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機関紙 - あの人に会いたい26 佛教大学社会福祉学部 准教授 長友 薫輝さん 医療・介護の公的コントロールこそ必要

あの人に会いたい26 佛教大学社会福祉学部 准教授 長友 薫輝さん 医療・介護の公的コントロールこそ必要

カテゴリ : 
組合活動
 2022/12/7 9:10

ながとも・まさてる=
◯専攻は社会保障学、地域医療論、地域福祉論
◯三重県国民健康保険運営協議会委員、三重県ひきこもり支援推進委員会委員長、三重県障害者自立支援協議会会長、三重県障がい者差別解消支援協議会会長、松阪市地域包括ケア推進会議会長などを務めている。
◯著書には『感染症に備える医療・公衆衛生』2021年、『コロナ禍で見えた保健、医療、介護の今後』2022年など。


マイナ保険証は医療の市場化が目的
患者にも医療機関にもメリットない

10月13日、「24年秋に現行の健康保険証を原則廃止し、マイナンバーカードと一体化した保険証に切り替えることを目指す」と政府が発表。来年4月から医療機関・薬局に、マイナ保険証の受付システム=オンライン資格確認の導入が「原則として義務付けられる」ことになりました。医療機関や、住民にとって大きな問題です。地域医療の研究をされている、佛教大学の長友薫輝准教授にお話を伺いました。

――マイナンバーカードと健康保険証を一体化するとどのような問題があるのでしょうか

この問題を見るときに、二つの点が大切です。

一つは、医療機関の負担が軽減するのかどうか。もう一つが、住民、患者にメリットはあるのか。この二点に絞られると思います。

マイナンバーカードのICチップ内には、本人確認機能がある電子証明書が備わっています。この電子証明書の発行番号はマイナンバーと異なり、利用範囲が制限されておらず、マイナ保険証受付システムに利用されています。また、ICチップ内には、12桁のマイナンバーのみならず、本人の顔画像データも内蔵されています。(オンライン資格確認とは、これらの情報で資格情報を確認すること)

マイナ保険証を利用する患者は、病院で受診する度に、保険暗証番号を入力するか、もしくは、毎回カメラに向かって顔認証をして、本人であることの確認等が必要になります。医療機関の窓口では、患者自身が受診する度にこれらの工程を行うことになるため、混乱が生じることは必至です。

現行の保険証では、ひと月に一回保険証を見せるだけですから、明らかに職員も患者も負担は増えます。また、マイナ保険証に医療機関の職員は触れることはできません。高齢であっても、認証確認の作業は自分で行わなければなりません。

なお、オンライン資格確認自体は現行の保険証でも可能です。窓口に保険証を提示し、受付の職員が目視で本人確認したのち、資格確認端末に被保険者「個人番号」を入力すればよいわけです。

来年4月からの導入を前に、医師の年齢や早急な義務化に対応できず、廃業する方針を示す医療機関が開業医を中心に出てきています。デジタル化を進めて、医療機関が減るという地域住民にとってのデメリットを見ておく必要があります。

ちなみに、マイナンバーカードのままでは、マイナ保険証として使用できません。事前に自らマイナポータルで登録を行わなければなりません。これらの周知も徹底されておらず、医療現場や自治体窓口等での混乱が生じることになります。

医療機関等の負担は増え、患者にとっても手間が増え、顔写真付きのマイナ保険証を持ち歩くリスクが増えます。一体、誰のためのデジタル化なのでしょうか。

――そのような問題があるのにどうしてマイナ保険証を導入するのですか

結論から言うと、結局デジタル化を進めて、医療や介護の分野を市場化・産業化するのが一番のねらいではないでしょうか。

例えば、顔認証データの利用等を規制する法律は現在のところ未整備なのに顔認証システムを導入しようとしています。顔認証の技術を持っている企業の為に急いで導入するかのように見えます。

マイナ保険証によって集積されるデータは膨大です。このデータを企業が利活用できるようにすることで市場化・産業化を企図しているわけです。法規制がない状態があっても、デジタル化を推進し、国と自治体が持つ膨大な個人情報とあわせて利活用できる仕組みづくりを進めたいというねらいがあるわけです。

――6年に一度、医療、介護、障害の報酬が見直される年が2024年に回ってきますが、マイナ保険証との関連で何か考えられることがありますか

このカードとの関連でいうと、いかに医療費の抑制を行うかだと思います。2024年度からは、第四期の医療費適正化計画が始まります。2018年から始まった第三期の医療費適正化計画以上に、医療費抑制を図るものと思われます。

医療費抑制政策の推進役として都道府県に今以上に役割を果たさせ、民間医療機関に対して強い権限を持たせる。その際に利用する手段の一つが、デジタル化です。データによって人々の受療行動を抑制することも可能となります。人々の行動をデータで把握し、そのデータを手段として医療費抑制につなげていくと考えられます。

――自治体には、何が求められると思われますか

自治体には、医療や介護を市場化・産業化すると総医療費が増え、やがて公的医療費が増えることになるという事実を共有することです。すでに学問的には決着がついています。科学的根拠をもとに自治体の政策を考えてほしいということ。もう一つが、医療や介護は、公的にコントロールしていくことが大切な分野だということです。

医療をデジタル化し、社会保障を市場化、産業化すると、ごく一部の企業は儲かると思いますが、そのことによって医療費はどんどん膨らみます。企業は、全ての市民を対象にしません。儲かるところだけです。結果的に国や自治体が負担するお金は増えます。アメリカの医療費が典型です。だから、自治体の果たす役割は大きいといえます。

しかし、政府は地方統制を強化し、自治体の裁量が奪われる一方です。矢継ぎ早な国の政策変更を理解し、ついていくだけでも自治体の皆さんは大変だと思います。そういう中でも、例えば自治体独自の施策とか、あるいは、制度の枠内でも出来ることがあると思いますので、自治体職員としての矜持をもち、住民のために光るものを1つでも作っていただけたらありがたいと思います。住民の皆さんからも期待されています。

マイナ保険証で心配
  • 医療機関を標的としたサイバー攻撃が後を絶たない。ウイルス感染により患者の医療情報の漏洩は、医療機関と院長の自己責任。政府は責任を負わない。(大阪急性期・総合医療センターが、10月31日からサイバー攻撃を受け、通常診療がストップの事態が発生)
  • 大規模な災害やシステム障害トラブルで大混乱に。
  • マイナ保険証を紛失デジタル庁コールセンタへ連絡警察署に届出市役所に再発行申請(手数料1000円)再発行に1〜2ヶ月かかる。その間、一旦全額負担。
  • カードのICチップは、5年ごとに役所に出向いて更新。マイナンバーカードは10年ごと更新。

京都自治労連 第1993号(2022年12月5日発行)より

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