機関紙 - 中央・霞が関優遇、地方切り捨て 3年連続プラス勧告も生活改善ほど遠く
政府・財界いいなり 「配偶者扶養手当」改悪強行 「現給保障者」今年も置き去り
8月8日、人事院勧告(人勧)が出されました。その内容は、官民較差708円(0・17%)に基づき月例給引上げ、一時金0・10月引上げなど3年連続のプラス勧告となりました。その一方で、官民較差の3割を中央省庁勤務者にのみ支給される本府省業務調整手当の引上げに充て、配偶者扶養手当改悪を強行するなど、中央優遇、地方切り捨ての不当な内容です。
3年連続プラスも改善実感なし
本府省手当引上げの差別勧告
3年連続のプラス勧告となったことは、16国民春闘で「全労働者の賃上げで景気回復を」とのスローガンの下、官民一体で賃上げ運動を前進させてきた反映です。しかし、引上げ額は「総合的見直し」実施による2%賃下げを回復するには至らず、公務労働者の生活改善につながるものではありません。
とりわけ問題なのは、「総合的見直し」推進として、官民較差の3割を中央省庁に勤務する者にしか支給されない本府省業務調整手当の引上げ改定に充てたことです。これは昨年の勧告で、官民較差の8割を地域手当改善に充てたものと同様に、中央優遇・地方切り捨てで地域間格差を拡大させる差別的勧告です。さらに、一時金引上げはすべて勤勉手当に充てるとし、成績主義強化を押し付けています。
非正規処遇改善まったくふれず
配偶者扶養手当は、昨年「見直す必要はない」としたにもかかわらず、安倍政権の「1億総活躍社会」実現にむけ、「扶養手当が女性の社会進出を阻んでいる」との的外れな論理を人事院が受け入れ、わずか1年で主張を覆して改悪を強行しました。公正・中立な第三者機関であるべき人事院が政府の下請け機関となっていることを自ら証明しました。
また、再任用職員の勤勉手当に成績主義を反映させるとしていることも問題です。賃金水準は6割程度に引下げながら、成績主義強化を打ち出したことは認められません。
非正規職員の処遇改善では、具体的措置に触れることなく、抜本的な処遇改善に背を向け続けています。京都府最低賃金が24円引上がり、831円となることもふまえ、均等待遇実現の運動強化が必要です。
昨年以上に不当な内容の16人勧について、学習運動を広げ、組合員・職場全体の怒りとすることが大切です。京都公務共闘の人勧学習会への参加や単組・職場での学習会実施など組合員全員の力を集めた取り組みをすすめましょう。
【2016年人事院勧告の概要】
■月例給・一時金引上げ(平成28年4月から実施)*民間給与との較差(0.17%、708円)を埋めるため、俸給表の水準引上げと「総合的見直し」における本府省業務調整手当の引上げ
*初任給1,500円、若年層1,500円程度、その他400円を基本に引上げ
*一時金(ボーナス)の0.10月引上げ(勤勉手当に配分)
■配偶者及び子にかかる扶養手当見直し(平成29年度から段階的実施)
*配偶者扶養手当を段階的に引下げ
現行13,000円→平成29年度10,000円→平成30年度6,500円
*満22歳未満の子にかかる扶養手当を段階的に引上げ
現行6,500円→平成29年度8,000円→平成30年度10,000円
16人勧の不当な「原資」配分
官民較差「改善原資」708円 | 本来なら |
月例給改定+はね返り分 708円 |
※16勧告では官民較差の3割を 中央省庁勤務者にのみ支給される本府省手当引上げに配分 |
|
勧告では |
月例給改定 448円 |
本府省手当改定 206円 |
はね返り分 54円 |
16人勧に対して、都市職、町村職の仲間からコメントを寄せていただきました。
霞が関・中央優遇の何物でもない:宇治市職労 小野敦委員長
3年連続の引上げは官民あげての運動の成果です。官民較差は職員全体の賃上げに活用し、14勧告の「総合的見直し」で現給保障になっている部分も含めて引上げるべきですが、そこは放置し、較差の3割を本府省手当引上げに使うことは霞が関・中央優遇の何物でもありません。
昨年も現給保障者を放置し、較差を地域手当引上げの前倒しに使いましたが、今回はさらにひどい内容です。これでは公務職場での中央と地方の賃金格差を広げるばかりです。配偶者扶養手当も改悪ありきで進められ、人事院勧告のあり方そのものが破たんしています。
地域手当不支給地はさらに格差拡大:与謝野町職 市田桂一委員長
今回の勧告は、アベノミクスのもとで貧困と格差が拡大する中、実質賃金の引上げが求められていたことから考えるとお粗末で不十分な勧告としか言いようがありません。
「総合的見直し」を円滑に進めるとして本府省手当を引上げたことは誠に遺憾で、地域手当のない当町では地域間格差がさらに拡大し、到底認めることができません。賃金格差は労働者が地方から流出し、地域経済が衰退する原因にもなり、格差是正こそ地域住民・地域事業者や自治体の切実な声です。
あらためて「総合的見直し」と配偶者手当改悪の中止、非常勤職員の処遇改善を強く求めます。
京都自治労連 第1878号(2016年8月20日発行)より