機関紙 - 業務中の転倒・怪我が認められないのはなぜ?…公務災害の認定を求める署名にご協力ください
昨年3月、京都市で生活保護ケースワーカーとして働くAさん(当時63歳)は、被保護世帯を訪問途上、工事中の道路の凹凸につまずき、転倒。顔を7針縫う怪我を負いました。公務災害の申請を行いましたが「公務外」とされました。納得できず組合に相談。地方公務員災害補償基金(以下基金)京都市支部審査会に審査請求しましたが、棄却され、今、基金本部に再審査を請求しています。
公務災害が増加 ― 何もない所での転倒も「労災」
高年齢者の就業人口が増え、労災も増えてきており、厚労省は、第14次労働災害防止計画(2023年〜2028年度)で、高年齢者の労働災害防止に注力。転倒災害対策に取り組む事業場の割合を60%以上との目標を設定しています。何もないところでの転倒事故でも、仕事中なら、業務起因性が認められています。つまづきによる転倒事故の27%は「何もないところ」です。労災を減らすために、コードなどのつまずきの原因を減らす、不注意事故を減らす、筋力アップなどの対策強化を呼びかけています。
安心して働くことができない
基金京都市支部は、基金本部が全国の担当者会議で「平坦な場所でのつまづきは…(中略)…何らかの環境素因もない場合、『勤務環境に内在する危険が現実化したもの』とは認められない」としている事をAさんの事案を「公務外」とした決定の根拠にしています。
負傷の場合の公務災害認定基準は「労災」と同じで、「故意又は本人の素因によるもの」等でなければ原則「公務災害」「労災」です。基金京都府支部の資料では「被災職員自身の不注意による負傷が全体の6割」とされており、不注意事故でも労災になります。Aさんは、業務に必要なカバンを持ち、仕事のために歩いていたところつまずき転倒したのであって、これが公務災害ではないとされれば、誰もが安心して働くことができなくなります。
道路の凹凸―環境素因があったことは明白
Aさんの事案を「公務外」とした理由で、本部審査会の裁決例(平成21年「出張先の駐車場で転倒して負傷」)を引用しています。この裁決例では、「路面状態について、特に転倒の原因になり得るような事情がなかったことから…(中略)公務に内在する危険が現実化したものとは認められない」ため「公務外」としています。
災害発生現場は下水道の工事中で、仮舗装の継ぎ目に高低差約1cmの凹凸が生じていました。Aさんは道路の凹凸につまずいたのですから、環境素因があったことは明白です。基金京都市支部の「災害発生の原因となるような危険性が認められない」との判断は納得できません。
「公務外」とする判断が、基金本部審査会でも維持されるならば、全国の同種の事例に悪影響を与えます。「Aさんの勤務中の負傷を公務災害と認定してください」の署名が、全国に広がっています。署名へのご協力をお願いします。
すべての人が安心して働けるように
今まで、同僚のこうした「公務災害」の事案を見てきました。自らの事故は初めてですが、これが「公務災害」と認められなければ、外勤業務を誰もがしたがらなくなるのではないでしょうか。民間の労働組合に署名のお願いに回り、あらためて民間の「労災」では認められている事案だと確信しました。
必ず、公務災害と認められるようにみなさまのご支援をお願いします。
署名で再審査請求の後押しを
(京都自治労連第211回中央委員会の発言から抜粋)
公務災害の認定に当たっては災害の発生状況や被災者の素因等(持病など)を考慮して判断されます。個々のケースによって様々な判断があることは理解しますが、勤務中に転倒してけがをしても公務上の災害として保障されないのは、働く側からすると納得できません。
昨年の8月に京都市職労内で署名を集めた際に、Aさんと同じ世代だけでなく、若い世代の職員からも「この災害が公務災害として認められないのであれば外勤業務を拒否したい」という声が寄せられました。世代に関係なく誰もが自分にも起こり得る災害だと思っている証ではないでしょうか。
再審査請求によって公務上の災害としての認定を勝ち取るため、たくさんの人がこの問題に注目していること、認定されていないのはおかしいと思っていることを示す必要があります。積極的な署名への取り組みをお願いしいたします。
京都市職労書記次長
京都自治労連 第2011号(2024年6月5日発行)より