機関紙 - あの人に会いたい11 京都北都信用金庫 専務理事 京崎 操さん…地元企業、自治体、信金のつながり強めコロナから地域経済、暮らし守りたい
きょうざき・みさお=
2011年 総務部長
2013年 理事・人事部長
2017年 常務理事
2018年 専務理事
京都地方最低賃金審議会委員
丹後地域戦略会議委員
与謝野町行政改革推進委員会委員
公益財団法人 京都府丹後文化事業団理事
近畿しんきん健康保険組合監事
コロナ禍"今頑張らなければ"と奮闘する地元密着の金融機関
新型コロナウイルス感染拡大が京都府北部にも広がり、地域経済が大打撃を受けています。経済と暮らしを守る懸命の取り組みが行われています。「あの人に会いたい」今回は、苦境にある地域の中小企業・業者に寄り添い奮闘されている京都北都信用金庫の専務理事、京崎 操さんを訪ねてお話を伺いました。
――新型コロナ感染拡大は、京都府北部の地域経済にどのような影響を与えていますか
京崎 京都府北部の経済は大変深刻です。丹後ちりめんの生産は、最盛期の100分の1以下ですが、昨年の4月以降は、展示会も出来ずなかなか売れない事態に。また自動車部品を中心とする機械金属は、自動車販売の減少で受注が減っています。
観光業は、たくさんのインバウンドで、地域経済をけん引していましたが、コロナ感染拡大でストップ。昨年7月のGoToキャンペーン開始以降、観光客が押し寄せて、京丹後市では10月は203%(昨年同月比)の宿泊数が、11月にカニがスタートするとさらに伸びて「1月には、300%に」と期待が膨らみましたが、12月27日でGoToキャンペーンが中止、いま大変な事態になっています。
京丹後市内の37軒の旅館やホテルに問い合わせたところ、今年4月までの予約のうち、2万1千件、7万人のキャンセルがあり、何と17億円の損失とお聞きしました。
旅館やホテルでは、カニシーズン(11月〜3月)の売り上げが一年の収入の大半を占めており、廃業が出るのではないか心配です。
また、丹海バスは、北部地域の路線バスだけではなくカニシーズンの高速バス、天橋立の周遊船やケーブルカー、レストランなど北部観光を支える大きな企業ですが、路線バスと一部の高速バスを除いて、現在はみんな止まっています。
さらに舞鶴では、JMU(旧日立造船)の撤退問題があり、下請け関連への大きな影響が心配です。漁業もコロナ禍で大きな影響を受けています。
これらの状況は、地域の雇用にも深刻な影響を及ぼし始めており、解雇の拡大が心配されます。
――北都信金は、地元経済を支えるためにどのような対策をとっておられますか
京崎 この間一番力を入れてきたのが、昨年5月1日から開始された実質無利子・無保証料型の「京都府新型コロナウイルス感染症対応資金」の取り扱いです。いち早く利用していただくために職員は休日出勤し、ゴールデンウィーク中の5月2日、4日および9日に店舗を開けて、市町村の担当者にも来ていただいて相談会を実施しました。
また、コロナ感染対策を行い「何か困っておられませんか」とお取引先を訪問し、経営相談や融資相談に取り組んできました。
当金庫の営業地域は、亀岡以北の地域です。北部では当金庫が、"ナンバーワン金融機関"との自負もあり、「困難な今こそ、頑張らなければ」と職員はよく頑張ってくれたと思います。そのかいあって、12月末時点で、1796件、287億円の利用となっています。
しかし、実質無利子でも融資は返済しなければなりません。コロナ感染がいつまで続くか先が見えない中で、融資を受けることをためらっておられる事業者さんもおられます。休業を補償する支援金の充実こそ求められています。
当金庫では、緊急事態宣言の影響が大きかった飲食店を支援し、職員の労をねぎらうために、全職員を対象に5月にはテイクアウト手当を1万円支給しました。これは、飲食店や職員からも好評で、第2弾を2月の給料日に出すことを理事会で決定したところです。
――日銀のマイナス金利政策や地方銀行削減、中小企業削減の動きなどについてどのようにお思いですか
京崎 私の立場から、日銀の政策などについて申し上げることはできません。ただ、金利が低ければ本当にそれでいいのか、それで地域で資金が循環し、地域経済が発展し暮らしが豊かになるかといえば、現実はなっていないのではないでしょうか。私が就職したときは、金利が4%台でしたが、今以上に地域で資金が循環し、暮らしや営業のために使われていたと思います。
中小企業についても、競争力が弱いところを潰して北部の地域経済・暮らしが成り立つのでしょうか。
――国や自治体への要望をお聞かせください
京崎 現在、私たちの相談会に京都府の政策で、中小企業診断協会から中小企業診断士の方に無償で来ていただいています。訪問した先々で「無料で相談会をやっています」と声をかけ、いっぱい予約が入っています。無料の相談会を頼りにしている人がたくさんいます。引き続き、この制度を続けていただきたい。
国のコロナ対策の様々な補償制度は、申請しにくく、内容も実態に合わず、安心して休業できるものではありません。実態に合った制度となるよう、国に対してしっかり現場の意見を伝えてほしいです。
自治体は、人員削減され大変とは思いますが、地域の中小企業や事業所に足を運んで実態を把握し、有効な対策が行える人員配置をお願いしたいですね。
私たち金庫職員は、「あのとき相談に乗ってもらって、本当に良かった」と声をかけていただいたときが、この仕事を続けてきて本当に良かったと思える瞬間です。これは、自治体の職員の皆さんにも通じる思いではないでしょうか。新型コロナ感染症から地域経済と暮らしを守るためには、地元企業(住民)と金庫と自治体が力を合わせ、信頼ときずなをより強くすることが必要と考えます。その力が、コロナ後のまちづくりの確かな力となるのではないでしょうか。
京都自治労連 第1971号(2021年2月5日発行)より