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機関紙 - 小田原市生活支援課職員のジャンパー問題に対する私たちの見解

小田原市生活支援課職員のジャンパー問題に対する私たちの見解

カテゴリ : 
組合活動
 2017/2/8 17:40

2017年1月28日
京都自治体労働組合総連合 執行委員長 池田 豊

 京都自治労連は、神奈川県小田原市生活支援課職員のジャンパー問題について見解を発表しました。

 神奈川県小田原市の生活支援課の職員が、「HOGO NAMENNA(保護なめんな)」などとプリントした揃いのジャンパーを作成し、生活保護家庭を訪問していたというニュースは、京都府内の自治体職場にも大きな問題を投げかけています。

 私たち地方公務員は、憲法第15条で「すべて公務員は、全体の奉仕者であって、一部の奉仕者ではない」、憲法第99条で「この憲法を尊重し、擁護する義務を負ふ」とされており、あらためて日本国憲法に照らして、今回の問題から、見落としてはならないことを指摘し、以下の見解を明らかにするものです。

■ジャンパーの作成・着用は、生活保護行政を歪め、市民を蔑視し、権利を抑圧する公務員にあるまじき行為です

 市職員の市民、とりわけ社会的弱者に対する姿勢が問われています。本来、市職員は、憲法が保障する基本的人権を守る立場にあり、市民の要求や困難に寄り添い、市民に向き合わなければなりません。

 生活保護の被保護者の中には、障害や高齢、ひとり親など様々な困難を抱えていることも少なくありません。今回明らかになったジャンパーには、胸にエンブレムとともに「HOGO NAMENNA(保護なめんな)」、背中に英文で「私たちは正義。私たちは小田原市のために働かなければならない。不正を見つけたら、『適正実施』のために追及し、罰する。もし、私たちをだまして不正受給しようとするなら、我々はあえて言う、彼らはクズだ」と記されていました。これらの言葉そのものが被保護者、市民の人権を否定するばかりか、この言葉のような立場で市民に接していたとすれば、そのことは憲法と社会保障の否定にほかなりません。

 ジャンパーの作成・着用は、二重三重に生活保護行政にふさわしくないばかりか、被保護者・市民を蔑視した基本的人権を無視する市職員として、あるまじき行為と言わなければなりません。

■生活保護行政の最大の問題は、「不正受給」ではなく、受給すべき人が受給できていないことです

 生活保護の「不正受給」は許されない問題であり、悪質なケースには厳正に対処することが必要です。しかし、意図的に「不正受給」問題をとりあげ批判することは、生活保護受給に対して、否定的な国民感情を増長させ、制度の利用抑制につながります。

 生活保護は、生活保護法第1条で、「日本国憲法第25条に規定する理念に基づき、国が生活に困窮するすべての国民に対し、その困窮の程度に応じ、必要な保護を行い、その最低限度の生活を保障するとともに、その自立を助長することを目的とする」としています。この目的の達成こそ求められているのです。しかし、現実には、生活保護制度を利用する権利のある人たちのうち、現に利用している人の率(捕捉率)は高めに見積もっても2割と言われています。8割の人が必要なのに利用できていないという状況にあります。一方で、保護費総額のなかで不正受給額が占める割合は、総務省の平成24年度の調査で、金額で0・4%、件数で2・5%程度となっています。過度の不正受給批判は、本来、生活保護を受けるべき人が受けずに、餓死、自死したりしている現実から目をそらすことにつながります。

 安倍政権は、医療や介護、年金をはじめとして、社会保障費の抑制に躍起になっています。生活保護も、この間、母子加算、高齢加算、住宅扶助費をはじめとして保護費が削減されてきました。また、地方自治体も財政難などを理由に「生活保護費」の抑制のために、「水際作戦」などと呼称されるような「利用抑制」、「自立支援」と称しての「保護打ち切り」などをすすめようとしています。

 あらためて、生活保護制度は、憲法第25条に保障された国民の権利であり、国や自治体は、憲法擁護、国民の生存権を守る立場から、生活保護制度が必要なすべての国民が利用できる制度として利用促進、活用を図るべきです。

■福祉職場の職員の「やりがい」は、どこにあるのでしょうか

 生活保護に関わる業務を担う職員の仕事の誇りや「やりがい」は何でしょうか?

 私たちの仲間は、「被保護者の生活確立や病気からの回復への支援、就業支援など、生活保護制度の役割を実感」し、また、「被保護者への支援、家族からの感謝などを通じて、自分たちの仕事の役割に誇りを感じたとき」に、「やりがい」を感じると話しています。

 柏木ハルコさんの人気漫画『健康で文化的な最低限度の生活』(ビッグコミックス)や、全国公的扶助研究会が発行している『季刊公的扶助研究』にも、現場職員の同様の体験が数多く紹介されています。

 職場の仲間と助け合い、「国民の健康で文化的な最低限度の生活」(憲法第25条)を保障するという生活保護制度の本来の役割発揮こそ、「やりがい」につながるのではないでしょうか。

■労働組合の役割発揮こそ求められます

 自治労連は、「住民の繁栄なくして自治体労働者の幸せはない」とのスローガンのもと、全体の奉仕者としての自治体労働者の社会的役割を発揮していくことに、労働組合運動の役割があると運動を進めてきています。2014年3月には、「『人間らしく生きること』を保障できる職場づくりのための生活保護政策提言(案)」を発表し、生活保護職場を中心に学習と論議を進めてきました。

 格差と貧困の拡大のもと、増え続ける申請者、増大しマニュアル化された業務、憲法と福祉の理念抜きの研修など、きびしい職場の現実があります。このような職場状況だからこそ、住民本位の仕事を進めていくうえでも、自治体労働者の生活と権利が守られ、安心して働き続けられる労働環境の実現が必要であり、そのためにも労働組合の役割発揮が求められています。同時に、自由に意見が言える職場環境、民主主義の環境を作っていくうえでも、労働組合の役割は重要です。

 小田原市生活支援課職員のジャンパー問題から、生活保護の仕事だけではなく、市民生活を守る立場にある地方公務員として、あらためて、憲法を学び生かしていくことをめざし、職場からの検証と討論を呼びかけるものです。


京都自治労連 第1889号(2017年2月5日発行)より

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