機関紙 - あの人に会いたい23 京都府商工団体連合会 事務局長 小原 義弘さん…中小業者の元気が地域を活性化する
こはら・よしひろ=
1961年 京都市生まれ
1983年 東淀川民主商工会に入局
2000年 右京民主商工会に入局
2011年 同 事務局長
2022年 京都府商工団体連合会事務局長
消費税5%減税、インボイスは中止に
行政は中小業者に寄りそった施策を
京都経済の主役である中小企業や中小業者の皆さんの営業と暮らしは、長引くコロナ禍、止まらない物価高騰、上がらない賃金と社会保障負担の増大のもとで深刻さを増しています。現状打開のために求められることを京都府商工団体連合会の事務局長・小原義弘さんにお伺いしました。
――京都の中小業者の皆さんの現状についてお話しください
コロナのまん延防止等重点措置が3月に解除されて、5月は多少とも上向きと言われていますけども、まだまだ警戒感が強く、客商売、飲食店では売り上げは低迷したままです。祇園や木屋町の歓楽街の状況は厳しく、高い家賃や人件費の問題もあり、けっこう名の通った飲食店が閉店されるなど、かなりの店が廃業に追い込まれています。
和装関係は、月収が数万しかなく、アルバイトで生活を支えている方もけっこうおられます。
製造業・建築業では仕事があるところとないところに二極分化していますね。昨年秋以降、資材の高騰と物不足で建築関係はひどい状況です。最近は資材の値上がりが、例えば11月に上がって2月に上がって、また4月に上がってと、そんな状況です。しかし、それをお客さんに価格転嫁できず、「このままの状況じゃ持ちこたえられない」というのが皆さんの声ですね。
――経済活性化には消費税の減税とインボイス中止が必要と運動されていますね
消費税が5%に下がれば、全てのモノの値段が下がります。消費税の減税は、物価高騰、消費不況対策の決め手と言えます。現在、世界では91ヶ国で行われ、消費を喚起し景気の下支えを行っています。
ところが、自公政権は、がんとしてやろうとはしていません。
消費税減税は、その気になれば直ちに出来ます。仕入れ値や経費を下げ、諸経費の高騰をお客さんに転嫁できずに苦しむ中小業者の改善につながります。一定期間の限定であっても、直ちにやってもらいたいですね。
インボイスについては、消費税の仕組みの理解が必要です。現在の消費税では、売上収入が年間で1000万円を超えなければ、消費税の申告納付が免除(免税事業者)されています。インボイス制度というのは、事業所が税務署に登録して、個人事業者の場合新しく13桁の固有の番号をもらいます。その番号を記載した請求書など伝票類をインボイス(適格請求書)といいます。消費税の納税額を計算する時に13桁の番号が記載されていない従来の請求書では、消費税を経費として計算が出来なくなり、必要以上の消費税を払うことになるのです。
この番号をもらうためには、売上が1000万円を超えてなくても、消費税の申告と納税をすることになります。新たな税負担が困難で免税事業者のままであれば、インボイスが発行できないので、取引相手が消費税を経費として処理できないため、取引を断られることも考えられます。
財務省の試算では、インボイス制度を始めるだけで、新たな税収は、2480億円、新たに課税事業者になる事業所は、161万事業所と言われており、1軒あたりの年間負担増は15万円程度にもなります。
フリーランスの方で年収100万円、200万円の方にも、新たに消費税の負担がのしかかります。とんでもないことです。今、インボイスの実施(23年10月)は時期尚早の声が経済団体や税理士の団体に広がっています。インボイスは、せめて延期、凍結すべきです。
――労働組合は、最低賃金を今すぐ1500円にと要求していますが、どのように思われますか
中小業者からすると、人件費の事や厳しい経営状況から「1500円なんてとんでもない」という声は上がって当然だと思います。しかし、労働者の賃金が上がらなければ、ずっと続いてきた景気の低調は打開できません。全労連や京都総評も主張されている、「中小企業に対するしっかりした支援」と合わせて「最賃の1500円への引き上げ」をやっていくことが必要ではないでしょうか。
その財源として、大企業の内部留保を使うことが必要と考えます。中小小売業者も、大手スーパーの価格破壊競争の中で対等な取引ができる関係にはありません。中小業者で働く労働者の賃金をあげられないのも、大企業から収奪されているからです。政治の力で収奪している分を税金として徴収し、中小企業、業者への支援に充てるべきです。そうすれば、安心して1500円の最賃を払うことが出来ます。
――自治体への要望をお話しください
京都府や市町村が、中小業者の実態調査をやって現状を把握し、そのうえで政策を立てることが求められています。コロナ支援策が不充分なのは、やはりその実態が充分把握されてないところもあるのだろうと思います。
今、いろんな給付金や協力金の申請が、民間企業に外注され、Webで申請となっています。それでは、業者の実態や声を把握できないと思います。職員が申請に関わることが必要です。そこでつかんだ声を施策に反映させることが本来の自治体の在り方ではないでしょうか。
府職労連さんの商店街調査が大きな話題となりました。商店の方も、自分たちの現状、困っていることを行政に聞いてほしいと思っておられます。
今、京都府には、中小企業・中小業者の声を受け止める行政の制度が必要ではないでしょうか。例えば、中小企業振興条例です。47都道府県のうち、出来ていないのは京都府だけですよね。
中小業者は、お客さんに支えられ地域に密着して、まちづくりに貢献したいと頑張ってきました。それだけに、商売が苦しくても「迷惑はかけられない」と頑張っています。中小業者が元気にならないと、地域に活気が戻ってきません。
今、若者や女性の方で起業している人も増えてきています。行政の基本方針が国の政策の範囲内だけにとどまるのではなく、住民、中小業者に寄りそった行政をすすめていただきたいですね。
インボイス実施の延期・中止を
経済団体や税理士団体が要望
日本商工会議所
生産性向上に逆行。免税事業者(約500万者)に対する取引排除や不当な値下げ圧力等が生じる懸念。中小業者はコロナ対応に追われ、インボイス制度の準備に取り掛かれる状況にない。
日本税理士会連合会
事業者及び税務官公署の事務に過度な負担を生じさせる。新型コロナ感染拡大による危機的な経済情勢下にあっては、導入時期は延期すべき。
京都自治労連 第1988号(2022年7月5日発行)より