機関紙 - あの人に会いたい37 京都平和委員会理事長 片岡 明さん…京都でもすすむ軍拡・基地強靭化に警鐘を鳴らす
かたおか・あきら=
1983年から京都平和委員会で活動(現理事長)。日本平和委員会理事、日本平和学会会員、京都原水協代表理事。
「宣伝と組織」(機関紙協会京滋地方本部発行)の「させない 戦争する国づくり」に寄稿など。
身近にせまる「戦争する国」づくり
自治体は住民を守る最後の砦
2022年12月、岸田政権は敵基地攻撃能力の保有や5年間で43兆円の軍事費など大軍拡計画を盛り込んだ「安保3文書」を閣議決定し、防衛力の抜本的強化に取り組むとしました。憲法に掲げられる恒久平和に基づく戦後の日本のあり方を根本から変える内容です。いま、この安保3文書をふまえた実践面での「戦争国家づくり」がすすむなか、京都府内で具体的にどのような動きが出ているのか、京都平和委員会理事長の片岡明さんにお話を伺いました。
■岸田政権による「戦争する国」づくりがすすむなか、いま京都府内ではどのような動きが起きているのでしょうか。
安保3文書の閣議決定以降、様々な動きや課題が出てきています。自衛隊基地の強靭化計画の一環として、精華町の陸上自衛隊祝園分屯地と舞鶴市の海上自衛隊での弾薬庫増設計画や機能強化をはじめ、土地利用規制法(重要土地等調査法)によって京都の自衛隊・米軍基地周辺が区域指定されるなど住民の安全安心を置き去りにして、京都府内で政府の「戦争する国」づくりを具体化する動きが加速しています。
政府は台湾有事などを理由に軍拡が必要との国民世論をつくり、戦争協力を自治体や国民に背負わせる、この流れがあることをしっかり見る必要があります。
舞鶴の海上自衛隊にはイージス艦2隻が配備され、敵基地攻撃能力となる長射程ミサイル・トマホークを保管する弾薬庫増設とミサイル整備場がつくられる計画です。祝園の弾薬庫は本州の弾薬補給拠点に位置づけられ、陸上自衛隊の弾薬だけでなく海上自衛隊の弾薬も保管する共同使用の方針が決まり、イージス艦に搭載するトマホークの保管も示唆されています。
実際に舞鶴や祝園にトマホークが持ち込まれることになれば、すでに弾道ミサイル迎撃システムを持つイージス艦を保有しているもと、敵基地攻撃能力をもって出撃することになり、名実ともにアメリカと一緒に戦争を仕掛ける側になります。さらに、京丹後市経ヶ岬の米軍Xバンドレーダー基地は「キルチェーン」と呼ばれる敵基地攻撃作戦を始める日米の要所です。
出撃拠点としての基地要塞化、それを守るために土地利用規制法で区域を指定して監視をする、これらが一体的にすすめられているのです。
■住民生活や地域へはどのような影響が考えられるでしょうか。
土地利用規制法にかかわっては指定区域周辺が調査対象になりました。基地周辺の住民や物事、行動が重点的に監視され、日ごろの調査情報を蓄積するのが狙いです。報道では指定区域に住んでいるだけでは処罰の対象にはならないとされる一方で、「阻害行為にあたれば処罰の対象になる」とされ、ではその阻害行為とは何かということについては明らかにされていません。自治体に問い合わせても自治体も分からないため、答えは返ってきません。
この間、府内各地の学習会でお話する機会がありますが、「知らない間に戦争の足音が身近なところまで来ていた」との感想が寄せられます。それよりも多いのが、どうなるのか分からない、調査といっても何を調べられるのか分からない、という不安です。
また、祝園弾薬庫増設とトマホーク保管の可能性があることに不安や怒りが広がっています。
■平和や核兵器廃絶への思い、また自治体職員や自治体労働組合へのメッセージがあれば教えてください。
4月の日米共同声明でも触れられましたが、日本はアメリカの「核の傘」を含む拡大抑止を強化する役割を果たすとして、すでに日常的に核爆撃機の飛来にあわせて訓練を行い、事実上「核使用の威嚇」に加担しています。これが憲法9条をもつ国、唯一の戦争被爆国の姿勢と言えるのでしょうか。このままアメリカと一緒に戦争する国になっていくのか、大きな岐路にあると思います。核による威嚇を許さない世論づくりが必要です。「抑止力」という考え方ではなく、核兵器禁止条約に日本が参加し、核を持たない・使わない等、核廃絶の先頭に立って世界に発信していくことが求められています。
予科練だった父から「戦争はダメだ」と小さいころから言われてきました。京都の大学に勤めることになり、そのなかで平和委員会と出会って活動を続けていますが、これまで取り組んできたことは何一つ間違っていないという信念と、自分の生き方として平和運動は続けていかないといけないという強い思いがあります。
自治体労働者の皆さんには住民の声を聞いて行政に生かし、住民を守る最後の砦としての自治体の姿勢を貫いてほしいと思います。平和が脅かされている今こそ、平和を求める国際世論と世界の人々、そして皆さんと一緒に力をあわせて行動して頑張りたいと思います。
京都自治労連 第2012号(2024年7月5日発行)より