機関紙 - あの人に会いたい27 長岡京市 セブン商店会元会長 林 定信さん…中小企業振興基本条例に大きな期待
はやし・さだのぶ=
・1952年 京都市生まれ。長岡京市在住。
・1976年 京都産業大学卒業
・1976年 京都銀行入行
・1986年 京都銀行退職
・1987年 株式会社テンマ設立(長岡京市)
代表取締役(現職)
不動産賃貸業・美容業(MINTHOUSE)
・2016年4月〜22年4月 セブン商店会会長
外部の知恵や力を積極的に取り込み「解散」危機からみんなが主役の商店会に
長岡京市に4つある商店会の1つ、セブン商店会は、「解散」の危機から6年で加盟店が29から79店に増え、元気な商店会として注目を集めています。なぜ商店会が生まれ変わったのか、その秘密を知りたくて元商店会会長の林定信さんを訪ねました。また、長岡京市で昨年10月に制定された中小企業振興基本条例についても語っていただきました。
――「未来予想図委員会」「セブンのハロウィン」など、特徴的な商店会運営をされていますね。元気な商店会の秘訣を教えてください
今商店街は、大型店の進出や消費税増税、コロナ禍と物価高騰で何処も厳しい状況です。
セブン商店会でも廃業・閉店が相次ぎ、商店をやめた住宅やマンションが増え住宅街化がすすみ、2015年の商店会加盟は29店に減少、「解散」の話も出るほどでした。
その一方、お洒落なフレンチやイタリアンレストランの創業など可能性も感じました。
私は、この場所で35年間不動産業や美容業をやってきましたが、2015年に初めて商店会への加入をすすめられ会員となり、2016年に前会長さんから「このままではアカン、新しい発想が必要」と言われ会長に就任しました。
まず初めに行ったのは、「どんな商店会が必要とされているのか」話を聞くことです。公開で誰でも参加できるディスカッションの場「未来予想図委員会」を毎月開催しました。商店や地域住民、行政、議員など、予想をはるかに超える40人の方に参加いただきました。
参加者から意見が活発に出され、「人と人のふれ合いが出来る商店会が求められている」と意見が一致しました。
そして、住民の交流企画をいくつか計画、一番うまくいったのが、未来予想図委員会発案の"セブンのハロウィン"です。準備期間が1ヶ月しかなく、役員がチラシを持って、地域の保育園に「お散歩の途中に寄ってください」と声をかけて回りました。当日は予想を大きく超える500人の子どもたちが参加。商店会始まって以来の出来事で、仮装したお店の人からのお菓子のプレゼントに元気な声と笑顔が溢れました。驚きはそれだけではありません。後日、お子さんと一緒に保護者の方が、「子どもがとっても喜んでいました」と、買い物に何人も来られたのです。うれしかったですね。
今では、"セブンのハロウィン"は地域の楽しみの行事となり毎年開催、「セブン商店会音楽隊」も結成され、運営するスタッフも80人になりました。
また、商店街の中にみんなが集まれる拠点を2ヶ所作りました。
一つは、官民連携(運営委員会方式)で公有地を暫定活用し「長岡京セブンストリートラボ」と名付けて、野外シネマ、フリーマーケットなどが出来る場。もう一つが、休業店舗を利用した商店会活性化・創業者支援の拠点「Space7」(民営方式)です。市民活動発表の場やママのしゃべり場となっています。情報発信にも力を入れ「広報部」を設けSNSやYouTube等も活用しています。
気が付けば、商店会加盟店は2015年に29店だったものが現在では79店、50店も増えました。
――皆さんが、大切にされているものはどのようなことでしょうか
私たちが大切にしていることは絆です。商店会内部の絆、地域との絆、企業や団体との絆、他の商店会との絆、行政との絆、それを紡ぐこと。そのために、外部の知恵や力を積極的に取り込む開かれた商店会を目指しています。
新規創業される方を見ていると「儲け」よりも自分の「生き方の表現」としてお店を始められる方が増えています。地域の役に立ちたい。みんなに喜んでもらいたい。そうした思いを表現できる場所が、セブン商店会なのです。だから、みんなが積極的で主役の商店会。役員の半数以上が若い女性で構成され、子育て世代の会員がたくさんいるのも大きな魅力です。「子育てにやさしい商店会」と住民からも評価を頂き、子育てを通じたヨコのつながりも広がっています。「商店会の力はすごい」と思います。
昨年、私は70歳になり役員を退きました。まったく根回しをせずに、新会長を募ったのですが、何とプロのフルート奏者(フルート教室を経営)で子育て中のママが「私やります」と手を挙げてくれました。うれしかったですね。
――長岡京市で中小企業振興基本条例が昨年10月にできました
私は、この条例を自分ごとと捉え大変期待しています。条例の特徴の一つは、「商店街の役割」がしっかり位置付けられていることです。他の自治体の多くは、経済団体の中に商店街が含まれています。それだけに、私たちも積極的な役割を果たそうと思っています。また、条例の推進委員会が設置され、条例の準備段階からお世話になった京都橘大学教授の岡田知弘先生が推進委員会の会長に就任、具体化へ動きが始まっています。
――自治体と自治体職員への要望をお聞かせください
京都府が官民一体で商店街を応援するため発足した組織「商店街創生センター」があります。職員の皆さんには、私たちの自主性を尊重していただきながら、親身になって相談に乗ってもらい一緒に伴走していただき、活性化の大きな力となりました。大変感謝しています。
自治体職員のみなさんには、市内を元気に走り回って、地域の現場や暮らしを見てほしいですね。自治体の職員が元気になれば、まちも元気になるのではないでしょうか。
住民が主人公のまちづくりへ力合わせましょう。
京都自治労連 第1995号(2023年2月5日発行)より