機関紙 - 【地域交通】住民の移動手段守る交通施策…伊根町で乗合交通「いねタク」がスタート…地域交通の充実と新たな発展めざす
住民の高齢化がすすむ自治体では、高齢者の移動手段確保が行政の喫緊の課題となっています。
丹後半島の東部に位置する伊根町では、今年4月から伊根町予約型乗合交通「いねタク」がスタートしました。この新しい交通システムの管理運営を担当している企画観光課のAさんに、事業の経過や運用状況などをお聞きしました。
知恵出し合って町民の「足」を確保
「伊根町独自の課題があります」と話し始めたAさん。第一に、「舟屋」で有名な伊根湾から日本海に向けて突き出た海岸沿いの観光・漁業の地域と、町内北部の森林・農地地域があり、2つを結ぶ複雑な道路網があります。第二に、町民の高い高齢化率だといいます。伊根町は課題解決へコミュニティーバスを運行しましたが、土日の運行が無い、本数が少ないなどで、利用率が低下し廃止が決まっていました。
住民の利便性を上げるにはどうしたらいいかと検討した結果、乗合のタクシーということになりました。伊根町は全世帯にタブレット端末を配布し、防災情報に加え様々な行政情報を配信しています。このタブレットを利用して誰もが簡単にタクシーを予約できるシステム開発を行いました。試験運用を行うと様々な課題も出てきました。「タブレット端末の操作方法や、配車時間の調整など、システムの手直しも行いましたし、実際に運行する伊根町ふるさと振興公社との打ち合わせなど綿密に行ってきました」とAさん。ここまでは前任の担当者から引き継いだ話だと照れくさそうですが、話を聞いて新たな発展の可能性も感じたといいます。「町内では乳幼児とその母親を対象に定期的な体操や懇談をする『ぽれぽれ』という子育て支援を行っていますが、乳幼児を家から連れ出してチャイルドシートに座らせて…一緒に外出するって大変なんです。『ぽれぽれ』に行くお母さんたちなど住民の方が生活の中で便利に利用してもらえたらいいなあと思いました」と話します。
「いねタク」スタート
きめ細かいサービスを提供
「いねタク」の本格運用がスタートするにあたり、主担当になったAさんは利用者拡大を目指して奮闘中です。利用するには、まず利用者登録が必要です。登録すると、その方の自宅前に車が着けるか道路などを確認して一軒一軒調整し登録していきます。「道路事情で自宅前までいけない場合は、すぐ近くの元バス停留所などを登録して住民に返していきます」「『いねタク』を利用したいと電話がかかってきていますので、タブレット端末での登録方法や予約の取り方など丁寧に説明して登録者を増やしています」とAさん。大きな字で書かれたガイドブックを見せてくれました。「実際に予約を受けている公社では、電話での予約も受け付けています。安定運行の面ではタブレット予約をもっと広げていきたいですね」。場所や時間にもよりますが、予約後10分から20分程度での配車も可能となり利便性の高さも向上しています。
安全で環境にも配慮
観光客の利用も増やしたい
スタートして1ヶ月。4月の利用状況は600件以上と、順調に利用されています。「診療所への通院やサークルや寄合参加など、最初の目標どおり高齢者に多く利用いただいています。スクールバスの代わりに通学で小学生が利用したり、家族で外食に出るのにも上手に利用してもらっています」とAさんは嬉しそうです。
「いねタク」に用意した車両はすべてEV車。交通手段という身近なことからエネルギーの使い方などを考える仕組みづくりをスタートさせたいとEV車にしました。「住民利用だけでなく観光客にも利用できるようにスマホからの予約ができるようにしています」とAさん。
「住民がストレスなく外出をして、行政サービスを利用したり、買い物などが出来れば町が活性化します。町民の健康増進や福祉向上に寄与できる仕事ですね」と笑みがこぼれます。
京都自治労連 第1987号(2022年6月5日発行)より