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機関紙 - 3・11から6年 岩手の"今"から考える憲法と地方自治 復興は道半ばけれども着実に前へ 〜京都自治労連結成70周年記念事業 岩手フィールドワーク〜

3・11から6年 岩手の"今"から考える憲法と地方自治 復興は道半ばけれども着実に前へ 〜京都自治労連結成70周年記念事業 岩手フィールドワーク〜

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組合活動
 2017/7/10 21:20

 6月16日から18日の3日間、京都自治労連結成70周年記念事業として「岩手フィールドワーク」を実施しました。10単組30人が参加し、大槌町、大船渡市、陸前高田市の3自治体を訪問しました。

 東日本大震災から6年が経った被災自治体の現状を自分たちの目で直接見て回るとともに、現地の自治体職員から復興に向けた様々な取り組みを直接お聞きし、自治体労働者の役割はなにか、その中で自治体労働組合が果たす役割はなにか等について、学び、考えあう機会となりました。3日目には陸前高田市職労の方々と一緒にグループディスカッションも行いました。

6月16日
行政は地域住民のためにある住民の拠り所は職員の存在

 伊丹空港からいわて花巻空港に到着後、貸し切りバスで大槌町へ移動。車内で岩手自治労連・高橋昭博副委員長から3・11当時から現在に至る状況について報告を受けました。
 職員は3・11のすべてを背負っており、当時を思い出すと辛くなるが、こうして話すことで気持ちが落ち着く。行政とは地域住民のためにあるもの。住民から厳しい言葉を言われる事もあるが、裏を返せば頼りにしているという事。住民の拠り所が職員の存在。この3日間で、『3・11』はまだ終わっていない、自治体労働者の仕事とは何か、自治体労働組合だからこそ出来ることがある、これらを一緒に考えてほしい。

岩手自治労連の勇気の決断:大槌町

 大槌町に到着後、大槌町保健福祉課・小笠原純一課長から報告を受けました。「震災を経て、『生かされた側』として話をしたい」とし、自治体職員が何をするべきかについて、また組合委員長を務めた経験から労働組合の役割はなにかについてもお話しいただきました。

 その後、小笠原さんの案内で大槌町内の災害公営住宅や旧大槌町役場などを視察しました。

 町長や臨時職員を含めて職員39人が犠牲に。庁舎倒壊のおそれがあったため、役場の外に対策本部を設置したが、そこに津波が襲ってきた。避難所に指定していた防災センターは、センターごと津波に飲み込まれる悲しい出来事も起きた。

 現在の職員平均年齢は28歳。復興基本計画は平成30年までとし、「復旧・再生・発展」と位置づけて進めている。復興まちづくり懇談会をつくり、1年で60回、月5回の住民との直接対話の場を設け、より現実味のある中身にしようと住民参加で復興計画を作ってきた。

 私たち自治体職員とは何か。自衛隊や警察官、消防士とは違う役割がある。全体の奉仕者として災害後の住民生活や地域の再建・再生に責任を持つのが自治体職員。「津波てんでんこ」という言葉があるが、まずは自分の命を守る事が大事。

 支援物資は住民優先、職員はすべてが後回しという状況下で、岩手自治労連の「被災した地域や住民を守れるのは自治体職員。その職員を支える形で復興支援を行う」との決断が職員の心の拠り所になった。組合として派遣職員を含めた交流会など職員コミュニケーションづくりも行った。労働組合の横のつながりを生かしていってほしい。

6月17日
一番の復興は「生業」の復活 三鉄から見た被災地の姿

健康で働き続けるために組合が後押し:大船渡市

 2日目は、大船渡市職・佐藤克敏委員長、金野道程副委員長からお話を伺いました。お二人からお話を伺った後、「盛」駅から三陸鉄道に乗車し、「三陸鉄道から見る被災地の復興」として、三陸鉄道職員の熊谷松一さんをガイドに海岸線を走る列車から復興状況を視察しました。

〈佐藤委員長〉
 当時の状況を振り返ると、河口から2キロ離れたところまで津波が押し寄せた。実家や家族の安全を確認することが出来ないまま災害対応にあたっていた。

 復興住宅や住民コミュニティの再建を進めている。市民の復興意識は26年度調査で「遅れている」45%、27年度では35%に。一番の復興は「生業」の復活。復興拠点エリアに商業施設の「キャッセン大船渡」を建設、4月末にオープンした。

