機関紙 - 今だから考えよう憲法
2018年は、憲法をめぐって情勢が大きく動く可能性のある年です。しかし、「憲法を身近な存在として考えられない」「日常的にあまり意識しない」という声が公務労働者からも聞こえてきます。そこで、毛利弁護士に憲法についての疑問に答えていただきました。
京都自治労連顧問弁護士。ブックレット『戦争と自治体』作成の自由法曹団京都支部の担当者。戦争法、共謀罪、憲法、労基法問題など様々なテーマで京都自治労連や単組の学習会の講師としてお世話になっています。
憲法って何のためにあるの
権力を握った人は、その権力を自分や自分の身近な人の利益のためや、自分に都合の悪い人を排除するために使おうとします。実際、歴史的には、多くの市民が権力の横暴の結果、自由や命を奪われてきましたし、現在も、世界の多くの国々で同様のことが起こっています。
このような事実を踏まえて、権力者の横暴を許さないために、憲法という国家の基本を定める最も位の高い法で権力者に縛りをかけているのです。憲法は、すべての市民が幸せに生きる権利を保障するために、権力者を信用せず、権力者の横暴を禁ずるという役割を担っているのです。
憲法を変えるのはいけないことなの
憲法を一切変えてはいけないということはありません。市民が幸せに生きるために憲法に不十分な点があるのであれば、憲法を変えることもあり得ます。
逆に、権力者の権力を強めて、市民の幸せに生きるための権利が制限されるような憲法改定は、本来の憲法の目的に反するので認めるわけにはいきません。現在の改憲議論は、憲法で縛られている権力者の側から提案され、その縛りを緩める方向で進められている点に大きな問題があるのです。
安倍政権は具体的にどんな憲法にしようとしているの
政権与党である自民党は、?憲法で自衛権の行使を認める、?緊急事態条項を創設する、?教育の無償化を憲法に書き込む、?合区を解消することを提案しています。このうち、?と?は、憲法を変えなくても法律のレベルで実現が可能です。従って、自民党の進めようとしている憲法改定の本質は、?と?にあるといえます。
他国から攻められたら反撃をしないと仕方ないと思うかもしれませんが、自衛権というのは、その範囲にとどまりません。日本が直接攻められなくても、同盟国と一緒に戦争ができる集団的自衛権も含まれています。緊急事態条項は、権力を一時的に総理大臣に集中する仕組みです。
自民党の提案は、法律で定めさえすれば権力の集中ができるというもので、権力の強化と市民の人権侵害を招来する危険性があります。
憲法が変わると公務員の仕事はどう変わるの
公務員の仕事の基本は、憲法的価値観を実現し、市民の基本的人権を擁護することです。ですから、憲法が変わるということは、仕事のものさしが変わることを意味します。
例えば、緊急事態条項が憲法に書き込まれて、それに合わせた法律ができれば、公務員はその法律に従って業務を行なうことになります。もし権力者が私腹を肥やすためや都合の悪い人を排除するために悪用すれば、公務員はその手先として使われることになるのです。憲法が人権侵害や戦争を肯定する内容に変われば、公務員は人権侵害や戦争協力を率先して行う立場になりかねません。
戦争中には、公務員は徴兵の業務を行い、多くの若者の命を奪う結果となる仕事をしていたのです。権力の横暴による人権侵害の片棒を担がされないためにも、憲法改定の動きに公務員の皆さんは関心をもち、市民のためにならない憲法「改悪」には反対をすることが必要です。
京都自治労連 第1911号(2018年1月5日発行)より