機関紙 - 退職手当問題のたたかい 府職労 森委員長が語る
京都府:退職手当削減!本質は政治的意図もった公務員攻撃
京都府当局は、府職労に対して国に準じて退職手当削減の年度内実施を提案してきました。これに対し府職労は、「重大な不利益変更であり到底受け入れられない」と職場を挙げての反対のたたかいを取り組んできました。しかし府当局は、退職手当債の起債許可や交付税の減額の可能性等を理由に、12月議会への条例提案を行いました。
今後の各単組の取り組みにも大きな影響を及ぼしかねない今回の府の対応について、府職労執行委員長の森吉治さんに見解を寄せていただいたので紹介します。
財政上のしばりで地方にも押しつけ
11月16日に、国家公務員の退職手当の400万円を超す大幅削減法案は、まともな審議もされず民主、自民、公明などにより、わずか1日で可決されました。さらに政府は、10日後に総務省通知や準則を示し、交付税や退職手当債の許可等で財政上のしばりをかけて地方にも退職手当削減を迫ってきました。
特に都道府県では、年末交渉を妥結終了した団体でも新たに退職手当法案が強行成立されるやいなや、12月議会提案に間に合わすため急遽退職手当の交渉をもったところもあり、6割の団体が年度内実施を決め、残る一定数の団体も年度内実施に向け動いているといいます。
京都府:国に追随する不当で不合理な年度内実施に固執
こうした緊迫した事態のなかで、京都府当局は、
?民間・国・他府県との均衡を図る必要がある
?国に準じた措置をとらない場合、今年度の退職手当債15億円の起債許可がされず、交付税4億円の減額が行われる可能性が高い
?厳しい財政状況のもとで減額分を一般財源で補填する余裕が無い
などを理由に、国に準じての年度内施行を提案してきました。
とりわけ、国家公務員の7・8%カットを地方にも押しつける圧力が政府、財務省から強まっているもとで、今後国からの介入の口実を与えないためにも、退職手当削減で国に従う姿勢をとってきました。そこには全国知事会長である山田知事の姿勢が明確に示されています。
財政問題も大きな問題でした。今年度の京都府の財政と税収は経済の低迷でとりわけ厳しい状況にあります。国から交付税算定や退職手当債の起債許可制限で縛りをかけられるなかで、今年だけで19億円の減収になることについて、府財政は府民のものであるいう立場でのいわば自治体労働者論にもとづく対応も求められました。
当局も「苦渋の決断」として条例提案を強行
府職労は反対を表明
今回の退職手当大幅削減の条例提案は、職員にとっては退職後の生活設計を狂わせる重大な不利益変更で、厳しい勤務環境のもとでも府政を支えて長年頑張ってきた職員にとって、とうてい受け入れられる内容ではありません。
また、国で決まった年度内施行や9カ月単位という経過措置区分は、地方自治体の行政の現場や学校の実情を全く無視したもので、そのまま京都府に持ち込むことは、円滑な行政運営、学校運営に大きな支障が生じかねない問題です。
府職労は、拙速に議会提案することなく引き続く議論をと強く当局に求めてきましたが、当局は「苦渋の決断であり、容認できないという組合の主張は理解できる。今後とも労使の信頼関係は大事にしたい」として、12月議会に条例提案を行ないました。
大幅削減は職員全体の勤務条件問題 労組の役割が一層重要に
当局が最終交渉とした12月4日の交渉では、1月末までに60歳になり現行制度で退職する職員と年度末まで働いた職員とで逆転現象が生じる問題等で怒りが噴出し、再交渉とさせました。翌日早朝から府庁門前で交渉の前後の内容を伝えるビラを配布するなどし、職場世論をつくるとりくみを強めるなかで、府職労への期待の声も寄せられました。
そして5回目となる12月11日の交渉では、年度内施行は譲らなかったものの、「説明できる最大限」(当局)として施行日を3月1日に遅らせ、2月末で60歳をすでに迎え定年退職扱いとなる職員が精神的負担を感じることなく、ひきつづき再任用で働ける環境整備を行うことを約束させました。100万円を超す減額となる今年度末の定年退職者には極めて不充分ではありますが、健康管理、福利厚生等の代償措置を行うことも明らかにされました。当然のことながら退職手当は職員全体の問題であることも主張し、勤務条件全体の改善へのいっそうの努力も表明されました。
財政問題での追及に対し、府民のための施策を後退させないこと、7・8%の国家公務員給与カット措置を京都府に持ち込ませない決意表明をさせたことは重要だと考えています。
京都府が、府民の暮らしの安定と職員・教職員の勤務条件を守ることに一層の責任を果たすことを求めるとともに、府職労も改めてこれらの実現に全力を挙げる決意です。
京都自治労連 第1790号(2012年12月20日発行)より