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機関紙 - バイオマスタウン 宮津の挑戦 〜脱原発、再生可能エネルギーで暮らしと地域の再生を〜

バイオマスタウン 宮津の挑戦 〜脱原発、再生可能エネルギーで暮らしと地域の再生を〜

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組合活動
 2012/1/12 0:50

子どもたちが誇れるまちにしたい

昨年の3・11大震災と東京電力福島第一原発事故は、これまでの日本と世界のあり方を根本から問い直すものとなりました。いま各自治体には、原子力発電所に対してどのような態度を示すのか、持続可能な「再生可能エネルギー戦略」を住民参加でどう確立するのかが問われています。京都府内のいくつかの自治体でもその試みが始まっています。

宮津市では、井上正嗣市長が脱原発を表明。豊かな自然環境を生かした「再生可能エネルギー」の事業『宮津市バイオマスタウン構想』(平成21年度)が作成され、暮らしと地域の再生への意欲的な取り組みが行われています。この事業の担当者の小西正樹さんを宮津市自立循環型経済社会推進室に訪ねました。(小西さんは、宮津市職員組合の元書記次長)

チャレンジ求める宮津の現状

宮津市がなぜ『バイオマスタウン構想』に行きついたのかについて小西さんは、「一つは、地球温暖化は、他人事ではなく宮津にとって死活問題」といいます。海水面が1m上昇すれば、確実に天橋立は消滅し基幹産業である観光は大打撃を受けるからです。

もう一つの理由が、宮津の現状からです。「主な産業はサービス業で、景気に左右される。働く場所がなくまちを出る若者、人口が2万人を割る過疎化の進行、市財政の悪化、難しい企業誘致の現状、これらの可能性を追求するよりは、地元の事業者や中小企業と一緒に新しい産業起こしにチャレンジする。何もしないと、このままではじり貧になるとの危機感があった」といいます。

平成19年に『宮津市地域新エネルギービジョン』を市が作成。「自立循環型経済社会」をめざす方針を打ち出し、宮津には何が向いているのかについて「太陽光」「風力」「太陽熱」「バイオマス」を調査。豊富な森林資源をはじめ地域に眠っている資源を活用でき、新しい産業づくりや、農林水産業の活性化ができると選んだのが「バイオマス」でした。

平成21年度に『バイオマスタウン構想』を策定。具体的調査項目として「木質」「竹資源」「廃食用油」「生ゴミ・食品廃棄物」「し尿」「浄化槽汚泥」「海洋資源」が上がりました。

注目される二つの取り組み

この中で中心となっているのが、「竹資源有効活用プロジェクト」と「メタン発酵の取組」です。

「竹資源」活用では、国の交付金も活用して昨年の9月にプラント「宮津バイオマス・エネルギー製造事業所」が完成。1時間当たり1トンの竹から、最大で竹チップ850キログラム、竹粉150キログラム、メタノール7〜10リットル、電力30キロワット/hを作り出すことができ、世界初の試みとして注目されています。

材料となる竹の供給では、宮津には府内の竹の約1割があり、大半が放置竹林で土砂災害が危惧されており、鳥獣被害の温床にもなっています。小西さんら担当者が、地域を回って事業の説明をするとともに、こうした問題解決にもつながるとお願いすると歓迎され、現在では約170ヶ所160ヘクタールの竹の供給があります。


「メタン発酵の取組」は、従来からあるし尿処理施設が老朽化し更新の時期を迎えていることや、観光地で生ゴミが多く、その分処理費用が嵩んでおり、これらの廃棄物の有効活用もできないかということで始まりました。し尿や生ゴミなどをメタン発酵させ、発電や熱利用に、さらにメタン発酵消化液を有機肥料として農地へ還元し、出来た農作物を地産地商(消)で消費するスタイルを確立するというもの。

22年11月に小型のメタン発酵実証試験設備を設置し、実証試験を一年間行ってきました。(もう一年、実証試験を行って結論を出す方針)

一番の課題は「市民に受け入れられるか」と小西さん。「風評被害で農産物の値段が下がらないか、生ゴミの分別への協力、食べてもらえるか、などの問題に正面から向きあい、精力的に検討を行ってきた」といいます。

昨年秋の宮津ええもん市では、“おいしい”“大丈夫”との声が来場者から多く寄せられ好評、1時間ほどで200人ほどの方からアンケートの協力もありました。小西さんは「抵抗感があるかと思っていたが、環境、循環というところに皆さんが興味を持っていただいた」と少し安心した様子。

民間丸投げでは失敗市民参加がカギ

市役所内や市民の中に、「財政的余裕があるのか」との意見があるのも事実。また、バイオマスタウン構想に農水省はそれなりの交付金をつけていましたが、“仕分け”で「効果が無い」とされ、本年度から交付金が出なくなりました。

こうした動きに「何もしなかったら、じり貧状態の現状から抜け出せない」とキッパリ。そして、「3・11以降、空気が変わってきているのではないか、再生可能エネルギー開発にお金が動く仕組みがつくられようとしている」と情勢の変化を強調します。

自治体の果たす役割について小西さんは、「バイオマスで失敗している例は、民間に丸投げし民間任せにしているところ。なぜなら、民間は採算が取れないとわかると撤退する。行政が一定の役割を果たさないとできないのではないか」といいます。

今後の課題として「市民の方がついてきてくれるかどうかが大きなカギ」といいます。いま、宮津市内でもいくつかのNPO団体や個人などが、自然環境を守る取り組み、循環・再生可能エネルギーへの取り組みを行っています。そうした市民とのつながりも生まれ横に広がりかけています。「こうした市民とのつながりが大きくなれば、いろんな相乗効果があり、みんなが考え出すと新たな産業の呼び水となる」と小西さん。事実、いくつかの企業からの問い合わせもあったとのこと。

“宮津方式”として全国へ

“何でそこまでやれるの”と問いかけると、「今取り組んでいる仕事は、少しオーバーかもしれないが、全人類に関係する仕事、社会の仕組みを変えることだと思う。子どもたちが自分のまちを誇れるまちにしたい」「京都自治労連の“再生可能エネルギーへの転換でふるさと再生”は、私の思いとぴったり」「市民に働きかけて、理解していただき一緒に動いてもらった時に大きな喜びを感じる。私たちは、このことに労力を惜しまない。私たちの取り組みが“宮津方式”として全国に広がるようになれば素晴らしい」と小西さんの表情が輝きます。

「農業を営んでいる人が、次の代への希望を持っているかというとそうではない。今、手を打たなければ取り返しがつかなくなるのではないか」、力強く語る小西さんたちの挑戦が2012年も続きます。


京都自治労連 第1767号(2012年1月5日発行)より

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