機関紙 - 輝かせたい 子どもたちの"笑顔" 住民とともに公共サービス守る
安倍政権は、アベノミクスの目標である「企業が世界で一番活躍する国づくり」をめざして、2015骨太方針に掲げた「公共サービスの産業化」を強引にすすめ、本来、自治体が責任を持つべき公共サービスを民間企業の儲けの場に変えようとしています。
京都においても、あらゆる分野での民営化が強まり、とりわけ保育や学校給食など、住民生活に密着し、安全で安定したサービスの提供のために頑張ってきた分野で、「民営化」「民間委託」などの動きが現れています。このような中で、「公立保育園を守ろう」「自校方式の学校給食を守ろう」と各地で運動が広がっています。
今回は、「保育園の民営化」が問題となっている向日市と、中学校給食の開始をきっかけに、子どもたちに愛されてきた小学校自校方式の学校給食を「民設民営」のセンター方式に変えることが問題となっている宮津市を訪ねました。
子ども犠牲は許さない第2保育所は公立のままで:向日市職労
向日市の市立第2保育所を訪ねたのは、昨年11月20日の日曜日。「『公立第2保育園を守ろう』をアピールするお散歩パレードが行われる」と聞いてかけつけました。
立ち上がった保護者・職員
パレードでは、「第2保育所を守ろう」「民営化反対」などと訴え、約1時間にわたって住宅街を歩きました。向日市保護者会連合会が作成した漫画入りの『知ってほしい向日市立保育所のいま』のチラシをポストインしたり、通行人に配布しました。
ハンドマイクでの訴えは、お父さん。「公立の第2保育所を守りましょう」「障害のある子どもも安心して預けられる市立保育所を守りましょう」と、かわるがわる訴えます。
道中では、「頑張って」などと窓を開けての激励もあり、元気が出るパレードとなりました。
バギーカーを押して0歳の子どもさんと参加した保護者のCさんは、「4歳の子も第2保育所で、この子も『2017年4月からお世話になろう』と思っています。ベテランから若手の先生もおられ、安心して預けられる保育所です。ぜひ、市立のまま建て替えてほしい」と語ります。
例年取り組んでいる「保育の充実を求める請願書名」も、「今まで以上に集めなければ」と、第2保育所独自に保護者や職員で「署名活動実行委員会」を立ち上げ大奮闘、全体で1万2347筆(一昨年は3865筆)を集めました。
疲れた先生より元気な先生に
Dさんは、4年生、2年生、4歳の3人の子どものお母さん。「私は、『民間だから悪い』とは思っていません。頑張っているところも、たくさんあると思います。しかし、民営化して今の保育をやってもらえる保障はなく、非常に不安です」「障害児を受け入れるといっても、どの程度の障害まで受け入れるのか。保育士の労働条件でも現状では、ベテラン保育士が公立よりも民間保育所は少ない。働き続けることができない労働条件の現れです。疲れた先生より、元気な先生にみてほしい」とDさん。
子どもたちが犠牲になることがあってはならない
保育士のEさんとFさんは、「4年前に、市立第3保育所が閉所になり、子どもたちは他の保育所へ散り散りになった。子どもたちがたいへん戸惑った。この時のように、子どもたちに犠牲を押し付けることがあってはならない」「非正規職員の雇用問題も考えられます」「市民の皆さんの力も借りて、第2保育所を守りたい」と言葉に力が入ります。
向日市は、「子育てするなら向日市」と言われるぐらい、保護者や保育士が様々な運動に取り組み、市民の協力も得て向日市当局を動かし、全国に誇れる保育水準をつくってきました。向日市の宝である保育が、大きな岐路に立たされています。2017年、市立第2保育所を守る保護者と市民、保育労働者の共同した取り組みが広がっています。
向日市の保育所の経過……
向日市立第2保育所は、1967年に開所された保育所で、耐震性も含め、老朽化が問題となって、保護者、労働組合などによる建て替えと存続を求める請願がたびたび提出されてきました。
2010年に作成された「向日市立公立保育所整備計画」で、現在の場所での建て替えや移転も含めて、「抜本的な施設を検討する」と示され、一昨年12月議会で「第2保育所の建て替えを願う請願(賛同署名3865筆)」が議会で採択されました。
昨年12月議会には、「公立保育園の継続を」求める請願書名を1万2347筆提出しましたが、安田市長は市民の声を聞かず、「民間活力の導入をすすめる」と不当な方針を示しています。
