機関紙 - 長時間労働・過労死なくす働くルールの確立を 〜アベ働き方改革〜
「働き方」なのに厚労省ではなく経産省?
安倍政権は昨年7月の参院選前に、「一億総活躍プラン」とあわせて「働き方改革」を打ち出しました。同一労働同一賃金や長時間労働の是正、「非正規という言葉をなくす」などの文言が並びますが、その本質は「世界で一番企業が活動しやすい国」をめざすアベノミクスの成長戦略を推進するものです。この「働き方改革」が厚生労働省ではなく経済産業省管轄となっていることからもその狙いは明らかです。
「働き方改革」についてこの間明らかになった政府案は、「月45時間、年間360時間」との36協定(労基法36条)の時間外労働の限度を法律に明記するとしながらも、特別条項で「月平均60時間、年間720時間」まで上限を引き上げられるとするもの。また、繁忙期には「月100時間、2か月平均80時間」との過労死ラインぎりぎりまで容認する検討も行われています。
電通での過労自殺は、36協定の残業上限が月70時間に設定され、労働時間は自己申告制として実際よりも過少申告されていました。過労死・過労自殺は、残業が月45時間を超えて長くなるほど、健康被害、病気発症の危険が高まるとされています。現在の政府案では長時間労働の是正どころか、時間外労働の基準が緩和され、あってはならない過労自殺等が繰り返されるおそれがあります。
厚労省通達を活用して
17春闘アンケートでは、サービス残業が生じる実態について「申請しづらい雰囲気がある」との回答が3割を超えています。数字で表れない長時間労働が職場に存在していることも予測されます。
今年1月、厚生労働省は「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」を通知しました。新設した「労働時間の考え方」では、労働者が使用者の指揮命令下にあれば明示的な指示がなくても労働時間にあたるとし、待機時間や参加義務のある研修なども労働時間にあたると明記しています。
また、自己申告制では、使用者の講ずるべき措置として職場の入退場記録やパソコンの使用時間の記録などと自己申告時間のかい離をもとに実態を調査し、補正することを明記しています。電通では自己申告制とすることで36協定さえ歯止めにならず、長時間労働の温床となっていました。
「働かせ方」改革ストップ、春闘の重点課題に
時間外労働のほかにも、同一労働同一賃金について正規・非正規の賃金格差を容認する「ガイドライン案」、解雇の金銭解決、長時間労働是正を言いながら残業代ゼロ法案(高度プロフェッショナル制度、裁量労働制の対象拡大)など、「働き方」の改革ではなく、「働かせ方」を変える内容が盛りだくさんです。
また、経済産業省が兼業・副業の解禁、フリーランス(個人請負)の働き方を推奨し、厚生労働省が報告書「働き方の未来2035」で「多様な働き方ができ、企業などとの対等な契約によって自律的に活動できる社会に変わっている」として、労働者を個人事業主へと置き換える議論が行われています。
この17春闘で、政府・財界が狙う「働き方改革」ではなく、厚労省の「新通達」も活用しながら、長時間労働の是正、サービス残業の根絶をはじめ、「働くルール」の確立へ運動を強めましょう。
京都自治労連 第1890号(2017年2月20日発行)より