP

? 「経営形態の多様化」への措置
公的病院・公益法人立病院への助成への特別交付税の対象・範囲の拡大
有床診療所について、不採算地区病院等の特別交付税措置を準用

? 「公立病院改革推進」への措置
病院整備の普通交付税措置について、建築単価の上限を設定
普通交付税措置への病床利用率の反映を23年度以降にむけて検討
再編ネットワーク化・経営形態見直しの際の債務の処理等に特例債を措置

2,評価と対応方向(案)

? 今回の対策の内容は、この間の私たちの運動や自治体病院関係者などからの要求を一定反映した「検討会報告」や、この間の国会論戦での政府答弁などをふまえたものであり、「12/16書記長談話」での評価が基本となる、検討会報告では曖昧になっていた、「来年度からの病院への交付税措置総額の増額」が実現し、平成20年度比で措置総額を24%近くUP(2930億円から、700億円程度増)させたことは、新たな前進的変化として確信にし、今後の取り組みに生かしてゆく。

? 一方、地域医療と自治体病院の現状から見れば、まだまだ不十分であり、1病床当たりの普通交付税措置単価も改善されるとはいえ、ピーク時からみれば20万円以上低い水準のままと想定される。引き続き、医師確保の臨時・緊急対策やガイドラインを前提にしない財政支援対策などの要求運動を、財政健全化法やガイドラインでの自治体締め付けを跳ね返す闘いと併せて強める。

? また、「病床利用率の交付税措置への反映等」については、検討会報告を踏まえて「方法・実施時期等について今後慎重に検討」としているものの、「23年度以降の普通交付税措置への反映」について触れ、「過疎地等の特別交付税への反映」は、「平成22年度以降の反映を検討」としている。このほかにも、ガイドラインの改悪方向を一定反映している部分も残されているので、引き続き、地域医療・自治体病院の実態を無視したものとならないよう取り組みを強めてゆく。

? さらに今回の政府の「21年度予算案」と「地方財政対策」は、病院への交付税の増額や地域の元気対策・少子化対策の財源として、「基本方針2006」にそった「地方財政計画の歳入歳出の見直しを通じた地方財源の充実」を前提にし、「職員数2.5万人の純減や給与構造改革等」を上げるなど、「地方行革」の推進を前提としている。こうした動きの具体化に反対し、地方財政の充実・自治体構造改革を跳ね返す闘いと結びつけて取り組みをすすめる。

? こうしたことや、自治体の財政状況がますます困難になってきている事などから、今回の交付税の増額措置を病院への繰入金の増として反映しない動きが強まることも想定され、自治体当局の動向を注視すると共に、繰入金増に正しく反映するよう要求を強めることが重要。

? 今回の措置内容は、現在、自治体当局が作成しているガイドラインに基づく「病院改革プラン」の財政計画に直接関係するものでもあるため、具体的な措置内容の把握とともに、住民・労働組合の視点からの病院経営分析はじめ、地域医療と自治体病院の充実めざす取り組みに反映させる。


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