機関紙 - 【公立図書館】地域密着の図書館 仕事と役割…図書館は知識の出会いと発見の場…住民が気軽に立ち寄れるスペースにしたい
与謝野町では合併前の各自治体にあった3つの図書館機能を合併後も本館・分室として残し、住民サービスの維持・向上を図っています。
今回は、その与謝野町立図書館野田川分室で働く図書館司書のAさんに町立図書館での仕事について伺いました。
小さくても扱う本は毎日百冊以上
与謝野町立図書館野田川分室は、公民館に併設されている小さな図書館です。火曜閉館以外は10時から18時まで、土日も開館しています。「本の貸し出しと返却の実務が中心ですね」とAさん。一冊一冊バーコードを読み込み返却確認します。さらに本の外装や中身を確認し、破れなどを補修します。その間も本の返却や貸し出しで利用者が窓口に訪れます。「夏休みなので子ども連れや学生さんなど利用者が多い時期です」とAさんは手際よく本を整理していきます。
野田川分室の蔵書は3万冊以上。窓口での貸し出しのほか、4つの小学校に常時100冊から200冊ずつが貸し出されています。本に付いているバーコードを見ると近隣自治体の図書館や京都府立図書館の本も見かけます。Aさんは「町立図書館の蔵書だけでは足りないので、近隣自治体の図書館や府立図書館からも貸し借りしています。特に府立図書館の存在は大きい」と話します。
利用者が求める情報を正確に届ける
窓口では、本の貸し出し、返却だけでなく蔵書や本の検索など利用者からの問い合わせに丁寧に対応します。「利用者が問い合わせてくるキーワードだけでは、希望の本はなかなか見つかりませんので、対話しながら、本当に知りたいことが書いてある本を見つけ出します。このやりとりは本の知識と経験が必要です」とAさん。利用者が閲覧できるオンラインのデータベースがありますが、キーワードを入力しても希望の情報が見つからず、直接尋ねられることが多いといいます。「希望の本や情報がわかり、蔵書の中から持ってきて利用者に渡してあげられたときは、利用者も喜んでくれるし、私もうれしいです」「インターネットで情報はたくさん出回っていますが、本当に求めているものを見つけるのは難しいとこの仕事をしていて感じます」とAさん。
最新の書籍の情報収集も欠かせません。「図書館向けの新刊情報などはネットで配信されていますのでいつも見ています。地方紙や地域新聞などに紹介された書籍などもチェックして職員みんなで共有しています」と新聞の切り抜きを貼った情報ノートを見せていただきました。
歴史、文化の保存・継承も図書館の役割
Aさんは、他の自治体の公立図書館に勤めていた経験から「この分室は住民との距離が近いですね。本の貸し借りだけでなく、こんなことが知りたい、こんなことを勉強したいと来館されます。図書館は知識の出会いと発見の場所。気軽に立ち寄ってもらえる人が増えてほしい」と話します。町立図書館では「読書マラソン」と銘打ったイベントなども実施して利用者拡大に取り組んでいます。分室でも季節ごとや時々の話題に対応しておすすめ書籍のコーナーなどをディスプレイしています。「今は『SDGs』の特集コーナーを設けています。子どもや学生も利用してくれています」と紹介してくれました。幼児とその親を対象に定期的な児童書の読み聞かせ会も実施しています。
館内の図書を見て回ると、織物の本や地域の歴史書など、どの分類でも与謝野町周辺の歴史や産業に関係する書籍が目にとまり、児童書でも地域の昔ばなしの本が多く蔵書されています。Aさんは「地域の歴史、文化などの保存・継承も公立図書館の大事な役割だと思います」「ただスペースが限られているため、定期的に本や資料を処分しなければならない。その選別はつらいです」と、公立図書館の役割と働きがい、本へのおもいも話してくれました。
京都自治労連 第1989号(2022年8月5日発行)より