機関紙 - シリーズ「命の水」を考える1 ―広域化・民営化で水道は守れるのか―
水は憲法が保障する生存権そのもの
2018年12月、水道事業の運営権を民間に売却できる仕組み(コンセッション方式)の導入などを盛り込んだ水道法「改正」が行われました。これを受けて京都でも、京都府主導で「京都府水道事業広域的連携等推進協議会」が立ち上げられ、具体化の動きがすすんでいます。世界では水道民営化の失敗から再公営化の動きが広がるなかで、日本ではなぜ広域化・民営化推進なのか、水道事業を守るために自治体(水道事業者)や住民はどうすればいいのか、一緒に考えていきたいと思います。
水道は「命」のインフラ
日本の水道普及率は97.9%(2016年現在)に達し、私たちはふだんあまり意識することもなく、蛇口をひねれば24時間365日、いつでもどこでも綺麗に浄水された安全で安価な水を使えて当たり前と思って暮らしています。
しかし、事故や災害で断水などが起こると、人は水なしでは生きられないこと、水道がかけがえのない「命のインフラ」であることを痛感します。
安全な飲み水 貴重な財産
世界に目を向けてみると、21億人(世界人口の3割)の人々が安全な飲み水を手に入れられず、45億人(世界人口の6割)が安全に管理されたトイレを使えないなどの現実があります。
「湯水のように」という言葉があるように、貧富の差に関わらず必要に応じて水を利用できる日本は大変恵まれた国であり、自然的条件とあわせて、地域住民と水道事業者である自治体、水道職員が築いてきた貴重な財産です。
広域化・官民連携が唯一の策か?
水が「命のインフラ」だからこそ、これまで日本の水道事業は、憲法25条の「生存権」を保障するため、国(厚生労働省)が所管し、自治体とその職員が担ってきました。
今、水道事業は、人口減少による需要減、管路の老朽化、技術職員不足などの共通の困難に直面しています。政府は、これを乗り切るため、水道の「基盤強化」とそのための広域化(事業統合)と官民連携(民営化)が必要と説明しています。しかし、本当にそれが唯一の解決策なのか、次回以降で見ていきたいと思います。
京都自治労連 第1961号(2020年4月5日発行)より