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機関紙 - あの人に会いたい15 弁護士 大脇 美保さん…ジェンダー平等へ歩みを止めない

あの人に会いたい15 弁護士 大脇 美保さん…ジェンダー平等へ歩みを止めない

カテゴリ : 
組合活動
 2021/7/6 19:20

おおわき・みほ=
名古屋市出身
1987年 京都大学法学部卒業
1987年 司法試験合格
1990年 京都弁護士会入会(市民共同法律事務所)
2005年度 京都弁護士会副会長
2021年度 京都弁護士会会長

【弁護団】
・水俣病京都訴訟 ・薬害ヤコブ病訴訟
・ユニチカ損害賠償訴訟
・日銀京都支店セクハラ訴訟
・京ガス男女賃金差別訴訟
・京都市女性協会嘱託職員賃金差別訴訟


非正規労働者の待遇改善は急務
自治体が民間の模範となる役割を

様々な場所で、「ジェンダー問題」「ジェンダー平等」という言葉をよく聞きます。"あの人に会いたい"今回は、弁護士で2021年度京都弁護士会会長の大脇美保さんをお尋ねして、「ジェンダーとは何か」、「問題解決には何が求められているか」等についてお話を伺いました。

――ジェンダー問題とは、どの様な事ですか

大脇 「ジェンダー」とは、社会的性差、いわば社会によってつくられた性差のことを言います(これと対比する言葉にセックスがあります。セックスは、生物学的性差のことを言います)。例えば、「女性は結婚して子どもを産んで、家事育児をして、家計補助として働く」などはジェンダーです。

「ジェンダーバイアス」とは、ジェンダーに基づく差別で、男は外で仕事、女は家事に専念すべき、といった社会でつくられた男女の役割分担に対する固定観念、偏見による女性に対する評価や扱いの差別がこれにあたります。

「ジェンダーバインド」とは、ジェンダーに縛られているもののことをいいます。女性が家庭補助的に働くという点は、大きなジェンダーバインドと思っています。

弁護士も例外ではありません。弁護士における女性弁護士の比率は、約20%弱。私が弁護士になった30年前は、5%ほどでした。弁護士は男の仕事というバイアスがあります。夫婦弁護士は、出産を機に女性のほうが引退する弁護士もいます。医師の世界も同じような傾向があります。

公務員職場では、臨時・非常勤職員の4分の3が女性(2016年)。私の依頼者にも、たくさんの非正規公務員の方がいます。離婚事件の依頼者は、その多くが出産前は正規職員で、その後非正規になっています。収入が減少し、有期雇用で常に"いつ解雇されるのか"の不安におかれています。コロナ禍で、さらにその不安は大きくなっています。

――職場におけるジェンダー問題解決で何が重要とお考えですか

大脇 非正規労働者の問題も、ジェンダーから来ています。働く女性の7割が非正規で数が多く、収入が低く身分が不安定なことが一番の問題です。

この問題は意識の問題ではありません。よく、「女性は正社員になりたがらない」との意見がありますが、それは全く違います。ジェンダーバイアスで囲まれ、そこしか道がないからそうなっているのです。「女性はやる気になったらできる」という話ではなく、「周りの状況からとてもできない」という話だと思います。

例えば、育児休業の今のシステムは、雇用保険から給付金が支払われているので、収入が高いほうが育児休業を取ることにはなりません。だから女性が育児休業を取り、家事の負担も平等にならず、フルタイムで働くことには無理がある状況が続くことになります。

とにかく、非正規の待遇改善が必要です。

2018年6月に、「働き方改革関連法」が成立。この中で、正社員と非正規労働者との間の不合理な待遇改善を目指して導入されたのが「同一労働同一賃金」です。従来の労働契約法第20条(正社員と有期雇用労働者との間の待遇に関する規定)が、パートタイム労働法に統合され、新たにパートタイム・有期雇用労働法へと改定されました(施行日:大企業2020年4月1日、中小企業2021年4月1日)。

本来なら、民間でも改善が進まなければならないのに、賃金格差の容認や違反企業への罰則がないなどの問題点があり、改善はなかなか進んでいません。大切なことは、労働組合が交渉を行い、法の趣旨に沿って、例えば有給休暇や夏季休暇、子どもの病休などは同一にしていく等、一つ一つ勝ち取って、非正規であっても正規なみの賃金、労働条件に近づけることです。

公務職場はこの法律の適用外ですが、法律の趣旨を生かし、公務職場こそが民間の模範になるような取り組みをぜひ進めていただきたいと思います。

――「ジェンダー問題」、自治体の施策として何が求められていますか

大脇 自治体の施策は、どういう人に重点を置いて政策を作るのかということになります。今、困っている人の現状を見ると、母子家庭・父子家庭だけではなく、高齢の独居女性とか、非正規で働いている女性、親を介護しながら働く非正規の女性、親が亡くなると年金が無くなり生活できない方、そういう、いろんな生き方をイメージして施策につなげていくことが必要です。LGBTの人も生きにくいと思います。だから、そういう人たちにも目を向けて政策づくりをしてほしいです。

そのためにも、いろんな人が自治体にいて、政策にかかわる必要があると思います。政治が大切だとは思いますが、積極的に、そういう人を自治体の中に入れるぐらいやってほしい。それが希望です。

――ジェンダー問題の解決への展望などについてお話ください

大脇 正しいからといっても、なかなか職場や世の中は変わりません。私が弁護士の道に進んだときの問題意識には、常にジェンダー問題がありました。ハラスメントやDV問題の事件もたくさん担当してきました。これらの問題が減少しているとは全く思っていません。

しかし、歩みを止めたら終わりと思っています。自治体の皆さんの仕事もそうではないでしょうか。継続は力です。昨年12月に閣議決定された、国の「第5次男女共同参画基本計画」では、「選択的夫婦別姓の実現」という文言がなくなりました。明らかな後退です。ところが、地方議会では推進の決議も上がり、世論としてはじわじわ広がり、多くの人々が、そう遠くない時期に実現すると思っているのではないでしょうか。粘り強く頑張りましょう。


京都自治労連 第1976号(2021年7月5日発行)より

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