機関紙 - 【24人勧】「約30年ぶりの高水準ベースアップ」というが…生活改善には不十分な勧告
人事院は8月8日、官民格差1万1183円(2.76%)を解消するため、すべての職員の月例給と一時金を引き上げる勧告を行いました。「給与制度のアップデート」にかかわっては地域手当や扶養手当の見直しを勧告しました。その概要をお知らせします。
3年連続で月例給・一時金を引き上げる勧告が行われたことは、「すべての労働者の賃上げで景気回復を」と官民一体で取り組んだ24春闘結果を反映したといえます。
しかし、中高年層ではわずか1%程度の引き上げにとどまり、物価高騰にも及ばない低水準です。また、大卒初任給は約12%の引き上げですが、やっと民間初任給に追いついた程度で十分とはいえません。
一時金は、期末手当・勤勉手当に均等配分するとされ、能力・成績主義を強める姿勢に変わりはありません。再任用職員の支給月数は常勤職員のほぼ半分の水準が維持され、不当に低く抑えられています。
地域手当は、都道府県単位に大くくり化されますが、級地区分による20%の地域間格差は残されたままです。京都府内はこの大くくり化で多くの自治体が非支給地から8%支給地になる一方、京都市域が10%から8%になり、給与水準を低下させない取り組みが必要です。
扶養手当は、配偶者に係る手当を廃止し、その原資を用いて、子に係る手当を引き上げるとしています。民間では未だ多くの企業が配偶者に家族手当を支給しているにもかかわらず、政策的に配偶者に係る手当を廃止しようとするものです。
また、係長級〜本府省課長補佐級の俸給月額の最低水準を引き上げる、勤勉手当の成績率上限を引き上げ平均支給月数の3倍に設定するなど、一部の者のみを優遇しようとしています。
これら、地域の分断、世代間の分断、成績主義による職場の分断を許さず、生計費原則に基づく大幅賃上げ、会計年度任用職員の処遇の抜本的改善と雇用の安定、実効性ある時間外労働上限規制と長時間労働解消、人員増などを求めて奮闘しましょう。
取り組みの中で組合員・職員との対話を広げ、自らの要求でたたかうとともに、組織の拡大強化につなげましょう。
2024人事院勧告のポイント
■月例給(2024年4月遡及)
採用市場での競争力向上のため、初任給を大幅に引き上げ
俸給表改定率(行(一))1級 11.1%、2級 7.6%、3級3.1%、4級1.3%、5〜7級1.2%、8〜10級1.1%
■一時金(ボーナス)(2024年12月一時金から適用)
■給与制度のアップデート(2025年4月実施)
(1)俸給
- 初任給・若年層の俸給月額を大幅引き上げ
→人材確保の困難性を踏まえ、24年4月に遡及して先行実施 - 3級から7級で初号近辺の号俸をカット
→若手・中堅優秀者、民間人材採用時の給与改善 - 8級以上で職務の級間の水準の重なりを解消
→昇格により給与が大きく上昇
(2)地域手当
- 支給単位は都道府県単位を基本に広域化
- 現行7区分を20%から4%刻みの5区分に
- 京都府は全域8%(4級地)
※国の施設はないが、現行は長岡京市16%、八幡市・精華町6%、城陽市・大山崎町3%と総務省が指定
(3)その他諸手当
- 扶養手当の見直し
配偶者に係る手当を廃止し、子に係る手当を13,000円に引き上げ(2年間の経過措置) - 通勤手当の支給限度額を15万円に大きく引き上げ
新幹線・特急料金、高速道路利用料金も支給限度額内で全額支給
- 再任用職員の手当拡大
住居手当や異動の円滑化に資する手当を新たに支給
(4)一時金(勤勉手当)
勤勉手当の成績率の上限をこれまでの「標準者の約2倍」から「標準者の約3倍」に引き上げ
■国家公務員の育児休業法の改正
- 1年に月10日相当、1日の上限時間数なく取得できるパターンを選択可能に
- 非常勤職員の育児時間について、対象となる子の範囲を小学校就学前の子に拡大
京都自治労連 第2014号(2024年9月5日発行)より