機関紙 - シリーズ「命の水」を考えるII 広域化・民営化で水道は守れるのか
近代水道の始まりは伝染病対策
2013年4月、麻生太郎副総理は、アメリカでの講演で「日本の水道はすべて民営化する」と発言し、政府は水道事業の民営化にまい進しています。
しかし、命の水を営利の対象にしてもいいのでしょうか。今回は、水道の歴史をふり返り、水道事業の目的を考えてみたいと思います。
コレラ対策 横浜に近代水道
幕末のペリー来航によって鎖国は終わり、開国により海外の疫病が日本に入ってくるようになりました。明治になり、コレラや腸チフスなど不衛生な水に起因する伝染病が大流行し、コレラだけでも30万人以上が亡くなります。
政府は伝染病予防を目的にして衛生的で安全な水を供給するために、1887(明治20)年に日本ではじめての近代水道を横浜に建設しました。
衛生行政は公営で運営を
近代水道とは、外部から汚染されないように閉じた導管を使い、ろ過・消毒を行った飲用に適する水を供給する水道のことです。
この当時、「公営か、民営か」という議論があり、「私営水道会社をつくりたい」という動きもありました。しかし政府は、「一切の民営水道を認めない」との方針を決めました。その理由は「衛生行政としての水道は、私企業に任せてはならない。公営で運営するべき」という考え方からでした。
憲法25条が生きる水道法
その後、たび重なる戦争の影響で水道事業の整備は停滞し、アジア太平洋戦争が終わったときの普及率は3割にも届いていませんでした。
1957(昭和32)年、「公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない」という憲法25条の規定にもとづいた水道法が制定されます。水道法には、その目的として「清浄にして豊富低廉な水の供給」と明記されました。
このように水道事業は、明治から現在まで自治体が担い、水道職員の長年にわたる奮闘により、現在の97.9%という水道普及率を実現し、国民の命と健康を守る公衆衛生の向上に、大きな役割を果たしてきました。
京都自治労連 第1962号(2020年5月5日発行)より