機関紙 - 林業:安定し発展する産業に 林業は町の基幹産業…伐採・植栽のサイクルは数十年規模 森を守り育て住民に安全と安心を
全国で森林の荒廃・乱開発や林業従事者の高齢化・後継者不足がいわれる中で、観光や自然エネルギーなど自治体のとりくみが注目を集めています。
今回は、町内の80%以上を森林で占める京丹波町の森林事業について、農林振興課のCさんにお話を伺いました。
コスト管理は重要…安定した利益が継続に
「林業は京丹波町の基幹産業です」と話すのは、農林振興課に異動して5年が経つCさん。町の持つ森林を管理しながら、そこから出される「木」という資源の販売、活用などに取り組み、そのノウハウを森林組合などに提供しながら地元林業を支援しています。
Cさんは「森林を伐採するコストや輸送コストなどを徹底的に検証しています」と話します。伐採の時の木を倒す向きや枝条などの林地残材の処分方法ひとつでコストが変わってくるそうです。「市場価格に対して伐採・加工のコストを抑える。工業製品などの製造販売と同じことです」。「直径が60センチ以上の木は売りにくい。製材所などはオートメーションが進んでいますから、規格外の大きさの木はラインにのらない。別のコストがかかってしまいます」。
安定した木の供給が低コストでできれば、事業が継続し、雇用も安定します。「京丹波町の林業従事者が安心して事業を続けていってほしいですね」とCさん。農林振興課の働くみんなの思いだそうです。
生産と供給を安定させる
京丹波町では「間伐」のほか、「皆伐(全伐)」を2ヘクタール程度ずつ毎年行い、植栽も行っています。切り出された木は、近隣の販売所に輸送されます。「輸送コストもばかになりません」とCさん。最近は、Webでの材木販売を始めたそうです。
「全国的だと思いますが、戦後から高度経済成長時に一斉に植栽を行った時期があり、人間の年齢構成のように、木の年齢構成に偏りがあります。計画性を持って伐採して植栽するサイクルを町の持つ森林で作ることで、毎年、伐採、植栽、間伐などの仕事が発生する。出荷も安定します。数十年毎のサイクルを管理・維持するのは行政でないとできないと思います」と話すCさんからこの仕事の醍醐味が感じられます。
バイオマス事業や地産地消…地域循環型の町めざす
Cさんはメディアにも取り上げられたバイオマス事業も担当しています。京丹波町では町で出た「木」を燃料に熱を起こし、老人介護施設や保育所に供給しています。「町で出た木を、町の製材所でチップにして町の発熱所に燃料として使っています」「基本はフルオートですが、季節ごとにチップの含水量などで燃焼効率が…」と話はつきません。これらの運行データも農林振興課で管理し、ノウハウを蓄積しています。Cさんら課の皆さんの努力と熱意がうかがえます。「計算方法にもよりますが…」と前置きしたうえで、「燃料代だけなら化石燃料に近づいています」とこれまでの取り組みに自信も!
町内で、燃料だけでなく、林業従事者への安定した仕事の供給も行っていきたいとCさん。「町民の皆さんにも京丹波町の森林をもっと知ってもらいたいですね」と『木育』についても取り組んでいくと話していただきました。
バイオマス……生物資源(bio)の量(mass)を表す概念で、「再生可能な、生物由来の有機性資源で化石資源を除いたもの」をいい、京丹波町では森林から出た間伐材や材木加工から出た廃木材を利用しています。
木育……木材や木製品との触れ合いを通じて木材への親しみや木の文化への理解を深めて、木材の良さや利用の意義を学んでもらうというもの。京丹波町では、京丹波町森づくり計画を策定し、町の森林を活用して、森林教育や地域振興に活かしています。
京都自治労連 第1967号(2020年10月5日発行)より