機関紙 - 【技術】ダムの運行と維持・管理 地域防災の責任…水害から地域住民を守る仕事に緊張感 技師として継承とスキルアップしていきたい
大野ダムは、南丹市美山町の由良川上流部に位置する竣工60年以上の古いダムです。大雨・台風などで由良川に流入する水を大野ダムで貯水し管理・放流することで、綾部・福知山の下流域での氾濫などを防ぐ役割を担っています。
このダムを管理しているのは京都府です。今回は京都府建設交通部に所属し大野ダム総合管理事務所に勤めるBさんに、ダム管理の仕事や技師としての仕事についてお話を聞きました。
巨大なダム施設と周辺設備
毎日の点検と更新は欠かせない
大野ダム総合管理事務所には、全体で約15人の職員が勤務しています。Bさんはその一人で、電気技師として働いています。「同じ電気技師が3人、他にも土木技師や職種は様々ですが、皆で手分けして施設の点検整備する毎日です」と日常の仕事を話すBさんですが、大野ダムだけでも広大です。取材した当日も、施設の補修やダムの潜水工事が行われていました。他にも、ダムへの流入を把握するためダム上流の各所に設置された雨量計や水位計などの管理を行っています。「京丹波町にある畑山ダムへも大野ダムから毎日点検に行っています」。地味な仕事が欠かせないといいます。
大野ダムは竣工以来60年が経ちますが、システムは日々更新されており更新作業もBさんの仕事です。「テレメータといわれる設備でダムから遠く離れた場所の雨量や河川水位を事務所で監視しています」とBさん。専門的な話を分かりやすくかみくだいて話してくれます。
ダムの修繕などは、専門業者に発注しますが、業者との打ち合わせ、立ち合い、記録などの保存・整理も重要な仕事です。「システム更新や修繕などで、どんどんダムの仕様が変わりますから、整理し、継承していかないといけません」とダムの安定した運用に責任を持っています。
地域の天気に敏感になります
「防災」の役割に責任感
ダムの役割の中心は防災です。下流に大きな被害が出ないよう貯水し、放流も行います。「南丹地域に大雨注意報がでると、『待機』の体制になります」とBさん。365日24時間、12人6班で管理事務所に詰める体制を作っています。「当番の日に大雨注意報が出ると事務所にいなければいけません。自宅にいても電話で連絡があると駆け付けなければいけないので、特に大雨・台風の時期は気が休めません」とダムの仕事の重要性をを話します。
Bさんは、いま、宇治市から通っています。「毎日1時間から1時間半くらいかけて通っています。ダムの向かう道も雨量が上がると道路閉鎖されてしまうので、早め早めに対応するように心がけています」。
Bさんは施設の維持・管理はもちろんのこと万が一の時にも地域住民を守る役割も担っていることに責任とやりがいを感じています。
技術者としてのやりがい
資格取得などスキルアップ
Bさんは、8年前「電気・電子技師」として採用されました。「最初の職場で府立高校の新築にかかわれたことがよかったです」「学校の照明や放送設備など、設計や施工業者とのやりとりなど、建築、機械などの技師と一緒になって働くことができました」と技術職のやりがいを感じました。Bさんは、その後も施設建設前の立案の段階での技術サポート業務を経験します。「利用者の使い勝手の問題や施工業者とのやり取りなど、技術者として勉強になりました」と技師としてのトータルでのスキルアップが必要だと感じました。「今の大野ダムではテレメータ設備など『電気通信設備』がダム管理の上で重要な役割を担っています。資格取得も含めてもっと勉強したいです」と嬉しそうに話すBさんから、技師の誇りを感じました。
京都自治労連 第1977号(2021年8月5日発行)より