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2010年人事院勧告にあたって
賃金削減、景気・雇用悪化の悪循環を進めるマイナス人勧を許さず、生活擁護と、貧困の根絶と格差の是正のたたかいを強めよう!

2010年8月10日
京都自治体労働組合総連合  

1.人事院は本日(10日)国会と内閣に対して、2年連続のマイナス勧告(平均年収△9.4万)・不法不当な年齢による定率賃下げの、一般職の国家公務員の給与等に関する勧告・報告を行った。

本日、人事院は、国会と内閣に対して、一般職の国家公務員の給与等に関する勧告・報告を行った。月例給・一時金とも引き下げ、昨年に続き2年連続での大幅年収減(平均約9.4万円)につながる勧告であり、〔2009年△0.22%、△0.35ヶ月(平均年収15.4万)〕到底容認できない。勧告・報告内容の概要は、

(1)月例給の較差が△0.19%(△757円)であり、6級以上の56歳以上の職員に1.5%の賃金カットを行い、40歳台以上のすべて俸給表引き下げ改定を行う(平均改定率△0.1%=大半は△200か△300円)。

(2)6級以上、56歳以上の1.5%の減額は、特別調整額(管理職手当)も1.5%減額するが、退職手当は勧告後総務省の検討−高かった時点での算定とする方向、

(3)改定の実施時期は、公布日の翌月の初日で、H21.4月からの較差相当分の解消は、H15,17,21年同様の「年間調整」、俸給表で減額になる職員は4月の給与に調整率(△0.28%)を掛けて12月期の期末手当で減額調整 

(4)一時金は、年間△0.2ヶ月(期末△0.15ヶ月、勤勉△0.05ヶ月)引き下げ3.95ヶ月とし、2010年12月期は2.0ヶ月(期末1.35ヶ月、勤勉0.65ヶ月)支給。4ヶ月を下回るのは、1963年以降初めて

(5)超過勤務手当の支給率が150%となる月60時間の算定に、2011年度から日曜日等も含める。

(6)給与構造改革後の「現給保障層の減少、昇給抑制に伴う原資」を活用し、43歳未満の職員の給与改善のため2011年4月に1号昇給させる。給与構造改革後、地域間給与配分は、(地域別の民間給与較差が最大4.8%から2.0%へと縮小)H23年度以降最終的な検証を行う。

(7)非常勤職員の待遇改善では、育児休業や育児時間などを取得できるよう意見提出を行うとともに、日々雇用の非常勤職員は、任用・勤務形態の見直し、「期間業務職員制度」の実施を報告に盛り込んだ。

(8)2013年度から3年に1歳ずつ段階的に定年年齢を65歳まで延長していく制度骨子を示した。

(9)また、労働基本権問題に関して論点提示をするとともに、公務員制度改革基本法に沿って、採用や育成など人事管理関係や官民人事交流、女性国家公務員の登用を強調した。在庁状況の把握など超過勤務の縮減や、心の健康問題で職場復帰前の試験的出勤の仕組みの提示など報告で触れた。

(10)1回の病気休暇の上限期間の設定など病気休暇制度の見直しを行う。などというものである。

2.2010年人事院勧告の特徴と問題点

第1の問題は、マイナス人勧が及ぼす影響は、公務員準拠の医療や福祉職場など700万人を超える労働者に影響し、中小民間企業労働者の一時金や来春闘に及ぼす影響も考慮すると極めて甚大であり、失業率をはじめ昨今の雇用・経済指標をさらに悪化させ、消費不況を一層進めることになるのは明らかである。今年の「労働経済白書」も認めているように、行きすぎた「規制緩和」政策による雇用劣化不況、賃下げ不況であり、公務員の賃金ダウンや非正規化は新自由主義・「構造改革」路線の愚を繰り返すものである。また、この11年間で平均61.5万円も年間平均給与が下がっているなかで、さらに9.4万円もの減額を押し付け(若年層の生涯賃金のダウンは数千万という単位になる)、職員のモチベーションにとっても、生活設計にとっても深刻な状況をもたらしている。

第2の問題は、今回の56歳以上の賃金カットという手法が、厚労省の賃金センサスを使うという比較データの問題とともに、役職や資格が同じにもかかわらず年齢によってのみ「賃金カット」を押し付けるという手法は、民間でも16.5%の企業しか行っていないものであり、全く不法不当なものである。労使合意抜きの「一方的不利益変更」は違法であることを踏まえるなら、労働基本権の代償機関としての人事院が「不利益変更」を押しつけることの不法性を指摘せざるをえない。また、定年延長を見越して60歳前後の給与削減を視野に入れての措置という面も黙過できない。

