機関紙 - シリーズ「命の水」を考える3 ―広域化・民営化で水道は守れるのか―
曲がり角の水道 -3つの課題-
シリーズの第1回目と第2回目では、住民に安心で安全な水を供給する水道事業の意味と大切さ、日本の水道事業の歴史に触れてきました。
今回は、政府が水道法改正の理由とする、現在の水道事業の課題について具体的にのべたいと思います。
(1)深刻な水道の「老朽化」
日本の浄水設備の多くは1960年代から70年代の「高度経済成長期」に建設されたもので、今後も老朽施設の更新需要は年々増えていきます。
現在、耐用年数40年以上を超える水道管は約10万km(地球2周半に相当)で、更新費用は1kmあたり1億円以上もかかり、日本中の老朽化した水道管をすべて更新するには130年(京都府では150年)もかかるそうです(現在の管路更新率で試算)。
(2)「人口減少」と「料金値上げ」の悪循環
日本の水道事業は、企業会計原則に基づく地方公営企業として独立採算で運営されており、費用などは原則として水道料金収入と各自治体が発行する企業債で賄われています。
水道事業は固定費が大部分を占め、人口減少で水道需要が減っても運営コストが大きく下がるわけではありません。水道料金収入は2000年をピークに減り続け、事業維持を困難にしています。水道事業は全国で約3割が赤字となっており、赤字はそのまま私たちが支払う水道料金の値上げにつながります。現行の独立採算の仕組みのままでは、水道料金値上げもどんどん進んでいくことになりそうです。
(3)「人材不足」も深刻
水道事業の職員数は、30年前に比べて約3割も減少しています。採用が抑制されてきたことから現場を熟知している職員が減少し、後継者不足で技術の継承も困難となっています。特に小規模事業では職員が著しく少なく、給水人口が1万人未満の小規模事業では平均3人の職員で水道事業が運営されています。
こうした現状から、政府は、従来の自治体運営には限界があるとして、「水道法改正」が行われました。
管路の法定耐用年数(40年)を超過している老朽化した管路は、漏水事故等のリスクを高めています。
法定耐用年数で更新する場合は年2.5%の更新率が必要ですが、府内は0.68%(H28)と、計算上は全ての管路の更新に約150年もかかります。
京都自治労連 第1963号(2020年6月5日発行)より