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機関紙 - あの人に会いたい6 子どもの虹情報研修センター長(日本虐待・思春期問題情報研修センター)川﨑 二三彦さん

あの人に会いたい6 子どもの虹情報研修センター長(日本虐待・思春期問題情報研修センター)川﨑 二三彦さん

カテゴリ : 
組合活動
 2020/8/7 18:10

かわさき・ふみひこ=1951年岡山県生まれ、32年間、京都府の児童相談所に勤務/2007年4月から虐待問題に取り組む職員等を支援する子どもの虹情報研修センター研究部長となり、2015年4月からセンター長

著書:『虐待死 なぜ起きるのか、どう防ぐのか』(岩波新書)、『うちに帰りたくないときによむ本』(少年写真新聞社 監修)他


虐待は、社会全体で考える問題
子どもたちの将来や命を守るため
児童相談所の拡充は急務

 児童虐待が後を絶たず、犠牲となった子どもたちの凄惨なニュースが続きます。コロナ禍の今、深刻な児童虐待の増加も心配です。"あの人に会いたい"今回は、京都府の児童相談所で32年間勤務され、現在は、子どもの虹情報研修センターのセンター長として虐待問題に取り組んでおられる川﨑二三彦さんにお話を伺いました。

――なぜ虐待が続くのでしょうか

川﨑 虐待は、4つの要素が揃うとリスクが高まると言われています。すなわち、(1)親自身の子ども時代が不遇で、ケアもされていない(2)現在の生活に強いストレスがある(3)社会的に孤立し、援助者がいない(4)望まぬ妊娠など親にとって意に添わない子、です。

2つめに挙げた生活上の問題では、経済的困窮なども大きな要素となります。現在の日本は、7〜8人に1人の子どもが貧困状態にあり、ひとり親家庭の貧困率も約5割でOECD諸国の中では最悪です。私は10年以上前に出した岩波新書「児童虐待」で、「思い切った社会的コストを」と述べましたが、こうした貧困を克服する政策を充実させてほしいものです。

ところで、虐待が生じた家族への支援は、児童相談所等の専門機関が対応すればいいというわけではありません。子どもが所属している学校や保育所等での取り組みも重要ですし、保健、医療、教育、司法を含めたさまざまな立場の人が知恵を絞り、協力していくことが不可欠です。また、社会的に孤立している人が多いことを考えると、そんな親子と気軽に挨拶するような関係づくりも虐待の未然防止につながる大切なことです。あちこちで取り組まれている「子ども食堂」なども貴重です。要は、「虐待問題は、社会全体で考える問題」だということです。

――コロナ禍で虐待は増えるのでしょうか

川﨑 学校が一斉休校となり、遊び盛りの子どもたちが屋内で過ごす時間が長くなり、親御さんも仕事がなくなったり、自粛やテレワークで在宅時間が長くなりました。親子ともストレスを抱えたまま1日中家の中で過ごすことで、虐待が深刻化していないか気がかりです。反面、家庭内の情報が隠されて虐待の発見が難しくなり、通告件数がむしろ少なくなったとも聞いています。また、通告を受けて安全確認のために児童相談所等が家庭訪問しても、「こんな時期に来ないでください」などと言われることもあります。感染防止と虐待から子どもの安全を守る、この二つをどう両立させるのか、児童相談所等の機関は、大変難しい課題を突きつけられているのではないでしょうか。

――児相の体制強化には、労働組合も強く要求し地方自治体からも繰り返し要望がされています

川﨑 児童相談所の体制が欧米などと比べて脆弱であることは、以前から指摘されていました。こうした中で、2018年には東京都目黒区で5歳の女児が虐待死し、「ゆるしてください」などと書いたメモが発見されると、虐待に対する社会的な関心が大きく高まりました。

政府は、「児童虐待防止対策の強化に向けた緊急総合対策」を打ち出しましたが、翌19年には千葉県野田市で小学4年生女児の虐待死事件が発生します。実は私は千葉県の検証委員長として課題や提言をまとめましたが、こうした事件も背景にして、児童福祉法等の改正が行われました。そこでは、子どもの権利擁護などの柱とともに児童相談所の体制強化も謳われ、具体策として児童福祉司や児童心理司の大幅増員の計画も示されました。

あらゆる部門で行政改革が進行し、自治体職員が減員される中、子どもの虐待を防ぐために政府がこうした増員を提起したことは、それだけ現場が逼迫しているということでもありますが、重要なことだと考えています。

とはいえ、児童虐待問題は、単に人員を増やせば解決するというものではありません。というのも、子どもの安全を確保するため、保護者の意に反してでも虐待された子どもを一時保護する等の権限を持つのが児童相談所です。当然保護者と鋭く対立することもあり、新しく来た新人職員が簡単に担えるものではないからです。中には多忙と困難の中で燃え尽きてしまう職員も現れます。

私の勤務する子どもの虹情報研修センターは、指導者層の研修を担当していますが、コロナ禍で参集型の研修開催が難しい中、オンライン研修等も行っていますが、申込み多数のためお断りする方も出ています。こうした状況下でもしっかり学びたい、子どもや家族に支援したいとの思いは大変強いと感じています。

――仕事のやりがいについてどう思われますか

川﨑 私は京都府職員時代の全てを児童相談所で勤務しましたが、実は行政職として入庁し、相談現場で働くことなど想定外のことでした。「自分が相談員になってもうまくいくはずがない」と思うと、最初は苦しみばかりでしたが、しばらくするうち、この仕事がさまざまな人と出会う大変創造的な仕事だとわかって、退職まで児童相談所で働くことになりました。

とはいえ、今この仕事をされている方は、私が従事していた頃の何倍もの困難と何倍もの業務量に直面し、大変な努力をされています。まずはそのことに敬意を表したいと思いますし、国や自治体のトップにいる人たちにも、子どもたちの将来や命を守るために職員が日々奮闘していることを分かってほしい。

多忙のあまり、職員の皆さんは、一つ一つの家族の固有の特徴等に思いをめぐらせる余裕がないかも知れませんが、同僚や上司などと短時間でも言葉を交わし、チームワークを大事にして対応していただければ、苦しいけれども、がんばってみようという気持ちがわいてくるのではないでしょうか。

皆さんの取り組みを心から応援しています。


京都自治労連 第1965号(2020年8月5日発行)より

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