機関紙 - シリーズ「命の水」を考えるIV ―広域化・民営化で水道は守れるのか―
改正水道法のポイントと懸念の広がり
「水ビジネスは100兆円規模」「広域化、民営化を」との経済界の要請を受けて、2013年に麻生太郎副総理は、「日本の水道はすべて民営化する」と発言。政府は、2018年12月に水道法を改正しました。
民間参入を導く水道法改正の中身
水道事業は、水需要の減少、水道管の老朽化、職員の減員など3つの課題に直面しています。その解決のために政府は、水道事業の「基盤の強化」を図ることが必要と、広域化(事業統合)と官民連携(民営化)を趣旨とする水道法改正を行いました。
「基盤の強化」とは、要するに「経営の改善」であり、事業経費の削減が求められます。そのために改正法では、事業規模を大きくすること(広域化)と、「適切な資産管理の推進」と称して民営化への条件整備を行いました。
また、改正法では「官民連携の推進」として、水道事業に「コンセッション方式」が導入されました。コンセッションとは、公共事業の運営権の民間移譲です。水道施設の所有権、災害時責任は自治体に残したまま、運営権を長期にわたって民間に売却することです。民間企業にとって災害時の対応責任を負うことは経営上の大きなリスクでしたから、水道法改正によって企業は水道事業に参入しやすくなったわけです。
住民自治問う自治体の責任
このような動向をふまえて京都府は、2018年11月に「京都水道グランドデザイン」を策定しました。京都府を北部、中部、南部と3つの圏域に分けて広域化を推進するために、府の働きかけがすすめられています。
一方、改正水道法に反対や懸念を示す自治体も多くあります。新潟県議会は反対を表明し「コンセッション方式の導入は、災害発生時における重大な懸念があり、住民の福祉とはかけ離れた施策である」と指摘。長野県議会は政府に対して「水道事業の維持に必要な財源を確保するためには、国からの十分な財政支援が必要」との意見書を提出しています。
運営 | 最終責任 | |
民営化 (英国で実施) |
民間事業者が自由裁量で運営 | 民間事業者 |
業務委託 (水道法改正前から実施可能) |
民間事業者が仕様発注書 (自治体の指示)に基づき運営 |
自治体 |
コンセッション (水道法改正後から実施可能) |
民間事業者が自由裁量で運営 | 自治体 |
(水ジャーナリスト 橋本淳司氏作成)
京都自治労連 第1964号(2020年7月5日発行)より