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機関紙 - あの人に会いたい9医師 谷川 真理さん 精華町の産業医として17年間従事

あの人に会いたい9医師 谷川 真理さん 精華町の産業医として17年間従事

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組合活動
 2020/11/7 10:10

たにがわ・まり=
高知県出身/京都府立医科大学卒業 医学博士/京都府立医大附属病院・京都第一日赤病院・西陣病院内科勤務/オクラホマ医学研究所 研究員/ルイ・パストゥール医学研究センター研究員/京都府立医大 客員講師/精華町立けいはんな診療所所長/精華町産業医(兼任)/百万遍クリニック院長等を経て(現)TS雪月花健康増進プロジェクト発足


安全衛生はチームワークで
産業医は健康職場づくりのお手伝い

公務職場では、人員削減が行われ、仕事が多忙を極める中で、どの自治体でも職員のメンタルヘルス問題など安全衛生が大きな課題となっています。今回の「あの人に会いたい」は、精華町の産業医として、職場の安全衛生に大きく貢献されている医師の谷川真理さんにお話を伺いました。

――なぜ産業医を引き受けられたのですか

谷川 産業医の資格を取ったのは、大学関連の研究所に勤務していた時で、当時、にわかに産業医を増やすことが求められた時代でした。その後、医局の意向もあって精華町の診療所で働くことになりました。子育てをしながらの勤務でしたが、診療以外にも何かやりたいと思っていた時に、尊敬する先輩から「産業医をやってくれないか」と頼まれ、私の思いとタイミングが一致して、引き受けることになりました。

――産業医として心がけておられること

谷川 一つは、出合ったチームを大切にすることです。
私が、精華町の産業医になった時期は、職場のメンタルヘルス問題が大きな社会問題となっていました。精華町においても例外でなく、担当管理職の皆さんも労働安全衛生の仕事に本気で取り組もうとされていた時でした。産業医の仕事は、ひとりではできません。仲間に恵まれ、ちょうど良い時期でした。

教育委員会では、職場が非常に悲惨なのになかなか関与できない当局に、「先生方がこんなに苦労されているのに放置して、命に関わることになれば責任取れません。私、幽霊部員みたいやから辞めさせて」と言ったこともあります。そのようなやり取りなど、お互いが努力して問題に関与するチームワークが生まれていきました。

二つは、「産業医の、谷川です」ということを職員の皆さんに知ってもらうこと。直接顔を見てもらい、お話できる機会には可能な限り参加しています。そのために、法令では2ケ月に1回、産業医の職場巡視など安全衛生委員会活動が義務付けられていますが、私は毎月参ります。

また、精華町には、管理職研修、中間管理職研修、新人研修など複数のメンタルヘルスの研修会を開催してもらい、そこにも参加しています。消防では惨事ストレス研修会なども持たれています。教育委員会では、精華町の小中校8校対象の研修会が毎年行われる際に、私も寄せていただき話をしています(今年は集合できないので個別学校訪問に注力しています)。
「産業医は谷川」と覚えてもらえれば、何か調子が悪い人が出た時、少しでも早く連絡が来るのではないかと思っています。

三つは、公平ということです。
具合の悪い人が出た職場では、水が低きに流れるように、その人が担当していた仕事が、仕事ができる人にドンドン流れていき、仕事をやってもやっても終わらない状態になりやすい。「産業医は、具合の悪い人の事ばかりケアして、その分、私たちに仕事がドンドン振られて超勤なのにケアしてくれない」と思う人もいるでしょう。ですので、そこの上司にお願いするのは、休む人の仕事を、全体に出来るだけ公平に配分することやほかに調子の悪い人がいないか、気をつけてほしいということです。ドミノ倒しにならないためには、不公平感が少ないことが大切です。

職場の産業医は、調子悪い人に適切に対応することも大切ですが、その人にだけ配慮すればよいということではない。職場は病院でもデイケアでもありません。仕事をするために集まった人たちが、その仕事で力を発揮してもらう場です。産業医は、働く人々が職場を健康的にするのを手伝う仕事だからです。

――産業医としてのやりがい、悩み

谷川 休職されていた方が、順調に職場復帰された時はやりがいを感じます。また、産業医の取り組みを通して、職場全体の労働安全衛生に対する認識が変化してきていると実感できるときですね。巡視の時に職場をうろうろしても「あの人だれ」という感じではなく、産業医をやらせてもらって良かったと思います。
悩みは、活動時間が決定的に足りない点です。役場と教育委員会を網羅すると、超勤100時間以上で面接が必要な方は少なくとも100人以上に。ひとり15分ずつでも、月一回の仕事で出来るわけがありません。

また、休職前後の職員とか、役場の外で面談場所を設定したり、電話で長時間の対応が必要なこともあります。法令の規定と、職場の実態とがあまりにもかけ離れており、「これで産業医が責任を取らされるのでは、引き受け手がいなくなる」と考えることもあります。

――コロナ禍、医療現場、保健所の現場が疲弊しています

谷川 もともと、日本の医療や公衆衛生の現場は人員も予算も足りていません。世界のどこにもないような安全で親切な医療を、低い医療費で提供しています。これらの分野にもっとお金をかける政策に変えるために、政治の力が必要です。

――職員に伝えたいこと

谷川 思うようにいかないのが人生です。私自身も、色々なことで困難や失敗にぶつかってきました。しかしそれらの経験が、内科医として患者さんやクライアントさんとやり取りするときに、すごく役に立っています。無駄なことは一つもないと思います。
失敗を恐れず、とりあえず踏み留まって、成長しながら元気に仕事や人生を活きてほしい。そう心から思います。

産業医の仕事とは

産業医は、労働者が安全に健康に働ける職場環境をつくるため、事業所の労働者に対して体調のヒアリングを行い、健康管理のための面接指導や助言などを行う。また、就労可否の判断・休業復職の調整なども主治医と連携して産業医の行う業務。そのため健康診断とその結果に基づく措置、ストレスチェックの実施とその結果に基づく措置、長時間労働者への面接指導、職場巡視、衛生委員会出席、治療と仕事の両立支援などを行う。

産業医は、労働者に面談や助言は行うが、労働者一人ひとりの疾病の診療はしない。診断や治療は外部医療機関の主治医が行う。

産業医は、事業主に対する勧告権を持っている。必要と判断すれば、業務内容の改善を事業主に勧告できる。


京都自治労連 第1968号(2020年11月5日発行)より

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