機関紙 - 自治体の独自避難計画では限界 避難すべきは原発! 「原発事故! その時どこへ?」が発行 〜執筆者の池田委員長に聞く〜
京都自治体問題研究所から「原発事故! その時どこへ?」が発行されました。早速ですが、なぜ今、原発避難計画の検証なのでしょうか
池田 全ての原発が発電を停止して3度目の夏を迎えましたが、停止中の原発には数千本の燃料棒が今も膨大な熱と放射能を放出し冷却され続けています。
通常の発電所や一般の機器は「停止」すると安定状態になりますが、原子炉は「停止」後もけた違いの長期にわたって監視、管理を続けなければ、重大な被害を生むという特有の危険があります。この目の前の危険に対応しなければなりません。
隣の福井県に原発があるのですがその規模は?
池田 福井県若狭湾周辺には、現在15基もの原子炉が東西約50?南北25?に密集して設置され、関西電力の美浜1〜3号機、高浜1〜4号機、大飯1〜4号機、日本原子力発電の敦賀1、2号機、原子力開発機構の高速増殖炉「もんじゅ」、既に廃炉作業中の「ふげん」があります。
世界で最も原発が集中立地されている地域です。しかも高浜原発は舞鶴市役所から15?しか離れていません。
国は自治体の責任で原発事故時の避難計画を作るようにいっていますが
池田 放射能は色も臭いもなく視覚、聴覚など知覚でとらえることはできません。しかも放射性物質は府県や市町村の境界など全く関係なく拡散するのですから、自治体単独の避難計画ではだめです。
京都でも舞鶴や宮津をはじめ広大な地域の全住民が、見えない恐怖におびえながら、できる限り遠方に逃げなければなりません。通常の災害避難とは全く異質な困難性と深刻な問題があります。にもかかわらず避難計画の立案、具体化、責任はすべて当該の自治体任せというのが現状です。
原子力規制委員会など国が具体的指針を示さず、各自治体で職員が避難計画を作らざるをえないのが現状です。
再稼働に向けて九州電力の川内原発が動き出しましたが、住民の避難計画はどうなっていますか?
池田 7月15日に原子力規制委員会は川内原発について「規制基準」に適合していると判断しましたが、同時に田中委員長は「基準への適合は審査したが、安全だとは私は言わない」と明言しています。
アメリカでは事故時の住民避難計画について米原子力規制委員会の認可を受けない限り原発を運転できませんが、日本では住民の避難計画が審査の対象ではなく、事故時の住民避難を想定しない原子力規制委員会の「規制基準」となっています。
安倍首相は「規制基準」を「世界で最も厳しい安全基準」と言い換えて国民を欺いています。
自治体の独自の避難計画ではそもそも限界があり、無理があるのは容易に理解することができます。国や規制委員会の責任は重大で住民の命と暮らし、地域社会を守ることを放棄しているといえますね。この冊子を使った学習会も開催していく必要がありますね。
京都自治労連 第1830号(2014年8月20日発行)より