第3の問題は、全体としても労使協議が全く不十分であるが、とりわけ、「給与構造改革」や「定年延長」など制度の根幹に関わる問題での労働組合の軽視を指摘せざるをえない。05年に給与構造見直しが一方的に強行され、「地域民間準拠」論を押し付け、同一労働同一賃金の原則を破壊し、大幅賃金削減を進めてきた。そして、昨年に続き、比較企業規模を50人以上のままで、地域別民間給与較差を出したことは、さらなる基本給の切り下げと、道州制を念頭に置いたブロック別賃金を狙ったものと言わざるを得ない。また、給与構造改革後の原資を43歳未満の1号昇給にあてるということも、労使での十分な協議もなく、給与構造改革の検証も抜きに唐突なものになっている。
役職定年制含む定年延長問題は、年内に成案を得るとしているが、職務や年代に応じた生計費を踏まえた賃金水準のあり方、働き続けることが困難な職種での不利益を生じない制度設計など、労使交渉や合意を尊重すべきである。

第4に、非常勤職員の処遇改善に関して、育児休業等を取得できるように法改正を求める意見を提出することや、日々雇用の非常勤職員制度を改め、原則1年任期で更新可能な「期間業務職員制度」導入を示したことは、再任のルール設定の前進面もあり一定評価できるが、「有期雇用」を国が推進することは許せない。今後、昇給制度、退職金制度はじめ均等待遇にむけ抜本的な改善を求めるとともに、「期間の定めのない制度」を求めていくと同時に、非正規雇用の地方公務員の制度改善を求めていくものである。

第5の問題は、労基法改正に伴って、月60時間超の超勤手当率150%の60時間に休日も含める改善をすることは当然だが、限度時間の月45時間以上月60時間未満の手当率を125%としていることは問題である。労基法は、月45時間を超える際は36協定を結ぶ際に、法定割増率(125%)を超える率とするようにしなければならない、としており、労基法適用の自治体職員の所では、36協定締結とあわせ125%を超える率にする取り組みを進める必要がある。あわせて、超勤の縮減とメンタル対策、職場復帰支援問題、病気休暇制度の問題など、各自治体での十分な検討や労使交渉が求められる。

第6の問題は、昨年に続き、またもや事実上の「不利益遡及」である「年間調整」を強行しようとしていることである。現給保障層の「年間調整」含め、過去に遡る「調整」は、権利の問題として認められるものでない。また、俸給表がマイナス改定される職員と現給保障層の職員だけで、「調整」するために、0.28%という数字が出てきているが、例えば200円(△0.1%)マイナスになる職員が、完全遡及だと2000円程度なのに、0.28%を掛けるがために7000円以上もの額が「調整」の名の下に減額されるなどの不公平を生じる。

3.貧困根絶と格差是正、生活危機突破、消費不況の克服、働きがいのある職場・賃金・労働条件めざし、秋期年末闘争をたたかおう

2010人勧に向けては、この間、職場からの「賃金改善署名」や職場決議の取り組みをはじめ、近畿ブロックとしての総務省要請、2次にわたる中央行動、近畿人事院事務局交渉への参加、京都府・市人事委員会への申し入れなどを実施し、最低賃金の改善や公契約の推進の運動などとも結合してたたかいをすすめてきた。2010人勧が出されたもとで、職場からの学習を重視し、京都府・京都市人事委員会への要請などを強めるとともに、あらためて「貧困根絶と格差是正」、生活危機突破の国民的な運動と職場からの要求実現をめざす運動を結合し、労働組合の組織強化・拡大とも結合して、たたかいをすすめることを呼びかけるものである。

その基本方向は、第1に、国民的、全労働者的運動への合流である。特に重視すべき課題は、「最低賃金1000円」「派遣法の抜本改正」であり、民間労働者、地域での共同闘争の強化である。最賃闘争は8月がヤマであり、「雇用戦略対話」での政労使合意をさらに推し進めさせる闘いが求められている。

第2に、勧告イコール地方確定ではなく、労働協約締結権の2012年回復を展望し、生計費原則、職員の生活実態、職場、地域の実態に基づき、産別闘争を軸に大いに闘うことである。

第3に、非正規雇用職員、外郭団体など関連労働者の処遇改善、組織化を展望し闘うことである。

第4には、11月末条例改正の当局の動きを視野に置き出足早く闘うことである。

京都自治労連は、各単組役員の皆さん、組合員の皆さんとともに全力をあげるものである。

 


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2010人勧声明2010人勧声明 (196KB)

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