機関紙 - 【学校】施設管理と教育サポート 教育現場を支える学校用務員…児童が安全にすごせるのが何よりです
京丹後市立丹後小学校は、「間人(たいざ)ガニ」で有名な間人漁港の近く、道一本隔てて日本海が一望できる位置に建つ児童数148人(2021年4月)の学校です。先生や専門スタッフ、事務職員、給食調理員など30人ほどで運営されています。その中のひとり、学校用務員のBさんに、仕事の様子、苦労ややりがいをお聞きしました。
学校の施設管理、行事のサポートなど仕事は多岐に
学校用務員の仕事について、Bさんにお伺いすると「ひとことで言えば『なんでも屋さん』ですね」と笑います。日頃は学校敷地内の草刈り、グランドの整備、学校施設や用具のメンテナンスなどを行います。入学式や運動会など学校の行事に合わせて、施設や用具の整備も行います。「春になると生徒の椅子や机の高さ調整などを一つひとつ行っていきます。学校敷地内にある植木や花壇の手入れも欠かせません」とBさん。玄関にある松(写真)の剪定もBさんによるもので、「他校で植木剪定が得意な同じ学校用務員の仲間にアドバイスをもらいながら作業しています」と照れ笑い。
一方で丹後小学校ならではの苦労もあります。「海と隣接しているため、柵や校舎など施設の錆被害が多く苦労しています。校舎北側の窓は海からの風が吹きつけて、塩で真っ白になり、アルミサッシでも錆が出てきます」とBさん。窓・窓枠の洗浄や柵の点検・補修は欠かせません。「柵の修理などは、業者が行いますが、修理に来るまでの期間、倒れないように仮補修しなければなりません」。Bさんは「すべては生徒や保護者、先生方が、怪我をしたり事故に遭わないためです」と仕事の重要性を話します。
学校長や教育委員会と確認をとりながら仕事を進める
「草刈りなどは午後4時以降に行うようにしています」と話すBさん。草刈り機や刃物を使う場合は常に事故を想定し、児童が下校した時間に行うのが良いと校長先生と話し合いました。「騒音の問題など、様々な作業は学校の授業や行事だけでなく地域との連携も必要となってきます」「一旦帰宅した生徒が学校に遊びに来たり、地域の方々も校庭を利用していますから、公共施設としてどのように維持管理していくのか、様々な方と確認をとりながらの作業です」とBさんは話します。
一方で、労働安全衛生の問題もあります。草刈り機やチェーンソーなどはきちんと講習を受けて、作業時間制限など労働安全衛生基準に則った作業を行わないといけません。多岐にわたる学校用務員の仕事をすべて行おうと思うと、様々な分野で資格取得や講習を受ける必要が出てきてしまいます。「"学校用務員がどこまでやるか"がこの仕事に携わる者の悩みですね」とBさんはいいます。
「何もないこと」が一番
生徒が安心してすごせる学校
Bさんは、旧6町合併前の網野町に就職、学校用務員の仕事を始めました。「実は学校用務員の仕事をよく知りませんでした」とBさん。当時は、他校の先輩用務員と共同作業をしたりしながら仕事を覚えていきました。「夏休みに各校にいた用務員で集まって、砂場の土台になる木枠の交換をみんなで力を合わせて行いました。太い丸太に固定用の穴を空けて積み上げて組んでいく…"用務員だけでこんな作業もできるのか"と思いました」と当時を振り返ります。
6町合併の時には、各町で「技術員」「作業員」や「校務員」など、この仕事の名称と職の位置付けがバラバラで、「小中学校の用務に携わる」という位置付けを明確にして「学校用務員」という名称に統一し、今に至ります。現在は京丹後市の正規雇用の学校用務員は9名。来年、再来年と定年を迎える人が続きます。「学校用務員の正規雇用の採用は平成9年を最後にありません。技術とノウハウの継承が心配」「この仕事は、(事故やトラブルが)『何もない』ことが一番だと思っています。学校生活を児童が安心して送れること、先生方が不自由なく教育を進められることの下支えが出来ればといつも考えています」と話すBさんの言葉に仕事への誇りを感じました。
京都自治労連 第1979号(2021年10月5日発行)より