機関紙 - 危険なデジタル関連法案は撤回 廃案に
現在、国会で審議されている「デジタル関連6法案」は、私たちの暮らしや権利、自治体の在り方に重大な影響を与えます。
個人情報が危機
企業のアクセス優先
第一の問題は、自治体の個人情報が民間企業の利益の為に脅かされる危険です。「デジタル社会形成基本法案」では、国や自治体が有する膨大な住民情報を標準化し、民間企業が個人の同意なくその情報にアクセスして利用することを想定しています。
そして、その障壁である自治体の個人情報保護条例を骨抜きにするために「デジタル社会の形成を図るための関係法律の整備に関する法律案」で、個人情報保護制度について全国的な共通ルールの規定と所管の一元化による情報利用の促進を図ろうとしています。
現在、多くの自治体の個人情報保護条例で制限されている「情報連携(オンライン結合)」が、今後国で定められる共通ルールに違反するとなれば、自治体に対し地方自治法に基づく「是正の要求」等が出されることも想定されており、自治体による個人情報保護が脅かされることになります。
標準化システム押し付け
独自施策できなくなる
第二の問題は、自治体独自のサービスの提供が出来なくなることです。
「デジタル社会形成基本法案」では、国と自治体の情報システムの共同化・集約をすすめるとされており、「地方公共団体情報システムの標準化に関する法律案」で、国民健康保険など対象17業務(別表)のシステムを国の定める標準化基準に適合するものにしなければならないとされています。
自治体独自のサービスを実施するためには、標準化されたシステムをカスタマイズする必要がありますが、自治労連が今年2月に行った総務省とのヒアリングで「カスタマイズは想定していない」と発言しています。実際、周辺自治体とシステムを共同利用しているある町で、「3人目の子どもの国保免除を」との議員提案に対し、町長が独自にシステムをカスタマイズできないと提案を拒否する事例が既に起きています。
【標準化17業務】
- 児童手当
- 住民基本台帳
- 選挙人名簿管理
- 固定資産税
- 個人住民税
- 法人住民税
- 軽自動車税
- 就学
- 国民健康保険
- 国民年金
- 障害者福祉
- 後期高齢者医療
- 介護保険
- 健康管理
- 生活保護
- 児童扶養手当
- 子ども・子育て支援
民間企業の自治体支配
行政がゆがめられる恐れ
第三の問題は、デジタル関連民間企業の自治体支配によって、行政がゆがめられることです。
昨年12月25日、政府は「デジタル社会の実現に向けた改革の基本方針」を閣議決定し、同日、総務省は「自治体デジタル・トランスフォーメイション(DX)推進計画」(対象期間2021年1月〜26年3月)を発表。
「自治体DX推進計画」では、各自治体の推進体制として、首長のもとにCIO(最高情報統括責任者)を置き、全庁的・横断的な推進体制を構築するとされており、既に今年度から京都府をはじめ多くの自治体で「デジタル推進室」などが新設されています。
「デジタル庁設置法案」では、政府が新設するデジタル庁に民間企業から多くのIT人材を非常勤公務員として任用するとしています。自治体でも、CIOを補佐するCIO補佐官などに民間企業からの任用を予定し、しかも企業に籍を置いた任用も想定されており、国はその経費について特別交付措置(2分の1)をしてまで推進しようとしています。
CIO補佐官などへの民間企業からの任用は、デジタル化に関わる自治体の意思決定に民間企業が直接関与することにつながります。デジタル関連の民間企業に在籍するCIO補佐官などが重要ポストに就くことは、官民癒着を引き起こし、公務労働が住民のための仕事より民間企業に奉仕する仕事に重点が置かれる危険性があります。
京都自治労連 第1974号(2021年5月5日発行)より