機関紙 - 介護保険認定給付業務の民間委託 法的問題点を指摘…京都自治労連弁護団が「意見書」
京都市が、2020年4月に予定している介護保険認定給付業務の集約委託化、介護保険嘱託員130人の雇い止めについて、京都自治労連弁護団が、『介護保険認定給付業務の民間委託の法的問題点』を「意見書」としてまとめ、6月26日、京都市に提出しました。「意見書」が指摘する問題点は、公務公共業務の民営化が広がる中で、京都市だけではなく、すべての自治体に関わる問題でもあります。(全文は京都自治労連HPに掲載)
「意見書」では、介護保険認定給付業務の重要性について、「市民の基本的人権を保障する地方自治体の最も重要、かつ基本的な役割の一つ」「民間の営利事業者ではなく、公平・公正な立場である市区町村が所轄することとなっている」とし、「こうした業務の安易な民間委託の拡大は、各種法令に違反する事態を招きかねない」と指摘しています。
偽装請負や個人情報漏洩のおそれ
その上で、民間委託が偽装請負とならないためには、「自治体職員が請負労働者に業務上の指示をしたり、請負労働者の管理・監督をしてはならない」としています。例えば、市職員が具体的な業務指示を内容とする文書を作成し、これを請負業者の責任者に交付し、責任者がその内容通りに業務指示を行った場合は、偽装請負にあたり、違法であると指摘しています。
個人情報の保護については、「介護保険認定給付業務は、市民のプライバシーに関する個人情報を取り扱う業務である。こうした情報に民間事業者が接することは、住民の個人情報の保護や憲法で保障されたプライバシー権を脅かす」と危険性を示しています。
住民サービスが低下!
「意見書」は、住民サービス低下のおそれも指摘しています。「偽装請負を避けようとすれば、自治体職員と受託企業の従事者の間で、業務の直接のやり取りができなくなる」として、自治体職員の判断を仰ぐことが必要な場合であっても、自治体職員と受託企業双方の管理職を通じたやりとりしかできないため、非効率的になるとしています。
また、民間委託のもとでは、これまでの蓄積が継承されないばかりか、今後も雇用などが不安定となるため、専門性やノウハウが継承されません。
さらに、採算が取れない場合は、事業者が途中撤退するおそれもあり、しかも直営より民間委託は、コストがかかることになりかねない危険性を示しています。
地方自治法の趣旨に逆行
地方自治体における公務の運営においては、「安易な民間委託への移行は、偽装請負となるおそれがあり、各種法令にも抵触し、しかも住民サービスが低下するおそれがあり、『住民の福祉の増進を図ること』という地方自治法1条2項の趣旨にも逆行するものであって、地方自治体がその公的責任を放棄するに等しい。公務員を『全国民の奉仕者』とした憲法15条の理念に照らし、自治体が責任を持って実施すべき事業は、任期の定めのない常勤職員を中心として運営するという原則に立ち返るべきであり、安易な民間への委託は行うべきではない」と方針の撤回を強く求めています。
京都自治労連 第1947号(2019年7月20日発行)より