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機関紙 - フクシマに見たもう一つの日本 〜これでも原発再稼働をすすめるのか!〜

フクシマに見たもう一つの日本 〜これでも原発再稼働をすすめるのか!〜

カテゴリ : 
組合活動
 2013/3/5 12:10

 1月30日、31日、福島県いわき市で全国「小さくても輝く自治体フォーラム」が開催され、京都自治労連から池田委員長と松下執行委員が参加。いわき市、福島大学の関係者への聞き取り調査にも取り組みましたので現地報告をしてもらいます。

原発事故の過酷な現実

 まず現地視察に行った自治体の紹介をしてください。

 福島第一原発から役場まで数?、福島第二原発が立地されている富岡町に行ってきました。富岡町では全町民1万5568人が避難し、4536人が全ての都道府県に避難、京都府にも10世帯13人が避難しています。福島県内には1万1032人、その内約半数の2539世帯5472人がいわき市に避難しています。

 全住民が避難した後の町はどうなっているのでしょうか。

 2011年3月11日で時計が止まった状態です。津波で流され、破壊された家屋や自動車の残骸、雑草が伸び放題の田畑など、無人、静寂の世界です。町職員の説明では、空き家となった所を豚や牛が占拠し、ネズミが大量発生、中には30cm近くの大きなネズミもいるそうです。車の販売店では数十台の車が略奪され、店が破壊されているところもありました。

 原発事故直後の自治体としての対応はどうだったのでしょうか。

 富岡町の対策本部がおかれた文化交流センターと隣接する役場(写真?)に行ってきました。地震直後に設置された対策本部は、翌12日午後3時36分、1号機で水素爆発する映像がNHKで放映されると、町民の避難誘導をしながら午後5時すぎには本部も緊急避難をしたそうです。食べかけのおにぎり、ペットボトル、書類などは放射能に汚染され当時のまま残されていました。(写真?)

 舞鶴市役所は高浜原発から12キロしか離れていません。原発防災計画の策定が急がれていますが、福島での避難の現実はどうだったのでしょうか。

 事故後は電気も遮断され、国や県からの情報は全くなかったとのことでした。
 原発の反対方向に国道を走ると、地震で隆起した道路に車が引っ掛かりそれだけで交通は遮断、常磐自動車道も地震の影響で危険なため通行止め。隣りの川内村で多くの住民が夜を過ごしたそうです。
 計画的なバスの配置や車での避難は、あくまでも道路の安全が確保されて、ガソリンも十分にあり整然と車が流れることを前提とするので役に立たないのが現実とのことでした。

帰還を阻む放射能被害の現実

 放射能被害はどのような状況でしょうか。

 視察した役場と文化交流センターは、12月に自衛隊300人が入って除染作業をしましたが、依然として放射線量は高く5・14μSv/hを示していました(写真?)。原子力安全委員会は平常時は年間1mSv以下としていて、時間単位の被爆線量に換算すると0・23μSv/hになりますから、その20倍以上という非常に高い線量です。町内を移動すると更に高い数値を示すことから、この状態で住民が町へ帰ること、町が再生することに大きな困難を感じました。

 町民の生活はどのように。

 役場は郡山市に本部事務所、いわき市、三春町、大玉村に出張所を設けています。そして現在町内を放射線量に応じて3つに区域分け(左表)、この区域分けを基準に東電の賠償内容に大きな差がつきます。
 しかも、「帰還困難区域」は「5年以上の長期にわたって居住が制限」とされ、帰ることを諦めざるを得ない現実を突きつけています。他の区域も安全に帰還する目途はありません。

対立と解体しかねない地域社会

 町民の生活、地域コミュニティはどうなっているのでしょうか。

 富岡町を含む3町長はいわき市に「仮の町」を設けることを申入れました。いわき市内に役場機能を移して、災害公営住宅、道路、上下水道、医療施設、交通駅など生活基盤整備をして集団移転をする、自治体内自治体をつくる構想です。
 人口33万人のいわき市内に現在2万3000人の避難者が暮らしています。人口規模で京都に置き換えると西京区と右京区を合わせた地域に、与謝野町民全員を受け入れることになります。

 スムーズに「仮の町」構想は進んでいるのでしょうか。

 2年間の避難生活は市民との間に大きなあつれきを生みだしていました。
「働かずに補償金で楽をしている」、「パチンコ屋が混んでいる、玉の出が悪くなったのはなんぼでも金をつぎ込むから」、「病院の待ち時間が長くなってなかなか診てもらえない」、などの市民の声が出てきて、大きな問題となっているとのことでした。

 行政の対応はどうなっているのでしょうか。

 いわき市は、大規模な土地開発と帰還後空白地帯となる可能性などから、集団的避難の「仮の町」ではなく、小規模な「分散型」避難を求めています。住民生活の再建を最優先した国の施策と、東電の責任ある補償が最優先で求められ、待ったなしの状態だといえます。

 浪江町の馬場町長は「事故発生時に国や県、東電から連絡は来なかった。何の情報も無い中、浪江町民は放射能汚染が強い地域に避難し、多数の住民を被曝させてしまった。このことに国も県も東電も誰も責任をとろうとしない」、そして富岡町の遠藤町長は「原発事故を風化させてはならない」と訴えていました。

「帰還困難区域」
年間積算線量が50ミリシーベルトを超え、5年を経過しても年間積算線量が20ミリシーベルトを下回らないおそれのある地域で、5年以上の長期にわたって居住が制限される地域。(国が不動産の買い上げを検討)

「居住制限区域」
年間積算線量が20ミリシーベルトを下回るのに数年かかるとみられる地域。一時帰宅は可。年間積算量が20ミリシーベルト以下であることが確認された場合、避難指示解除準備区域に移行する。

「避難指示解除準備区域」
年間積算線量が20ミリシーベルト以下となることが確実であると確認された地域。早期帰還に向けた除染、都市基盤復旧、雇用対策などを早急に行い、生活環境が整えば、順次解除される。


京都自治労連 第1795号(2013年3月5日発行)より

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