機関紙 - 自民党改憲素案の危険(上) 「自衛権(自衛隊)明記」の持つ意味
「9条改正」の問題点 〜毛利崇弁護士に聞く(京都自治労連顧問弁護士)〜
3月25日の自民党大会において安倍総裁(首相)は、「いよいよ憲法改正に取り組むときがきた」と9条改憲への執念をむき出しにしました。しかし、森友問題で国民的批判が強まる中、改憲案を固まった形で示せば、国民と野党の強い反発があるとの思惑から、9条改憲の条文骨格案は全く提示しませんでした。一方で、国会の憲法審査会の早期開催を強行しようとしています。
そこで、毛利崇弁護士に自民党改憲素案の危険性について語っていただきました。
安倍首相の説明正しくない
自民党は、改憲4項目の素案をまとめ、2018年3月25日の党大会において「改憲の実現を目指す」とした運動方針案を採択しました。この改憲4項目は、「9条改正」「緊急事態条項」「『合区』解消」「教育の充実」を内容とするものですが、本稿では「9条改正」の問題点について指摘します。
報道(2018年3月25日・産経ニュース)によれば、「9条改正」に関する自民党の素案は、現行9条はそのままに、
「第9条の2 第1項 前条の規定は、我が国の平和と独立を守り、国及び国民の安全を保つために必要な自衛の措置をとることを妨げず、そのための実力組織として、法律の定めるところにより、内閣の首長たる内閣総理大臣を最高の指揮監督者とする自衛隊を保持する。(2項以下略)」
を加えるというものです。
この条文によっても、現行の自衛隊は何ら変質するものではないとの説明が安倍首相らから話されていますが、その説明は正しいとは言えません。
先制攻撃も可能と解釈できる
なぜなら「自衛」の中には、「他国から攻撃を受けた際に自国の領域内で軍事力をもって撃退する」という、これまでの自衛隊が方針としてきた「専守防衛」とは異なる概念が含まれているからです。例えば、他国からの攻撃が予想される場合の先制攻撃や在外自国民の保護なども含まれますし、同盟国に対する攻撃に対して、同盟国と一緒になって反撃をする「集団的自衛」も含まれます。仮に、現在の政権が「これまでの憲法解釈と変わらない」と考えても、この先の政権がその考え方を踏襲する保証はどこにもありません。「憲法に自衛の措置をとることができると書いてあるんだから、先制攻撃もできるし、集団的自衛権の行使もかまわない」との解釈をとる危険性があるのです。
その際に、真っ先に危険にさらされるのは自衛官の方々です。国土防衛や災害救助で自衛官に感謝をしている人こそ、自衛官の命を危険にさらすような改憲策動には反対をすべきです。「自衛隊が憲法上に位置づけられていないのはかわいそう」などという感情論に流されて、自衛官や市民の皆さんが戦争に巻き込まれる危険のある改憲を許してはいけないのです。
ましてや、戦争反対の立場をとる方々が、このような改憲に反対するのは当然のことです。
京都自治労連 第1917号(2018年4月5日発行)より