機関紙 - 憲法が生きる京都で国民の権利守ることが福祉の仕事 「長生きして良かった」の声があふれる京都に
2000年に介護保険制度が始まって、17年が経過しました。この間、目まぐるしく制度が変わり、利用者と家族、保険者である自治体も翻弄されてきました。介護現場の現状を、社会福祉法人七野会の井上ひろみ理事長に伺いました。
負担増と介護範囲の縮小がセットで
最初の介護保険のうたい文句は、「保険料を払えば、だれでも必要な時に介護が受けられる」でした。ところが今は、介護保険料と利用料の負担増、介護給付範囲の縮小がセットで行われていることが大きな特徴です。
2000年に始まった介護保険の保険料は、一ヶ月2848円(京都府平均)でしたが、現在は倍以上に。さらに、入所者や施設利用者の負担が急増。2015年8月から年金などの収入が単身世帯280万円以上、2人以上世帯346万円以上は2割負担になり、「特養に申し込んでいたが、入所をあきらめた」「ショートステイのリハビリの回数や日数を減らした」「デイサービスを週3回利用から2回に減らした」など、利用者と家族への大きな影響が出ています。
また、毎月の利用料が年金収入を上回り、「貯金もないのに月2万円も負担が増え、家族の生活を圧迫している」と、肩身の狭い思いで利用されている方もいます。
2015年の介護報酬改定も、経営に大打撃となっています。介護報酬が2・27%も削減され、全国の特養ホームの3割以上が赤字、ホームヘルパーは5割近くが赤字です。やむなく閉鎖する事業所も後を絶ちません。介護職員などの人材不足はますます深刻になっています。募集しても応募がなく、特養ホームの46%が人材不足で、79%の施設が「職員確保が困難」な状態になっています。
府の独自施策で国の悪政の防波堤に
私は、「憲法で保障された国民の権利を守ることが福祉の仕事」と思っています。しかし、今の状況は、その使命に応えられるものではありません。
介護する人も介護される人も、安心して使える福祉・介護制度にすることが急務です。国は、国庫負担を増額し、介護保険料の引き下げ、年金で払える保険料にすることが大切です。
京都府は、「福祉・介護の改悪はやめよ」と国に強く求め、自治体独自の施策で「国の悪政の防波堤」になることが必要です。それが、介護の現場から見た「憲法が生きる自治体づくり」ではないでしょうか。いま取り組んでいる「みんなのいのちを守る署名」を、社会保障を守り、京都を変える力にしたいです。
京都自治労連 第1911号(2018年1月5日発行)より