 かさ上げ、巨大な防潮堤の建設が進む中で、海が見えないまちに。またかさ上げする土や費用も掛かる。浸水したためにかさ上げしていない土地もあり、その土地の利活用をどうするのか、被災自治体の多くが抱える課題。被災地の多くは震災からそのままの姿が残っており、復興は道半ば。

〈金野副委員長〉
 2002年の三陸町との合併以降、2011年まで10年間で職員92人が削減された。他の自治体も同様だが、職員削減の弊害が復興の遅れに影響している。当局が時間外手当を6月から支給すると提案(3〜5月は無支給)してきたが、交渉で押し返して支給させた。ただ、当時の組合活動の記憶はほとんどない。

 震災後、職員が健康で働き続けるために、職員のメンタルヘルスケアを組合として位置づけた。職場の労働環境や人員要求をはじめ、自治労連共済の見舞金など組合員の生活再建を支援した。

6月18日
住民のために、住民とともに、暮らし、生業、賑わいの復興へ

復興は「人」がすべて 組合のつながり生かして:陸前高田市

 3日目は、陸前高田市建設部・阿部勝部長、子ども子育て課・千葉達課長のお二人からお話を伺いました。予備知識との点から、前日17日に、お二人が出演した「NHKスペシャル」(2016年3月8日放送)を視聴しました。(お二人とも組合委員長の経験者との事でした)

 報告を受けた後の昼食では、陸前高田市が新たなご当地グルメとして売り出し中の「ホタワカ御前」をいただき、市街地視察を行いました。午後からは3日間の感想交流などグループディスカッションを行い、陸前高田市職労の組合員の皆さんにも参加していただきました。

〈千葉課長〉
 組合の再建をどうするのか。役員が数名亡くなり、そもそも集まれるのか、から始まった。組合として優先させたのは、職員の多くが犠牲となり、多忙を極める業務の中で、被災者でありながら被災者になれなかった職員のメンタル面の課題。震災後3〜4年は頑張らないといけないとやってきた中で、今その反動が出てきているのではと感じる。

 復興は「人」がすべて。職員が頑張れる環境が必要。人とつながることが大切。組合として出来る事は何か。しんどい気持ちも含めて自分の思いを率直に出せる場であってほしい。横のつながりが出来るのは組合だけ。

 被災地の姿を自分のまちに置き換えて考えてみてほしい。現地に来ないと分からない事ばかり。復興はまだまだこれから。暮らし、なりわい、そして賑わいの復興へ。

〈阿部部長〉
 復興計画は8年とした。山を削り、削った土で12メートルかさ上げし、まちを再生させる。多くの住民が高台への居住を求めている。高台移転や災害公営住宅は地権者の協力なしには出来ない。住民協力の背景は偶然ではなく、これまでの住民協力の力が今の復興への力につながっている。

 ハード事業が完成していく中で、持続可能なまちづくりをどう展望するか。復興に向けて何度も商業者との話し合いを重ね、何を悩んでいるのか、行政は何を支えられるのか考えてきた。新しいまちの形として中心市街地をつくり、なりわいをつくる場にしたい。

 住民の意見や要求をどう市政に反映させるのか。私たちがどちらを向いて仕事をするかによって地域住民の幸福は左右される。住民が主人公になるために、どんな時でも「民主的自治体労働者論」の立場を忘れないでほしい。

終わりに
住民・地域を支える自治体職員 職員を支える労働組合の役割

 自治体職員の役割は何か。「自衛隊・警察・消防とは違い、その後の住民生活や地域を守れるのは自治体職員。だから生きなければならない」との言葉は非常に重く、同時に自治体職員のあり方を深く考えさせられる言葉でした。

 また、「復興は『人』がすべて」との言葉は、職員が頑張れる環境づくり、職員のメンタル問題にとどまらず、そこに住む地域住民とともにまちを作るといった事なども含めて言い表している言葉ではないかと感じました。そして、その中で自治体労働組合が果たすべき役割、私たちに出来ることはまだまだたくさんあることを実感できるものでした。


京都自治労連 第1899号(2017年7月5日発行)より

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