機関紙 - 第8回タッちゃんが訪ねるふるさと再生 〜そばは奥が深い 人が集い交流が生まれる〜
京都府と福井の県境、南丹市美山町鶴ヶ岡、日本の原風景が広がる美しい村。一方で高齢化がすすむ過疎の村でもある。鶴ヶ岡に『京都美山ごんべの会』が結成され、村の住民と都市との交流が、そばを通じて行われている。今回のタッちゃんが訪ねるでは、『ごんべの会』会員で南丹市職員の前田好久さんにそばの魅力と交流の取り組みについて伺った。
?美山のそばはうまい?に励まされ
美山町に『ごんべの会』ができたのが11年前。美山の農林産物をつくる喜び、育てる苦しみ、食べる楽しみを体験することに同調する同士で結成。その取り組みを知って、一人二人と、京都市内からも参加者が増え始めた。その中に、京都市内で蕎麦屋を営んでいる職人さんも参加してきた。
「美山のそばは本当にうまい」「これを、ごんべのそばの名前で京都市内でだしたい」と励まされ、そば作りに挑戦したのが始まり。
比較的手間いらずのそばづくり。荒れ地を作らないこと、白い花がきれいなことから、農の営みのある美しい景観を守れると、休耕田を利用して徐々に作付面積をひろげてきた。
はじめてそばを収穫したときは、たまたまあった石臼で挽き、柄杓の柄をノコで切って、やすりをかけて麺棒にして打ってみた。粗雑ながら香りの深いそばに惹かれた。そばを栽培するだけでなく、地元の者でそばが打てるようにと、会員の蕎麦屋さんに指導してもらい、なんとかそばが打てる地元会員が3人できた。
寒暖の差がおいしいそばを育む
「そばは深い。だから面白い」と前田さん。打つたびに微妙な違いが出る。
「休耕田の管理は人に頼んで草を刈るだけでも10アール当たり3万円ほどかかる。そばを作れば、転作補助金もついてくる。そばは、種をまいてから75日で収穫できる。美山のような耕作困難地に、そばはうってつけ」と前田さん。1日の寒暖の差がおいしいそばを育む。しかし大敵は、鹿の食害。計画の半分しか収穫できないこともあるそうだ。
美山ごんべのそばは、全て季節限定で京都市内の会員の蕎麦屋のみで出回る。そのときだけ、お店の前に「みやまごんべのそば」ののぼりが上がる。
物が作れる村は、足腰が強い
いま、前田さんたちは、このそばづくりに集まる仲間で地域を元気にしたいと、本格的にそばでの村おこしに取り組もうとしている。「物が作れる村は、足腰が強い。考える力が生まれる」と前田さんは言う。
『美山ごんべの会』には、京都市内から大学生や大学院生なども参加してきている。「地元だけでは、気が付かないこともたくさんある。いろいろな人との交流が、村づくりのエネルギー」「いろんな地域のまちづくり、村づくりの団体と交流もしたい」と前田さん。楽しそうに話す前田さんの向こうに、美山の谷風に揺れる白いそばの花が見えるような気がした。
京都自治労連 第1761号(2011年10月5日発行)より