機関紙 - 給食:住民のための仕事に誇りとやりがいを…「美味しかった!」の笑顔がうれしいですね…子ども・保護者の期待に応える給食支えて
取材でお邪魔した精華町立川西小学校は、廊下から調理場が見えるようになっていて、休み時間には「今日の給食は何かなあ」と覗いていく子どもたちもちらほら…。調理室では、時計を気にしながら、テキパキと働く調理師の皆さんの姿を見ることができます。
子どもたちが食べるときが一番おいしくなるように
今回取材に応じていただいたのは、精華町立川西小学校で給食調理員として働くAさん。この仕事で20年以上のベテランです。
この川西小学校では毎回500食以上を、アルバイトを含め基本4人で作っています。正規雇用の職員はAさんひとり。朝は、下準備、業者からの食材搬入などに追われます。「その日の食材の状況を確認したりして、意外と時間がかかりますね…」。1時間以上早く出勤することも…。揚げ物を出す日は、ひとつひとつ粉つけて卵つけてパン粉つけて…(1500個くらい)大変です。1日として同じタイムスケジュールですすむことはないそうです。
「給食の時間は毎日決まっています。昼食時間の5分から10分位前に各階、クラスごとに並べます。献立それぞれが、子どもたちが食べるときに一番おいしくなるように調整しながら調理しています」「その日に納品された材料や気候はもちろん、出欠勤など人員にも左右されます」。
取材した日も、調理を終えた野菜の和え物を保冷室に運び、斜めに置いて野菜から出る水分を調整している作業を見ることができました。
「実は給食が嫌いだった」「美味しい」声がうれしい
精華町の小学校は、5校全部が自校方式。地元で取れた食材を積極的に使う「地産地消」を取り入れています。栄養士の先生方やそれぞれの学校調理員皆さんの奮闘もあり、「家では食べない物も給食では食べる」「子どもに『このメニュー作って』とせがまれた」など、子どもや保護者の方々からも評判です。
「他の自治体から転任してきた先生から『美味しい』『すごい』と言われたときはうれしかった」「年に数回ですが献立のレシピを保護者に紹介しています」と照れながら話すAさんですが、実は小学校の頃は給食が嫌いで登校拒否になったこともあったそうです。学校を卒業し、勤め先を探しているとき、役場が正規職員として給食調理員を募集していると知り、「よし、美味しい給食作るぞ」とこの世界に飛び込みました。
「実際現場に行くと、普通に調理するのと、給食調理は別ものと先輩たちにノウハウを教わりながら今までやってきました」「年々厳しくなる衛生管理下で、子どもたちに『美味しい』言われ、保護者に期待される給食を作り続けることが目標でありヤリガイですかねえ」と話してくれました。
現場で人が足りない 安定・継承が心配
Aさんは、今の現場について、心配事も話してくれました。
採用されたころは、正規雇用の職員が1校に3人から4人いて、(異動しながら)各学校の調理数や設備など特徴を職員で共有し、どの学校でも安定した給食を出すことができたそうです。休暇や研修もできました。
ところが、現在では、退職不補充が続き、1校にひとりの正規雇用職員配置。「私のあと一人採用されましたが、ここ十数年採用がありません」「昨年、5校のうち1校が嘱託職員とアルバイトだけになってしまいました」「不安定な待遇で子どもたちに安全で美味しい給食を提供する責任を負わすのは酷な話です」と不安そうにAさんは話します。
夏休みや冬休みが減っていて、給食を出す日が増えています。休暇の期間も、日ごろできない給食の機器の清掃やメンテナンスがあります。「子どもたちの使う食器だって、毎日きれいに洗っていますが、欠けたり黄ばんだりしてきます。これらのメンテナンスも結構時間がかかります」。また、一方で、同じ現場で働く嘱託雇用やアルバイトの方々が、4月からスタートする会計年度職員制度で待遇がどうなるのか心配しています。
Aさんから、給食調理員としての誇りとやりがいが伝わってきます。
「給食調理員を正規雇用で採用してほしいですね。住民要求の高い学校給食を公的責任で維持してほしいと思っています」とAさんは訴えました。
民間委託化を許さない
全国の自治体給食職場で、民間委託化が進められています。会計年度任用職員制度がスタートし、非正規雇用職員から不安の声があがっています。一方で、『食育』としての給食のあり方、地産地消の推奨など、住民、地域からの要求が高まっています。
給食まつり開催や災害支援など組合の積極的な取り組みで、要求の前進をかちとる組合が多く出てきています。
京都自治労連 第1959号(2020年2月5日発行)より