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機関紙 - あの人に会いたい36 全国福祉保育労働組合京都地方本部執行委員長 大西 謙さん…報酬引き下げで、訪問介護は存亡の危機

あの人に会いたい36 全国福祉保育労働組合京都地方本部執行委員長 大西 謙さん…報酬引き下げで、訪問介護は存亡の危機

カテゴリ : 
組合活動
 2024/4/5 17:00

おおにし・けん=
1977年生まれ
2000年 京都市内の社会福祉法人に入職
2006年から 地域包括支援センターに勤務
2001年 福祉保育労 加入
2020年9月から 福祉保育労 京都地本 執行委員長


介護守るため処遇改善と大幅増員を
自治体は介護現場に積極的な関りを

介護保険が始まって24年。制度がスタートした時の高揚感は介護現場にはなく、介護保険事業者と介護サービス利用者の双方が深刻な状態になっていると言われています。さらに、この4月から訪問介護報酬が2%減額され、「小規模事業者の倒産・廃業に拍車がかかる」との声が聞こえてきます。今、介護現場で何が起こっているのか、福祉保育労京都地方本部の大西謙委員長にお話を伺いました。

■介護現場、事業者と利用者の現状についてお話しください

介護保険制度は、2000年4月から、「家庭で担っていた介護を社会全体で、介護保険制度で支える」として始まりました。以前自治体が担っていた部分にも民間が参入し、社会福祉法人以外の株式会社やNPO等の運営主体も増えて、施設の数や事業所の数自体は全体的に増えてはきています。

介護保険が始まる前と、今と比べて単純には比較できませんが、働きながら、子育てしながら親の介護ができる仕組みになっているかというと、そこは十分ではないと思います。介護保険制度は度々改悪され、制度の利用料金が上がり、お金がないと利用できなくなっています。介護保険が始まった当初は、ヘルパーさんの家事支援は1回で2時間ぐらいだったのが、途中で90分になり、60分になり、45分になり、ヘルパーさんに家のことや洗濯や買い物など色んなことがしてもらえなくなり、会話もままならない状態です。

また、デイサービスも料金が高くなり、利用回数を減らさざるを得なくなりました。要支援の保険外しなど、介護保険に入っていても利用できない事態が起こっています。「国家による保険詐欺」と批判の声も聞こえてくるほどです。

さらに、特別養護老人ホーム等も料金がドンドン高くなり、お金がないと利用できません。特養に入れないからと有料老人ホームやサービス付き高齢者住宅は、さらに高いお金が必要で誰でも利用できるものではありません。

一方、介護職場では離職者が増大し人手不足が深刻になっています。ついに2022年は、介護の仕事に就く人より離職者が多くなりました。このままでは、団塊の世代が75歳以上になる25年度には、32万人の介護の担い手不足が見込まれると言われています。困難な仕事であるにもかかわらず、賃金水準が他産業の平均と比べて月額7万円も低く、「やりがいある仕事だが展望が持てない、人生設計ができない」と退職者が増えています。

私が大学を卒業したのが2000年、介護保険制度が始まったばかりでした。当時は、介護福祉士や、ヘルパーを養成する学部や専門学校などが次々開設されていました。

しかし今は、介護が魅力ある職種ではなくなり、学生が集まらず学部や専門学校の縮小・廃止が相次いでいます。

ヘルパーの高齢化も深刻です。厚生労働省は、2024年度から介護報酬を1.59%プラス改定し、24年度2.5%、25年度2.0%のベースアップを目指すとしていますが、現状を打開するには一桁足りません。介護労働が魅力ある仕事になるよう、大幅賃上げと大幅増員は喫緊の課題です。

■4月から訪問介護の報酬が引き下げられ、「在宅介護の終わりの始まり」とも言われていますが、何が問題なのですか

現在でも、訪問介護業者の経営は苦しく、倒産・休業が23年は、427社にものぼりました。ところが岸田政権は、訪問介護報酬の2%引き下げを強行しました。引き下げ理由は、「利益率が高いから」だとしていますが、利益率が高いのは、一部の大手だけが異常な高利益を上げており、多くの小規模事業者、特に中山間地などの約4割の事業者(全国で13000事業者)が赤字です。大手は、効率的でない地域では事業を行いません。訪問介護報酬の引き下げは、現在でも赤字の小規模事業者を直撃し、頑張っているヘルパーさんの働きがいを奪い、事業からの撤退につながります。地域から事業所が無くなれば、訪問介護が必要な方はどうなるのでしょうか、地域では「介護難民」や介護離職者も増え、人口減少に拍車がかかるのではないかと心配です。

■介護事業者も利用者も納得できる制度にするために、何が必要とお考えですか

介護保険の財源の負担割合は、国が4分の1、都道府県と市町村がそれぞれ8分の1を負担していますが、都道府県や市町村にはこれ以上財政負担をおこなう裏付けがありません。私たちの運動の基本は、国庫負担金の割合負担を増やすことです。国民が人間らしい暮らしができるよう、国が、医療・福祉や介護に十分な予算を回し責任を果たすことを求める国民的な取り組みが必要ではないでしょうか。

■自治体や自治体職員に何が求められていますか

自治体では、「介護保険事業計画」を3年毎に作成し、3年間の事業計画を立てています。介護職員の確保問題になると、「それぞれの事業所で確保してください」となり、実効ある対策にはなっていません。現状では、自治体が描いている「介護保険事業計画」は、絵に描いた餅です。自治体には、介護現場の大きな課題である人材確保に、もっと積極的にかかわっていただきたいですね。

自治体や自治体職員と介護事業者、介護利用者との距離が遠くなっているのではないでしょうか。京都市では、かつて各行政区に保健所があった時には、保健所や地域医師会が音頭を取って『保健医療福祉の集い』や『認知症相談会』などが開催されました。それを通じて人間関係や問題意識の共有もできました。地域に保健所がなくなり、これらのつながりもなくなりました。コロナ禍では、せめて行政区ごとに保健所があればと何度も思いました。

自治体には、民間まかせではなく「より良い介護の提供のために何が必要か」を専門的に分析して改善していく部署が必要と思います。


京都自治労連 第2009号(2024年4月5日発行)より

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