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機関紙 - あの人に会いたい31 NPO法人泉京(せんと)・垂井(たるい) 副代表理事 同志社大学非常勤講師 神田 浩史さん…地域農業を守る基本はコミュニティーの保持

あの人に会いたい31 NPO法人泉京(せんと)・垂井(たるい) 副代表理事 同志社大学非常勤講師 神田 浩史さん…地域農業を守る基本はコミュニティーの保持

カテゴリ : 
組合活動
 2023/7/5 14:10

かんだ・ひろし=京都市生まれ。

大学を卒業後、開発コンサルタント企業に勤務し、タンザニア、ナイジェリア、バングラデシュなどでODAの農業開発事業に従事。退職後、主に東南アジア各地の地域づくりの現場を調査研究し、日本政府の国際協力・ODA政策策定に関わる。現在は、全国各地で地域づくりなどの、講演を行うかたわら、複数のNPOの役員を務めている。同志社大学、京都精華大学などで非常勤講師


飢えから市民・住民を守るのが政治危機を煽り大軍拡は"愚の骨頂"

危機を煽り大軍拡に走る政治に危うさを覚えます。日本の食料自給率は38%(カロリーベース)、物流が滞ればたちまち国民は飢餓に直面します。今日の日本の農業を世界と農村地域から捉え、政府と自治体に何が求められているかを、同志社大学非常勤講師の神田浩史さんに伺いました。

コロナ感染拡大とロシアのウクライナ侵略は、世界の食料問題に大きな影響がありました。何を教訓とすべきでしょうか

1つは、物流に支障が起きたら、何が起こるかを私たちは目の当たりにしました。穀物の輸送は、ほとんどが船を利用します。それ自体が途絶、あるいは減便すればたちどころに食料需給に大きな影響が出てしまいます。しかも戦争の当事国2ヶ国が大きな穀物生産国。世界の大きな変動で物流に支障をきたした時に、食料供給が脆弱な国ほど大きな影響を受けています。

もう1つは、生産資材です。ロシア産の肥料・エネルギーに代表される様々な物が価格上昇して生産条件が大きく変化してしまう経験をしました。

しかし日本では、まだ食料を買える状態ですので、物価上昇に悲鳴を上げながらも、深刻な飢餓の蔓延には至っていません。このことが、日本の中であまり議論になっていないことが逆に心配です。

この戦争がさらに拡大し、あるいは日本が全く別の戦争に巻き込まれた時の怖さをすごく実感します。

日本の食料自給率は、他の先進国と比較すると異常な程低い状態ですが、なぜ、このような状態なのでしょうか

アメリカの農業政策は、農業だけで見るのではなく食料安全保障が政策の根幹に貫かれています。食料輸出や備蓄に対する農家への補助金を政策として行い、加えて世界戦略として食料輸出をしているのです。

EU諸国では、農業と環境保全や国土保全の観点が包括的にしっかり政策の中に位置づけられ、農家の所得補償にたいする合意形成がしやすく農業・農家が大切にされています。

一方日本は、自国の食料の安定供給、食料安全保障がおろそかなのに、自給率を上げるのではなく、高価な果物などの輸出で利益を上げようとしています。まるで木に竹を接ぐ思考で、ボキッと折れるもろいものになっていると私は感じます。それを変えるためには、政治の根幹に農業・食料政策を位置づけ、農水省だけの政策でなく他省庁との連携の強化が必要です。

「安保3文書」の閣議決定、大軍拡と戦争する国づくりが進んでいます。食料確保や農業からどう見ておられますか

今の日本は、戦争当事国になったら完全に食料はアウト、市民・住民は飢餓に直面する可能性が非常に高くなります。政府は、日本が戦争をしないだけではなく「周辺で戦争を起こさせないために何ができるのか」「市民・住民を飢えさせない」という政治の基本の基本を行っているとは思えません。敵基地攻撃能力の保有など、すでに戦争に踏み込んでしまっているかもしれません。

私は、中国に対する対応は、東南アジアの国々、ASEANに学ぶべきだと思います。「戦争ではなく、話し合いで問題を解決する」ことを決めて、もう30年以上この地域では国対国の戦争がありません。ASEANの国々は、アメリカと関係をつくりながら、中国と敵対関係にならないよう、話し合いの場に参加を呼び掛けるなど工夫しています。日本も見習うべきです。

中国や北朝鮮への敵対心を煽り、拳を振り上げて「何兆円の軍備増強だ」などと言うのは愚の骨頂だとみています。

自治体の果たす役割についてお話しください

今、農山村の多くで後継者不足から耕作農地が放棄され、大きな課題となっています。しかしその一方で、後継者が脈々とあるという集落もあるのです。私は、岐阜県でそういう集落に調査に入っているのですが、共通しているのが「地域コミュニティーの自己肯定感」が高いということです。

京都でも、様々な取り組みがされていると思います。お茶に代表される特産品を生かした町づくり、オーガニックや体験農業、地産地消の学校給食、修学旅行の受け入れなど様々な経験があるのではないでしょうか、その体験を府内に広げ、それぞれの地域の特徴を生かした政策を作り出すことです。

もう一つは、農地と水をどう維持していくのかが大切です。農業用水にしても農地にしても地域コミュニティーの保持が基本です。

特に農地は個人所有なので、農業委員会の機能低下や規制緩和で農地が流動化しやすいと心配しています。政府の農業政策が、食料自給率の向上ではなく「輸出で5兆円」など特産品の高級果物などに特化した政策に力を入れています。

そうすると、外部から資本が入って来て農地を取得し、高級果物だけがつくられる。他から安い賃金の労働者が入ってくる。地元も、安い賃金で働く。こんなことになるのではないかと心配です。

気が付けば、地域の農業が、「食」というものから切り離されたものになってしまう。そこを未然に防ぐのが、自治体の大きな役割です。国の政策が危うい方向に行くことに対して、歯止めをかけていく役割が、これまで以上に自治体にあるのではないでしょうか。地域農業を守る基本は、地域コミュニティーの保持であり、地域住民の命を守る政策を展開することが重要です。


京都自治労連 第2000号(2023年7月5日発行)より

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