機関紙 - シリーズ「命の水」を考える…―広域化・民営化で水道は守れるのか―再公営化が世界の流れなぜ海外の失敗事例に学ばない?
1980年代から世界に広がる民営化の波
水道民営化は、1980年代、まず南米に導入され、次にサッチャー元首相のもとでイギリスが導入、90年代には世界銀行やIMFなどの国際金融機関が債務国への融資条件に入れ、民営化の波は北米から欧州、南米、アジア、アフリカなどへ、「水メジャー」(ヴェオリア、スエズ、テムズ・ウォーターなど)により全世界へと拡大していきました。
民営化後の水道料金は、ボリビアが2年で35%、南アフリカが4年で200%、フランスは24年で265%、イギリスは25年で300%も上昇しています。高騰した水道料金が払えず、南アフリカでは1000万人、イギリスでは数百万人が水道を止められました。料金値上げだけでなく、水質の悪化や滞納者への給水停止により感染症が蔓延するなどの問題も起こっています。
再公営化が世界の流れ
世界では、2000年から2014年の15年間で35カ国の少なくとも180事業が民営化した水道事業を再び公営に戻しています。高額の違約金を払ってでも公営に戻している主な理由は、(1)水道料金の高騰、(2)財政の透明性欠如、(3)行政が民間企業を監督する難しさ、(4)劣悪な運営、(5)過度な人員削減によるサービス低下などです。
パリ市の水道事業は1985年から、民間企業がコンセッション方式などで運営を行うようになりました。契約期間の25年間、経営は不透明で、市議会が経営の情報を企業から得ることも極めて困難でした。再公営化後の調査で、7%と報告されていた営業利益が実は15〜20%だったことも明らかになりました。専門の職員も部署も失った市当局や市議会は企業からの報告を信じるしかありませんでした。
国連が総会で「水と衛生設備に対する人権」決議を採択したのは2010年です。同決議は33カ国が共同提案したもので、水と人権に関するこれまでの歴史のなかで画期的なものでした。
京都自治労連 第1965号(2020年8月5日発行)より