しかし、方針を決める過程において向日市は、保護者や市民、職員の声を一度も聞くこともせず、今回の方針提案を行っています。「子ども第一に考えているのか」「一番弱いものを犠牲にしている」と怒りの声が広がっています。
子どもたちの大好きな自校給食守ろう:宮津市職
宮津市の小学校給食は、子どもたちに大変好評で、府内でも質の高い内容です。ところが宮津市は、現在の自校方式をやめて、小・中学校すべてを民営化の「給食センター」方式に変えようとしています。そんな中で、宮津市職や与謝地方教職員組合、宮津地労協、新婦人なども参加する「宮津市のよりよい学校給食を考える会」が結成され、子どもにとってどんな給食が良いのかを、市民みんなで考える運動が始まりました。
6つの小学校の給食調理員の皆さんや「考える会」代表のGさんに集まってもらいました。
"美味しかった"の笑顔に支えられ
皆さんに「給食調理員としての働きがいや嬉しかったこと」を尋ねると、「?おばちゃん、今日の給食美味しかった?と子どもたちが笑顔で声をかけてくれる。こんなうれしいことはない。『もっと美味しいものを作ろう』と自分を向上させてきた」「?美味しい匂いがたまらない?と給食を楽しみにしてくれている」などと目を輝かせて次々と話が出てきます。
また、宮津の学校給食は、地元の野菜や魚を使用し、子どもたちが学校で栽培した野菜や果実も使用するなど、「食」に対する感謝や喜びの気持ちをはぐくんでいます。そして、各学校による食材の地元発注で、子どもたちと地域をつなぐとともに、地域経済の振興にも役立ち、農家や漁師の皆さんにも喜ばれています。毎月「みやづ食の日」として、宮津産の食材を使った統一献立を実施。説明資料を基に学習するなど、給食が故郷を知るきっかけになっています。
充実した食物アレルギー対応
アレルギーといっても様々です。お寿司の献立の時は、シイタケ、卵、雑魚がダメな子がいる。シイタケと卵、卵と雑魚、または一つの食材だけと様々。全く別の物を作るのは簡単だけれど、できるだけ同じ内容になるようアレルギー食材を抜くだけでなく、「代替え食」を用意するそうです。たとえば卵はコーンで、牛乳は豆乳で代替しており、こうした対応ができるのも「子どもたちの顔がわかる自校方式だからこそ」と強調します。
給食センター方式では、心配事がたくさん
「調理完成から食べるまでに時間がかかり、保温はできても本来の味を届けられない」「多様化、複雑化しているアレルギー除去食が本当にできるのか」「配達中の事故や交通渋滞、降雪時の遅れなど、緊急の対応ができるのか」「『食育』や地域とのつながり、地域の業者への発注ができるのか」「発注業者も決まっていない段階で、『水準の維持を確認』というが、本当か」「民営化が最もコストが低いというが、詳細の説明は何もない」など、次々と出てきます。
また、嘱託職員の調理員は小学校だけで10人が働いており、「民設民営」は雇用問題でもあります。市の計画ではセンター方式が始まるのが2018年9月から、「年度途中から次の仕事が見つかるのか」、「18年度に経験ある人員がそろうか」との心配の声も聞かれます。
こんな大事なことを、現場の職員の意見や声を全く聞かずにすすめていることも問題です。教育委員会から方式変更の決定に至るまで、給食調理員への説明は一度もされていません。保護者への説明会も全く開かれていないのです。
これほど、市民や職員を無視したすすめ方はありません。子どもたちを第一に考えているといえるのでしょうか。
「宮津市のよりよい学校給食を考える会」では、給食問題の学習会を開催し、今回の問題をチラシにして、新聞折り込みを行うなど取り組みを強めています。
大好きな仕事を取り上げられなければならないのか
「私たちは、本当に給食調理の仕事が好きです。子どもたちの成長にかかわることができ、?おばちゃん美味しかったよ?の笑顔に励まされ、『もっと美味しいものを、もっと腕を磨こう』と頑張ってきました。『調理員の仕事が天職だ』と思っています。感謝もしています。民設民営の給食センターができれば、大好きな仕事を続けることはできません。これまで培ってきたキャリアを生かすこともできません。なぜ、大好きな仕事を取り上げられなければならないのでしょうか」。
調理員の皆さんの訴えが深く心に響きました。
宮津の宝物を大切にしてこそ、宮津のまちづくりにつながります。民設民営の給食センター化は、かけがえのないものを自ら捨てる愚かな行為です。
京都自治労連 第1887号(2017年1月5日発行)より