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機関紙 - あの人に会いたい39 龍谷大学政策学部教授(京都自治体問題研究所理事長) 大田 直史さん…環境破壊の北陸新幹線 京都延伸計画にストップを

あの人に会いたい39 龍谷大学政策学部教授(京都自治体問題研究所理事長) 大田 直史さん…環境破壊の北陸新幹線 京都延伸計画にストップを

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組合活動
 2024/12/7 12:20

おおた・なおふみ=
1960年 京都府生まれ 京都大学大学院法学研究科博士後期課程研究指導認定退学。京都府立大学を経て、現在龍谷大学政策学部教授。専攻は行政法。
近著に「行政サービスのインソーシング―『産業化』の日本と『社会正義』のイギリス」(共著、自治体研究社)


 地元自治体・住民無視は地方自治の蹂躙

北陸新幹線京都延伸計画は府民から地下水への影響や残土処理、費用対効果などの疑問が噴出し、南丹市長や京都市長をはじめ、自治体首長から巨額の財政支出による地元負担への懸念の声が出されています。

しかし、国土交通省は、小浜ルートを基本にした3案を8月に示し、12月中にはルートを1案に絞るとしています。この問題をどう考えればいいか、龍谷大学政策学部・大田直史教授にお話を伺いました。

■与党プロジェクトチーム(与党PT)に決定権限はあるのですか?

経緯を振り返ると、北陸新幹線の延伸構想は関西広域連合で検討され、2013年に米原ルート案が示されました。しかし、2015年に与党PTが発足し、1兆2000億円の経費増、工期も5年伸び、8割を京都府の大深度地下トンネル(※)で新大阪まで延伸する京都ルートを採択したとして、この案に基づく予備調査が始まりました。

しかし、この案に対しては、掘削によって出る大量の土砂の処分の困難性、地下水を利用してきた業界関係者から水源枯渇の懸念が示され、環境影響評価が住民により拒否されて、大幅に遅れていました。

2022年末に与党PTの中心メンバーである西田昌司参議院議員(自民党京都府連会長)が、トンネル区間の一部を地上に出す「明かり区間」を南丹市美山町周辺に設け、新駅をつくる新たな提案を行いました。これに対し、南丹市の西村良平市長は、新たな提案で市域に新駅ができれば「利益がある京都府と南丹市に負担金が及ぶことになる。市がつぶれてしまう」(『京都新聞』2023年2月9日付)という見解を表明しました。新幹線建設の費用負担義務が自治体に対して課され、自治体が破綻させられてしまうかもしれないという不条理を告発したものです。

そもそも、全国新幹線鉄道整備法が、国交大臣による工事実施計画の認可の要件や、整備に係る情報の開示や手続を規制する十分な規律を定めてこなかったにもかかわらず、一切権限をもちえない与党PTの提案が意味あるかのように振る舞っていることに問題があります。特に、新幹線鉄道の建設工事に要する費用は、国と都道府県が負担するものとされ、都道府県は、市町村に対し負担金の一部を負担させることができますが、義務の賦課に対し自治体には防御の主張を行う機会が保障されていません。これは、憲法95条が「特定自治体が特別法によって具体的義務を課され自治権を制限される場合の防御手続として住民投票による同意を要求」していることに反します。住民と自治体の意思をないがしろにした新幹線建設で地方自治と地方自治体を蹂躙することは許されません。

■年内にルート案を決定との報道ですが、無謀な計画は止められますか?

国土交通省が8月に3つのルート案を発表しましたが、概算事業費がどの案でも当初より2倍以上に膨れ上がり、工期も15年から最長28年に伸びる見通しです。加えて、東京都調布市では陥没事故が起こり50戸が立ち退きに、岐阜県ではリニア工事で地盤沈下や水枯れが、広島市では長さ40m、幅30mで隆起・出水するなど、大深度地下のトンネル工事による事故や問題が相次いで報告されています。また、車両基地が予定される久御山町近隣や、南丹市、京都市、京田辺市、亀岡市など計画ルート周辺で18以上のグループが生まれ、計画反対や見直しを求める住民運動が広がっています。そうした住民の声を受け、自民党京都府議団は11月11日に、現行の小浜ルートを再考するよう国に求める要望書を西脇隆俊京都府知事に提出しました。(その後、西田氏から修正を求められ、ルート再考の要望は修正)

自治体に具体的義務を課し、権利を制限する計画に対して、少なくとも関係自治体の合意が必要です。現行法上も知事は、工事実施計画の認可前に国交大臣から意見を聴取されることになっており、京都府民や府内自治体の立場を代表する知事の意見を大臣は無視できません。関係自治体首長が反対の態度を公然と示し、協力を拒否すれば、今回の新幹線延伸計画は実行不可能です。与党PTの圧力に屈することなく、京都市長をはじめ関係市町村長や京都府知事がきっぱりとした態度を示すことができるよう、もう一回り運動を広げていけるかが、今、問われているのではないかと思います。

■最後に、自治体労働者に期待することをお話しください。

私は、京都府立大学勤務時に京都府職労の役員や、「大学法人労組」初代委員長をし、現在は京都自治体問題研究所の理事長をしています。やはり、自治体で働く皆さんには、住民の皆さんのために仕事をする、地方自治を守るという原点を大事にしてほしいと思います。北陸新幹線延伸計画でも他のことでも、「おかしいことにはおかしい」と声を上げて下さい。皆さんの活躍に期待しています。


京都自治労連 第2017号(2024年12月5日発行)より

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