機関紙 - シリーズ「命の水」を考えるVI 最終回 ―広域化・民営化で水道は守れるのか― 命の水を、営利目的の商品にしてはならない
再公営化が世界の流れ
このシリーズでは、6回にわたり「なぜ広域化・民営化推進なのか」を考えてきました。
第2回は歴史をふりかえり、明治期の近代水道の始まりは、清潔な水の供給を目的とする伝染病対策だったこと。1957(昭和32)年に制定された水道法は、憲法25条をふまえた法律であり、水道事業の目的は「清浄にして豊富低廉な水の供給」と明記されたことを紹介しました。
第3、4回では、水需要の減少、水道管の老朽化、職員の減員という水道事業が直面する3つの課題に対応するために、広域化(事業統合)と官民連携(民営化)を趣旨とする水道法改正の問題点を確認しました。
第5回では、水道をビジネスチャンスと捉える水メジャー(ヴェオリア社、スエズ社など)により、1980年代から世界に広がった民営化が水道事業に何をもたらしたのかを見ました。民営化を導入した自治体では、水道料金の高騰、水質の悪化、過度な人員削減によるサービス低下などの問題が噴出し、現在では再公営化が世界の流れです。
フランスのパリ市は、1985年に水道事業を民営化し、2010年に再び水道サービスを公共にとり戻しました。パリの自治体職員は、民営化の苦い経験から「民営化にすれば経費が削減され、運営も安定する」という幻想を強く批判しています。
しかし日本ではどうでしょうか。2013年に麻生副総理がアメリカで「日本の水道はすべて民営化する」と発言するなど、安倍政権は「水ビジネスは100兆円規模」と浮足立つ経済界や水メジャーの要望に応えて民営化にまい進しています。
そして京都府は、2018年に「京都水道グランドデザイン」を策定。京都府を北部、中部、南部と3つの圏域に分けて広域化等を推進するための準備がすすめられています。
安心の水は、自治体の責任で管理運営しているから
水道は、水を人の飲用に適する水として供給する施設です。私たちは、水なしでは1週間も生きられません。蛇口をひねると安心して飲むことのできる水が24時間出てくるのも、自治体が責任をもって管理運営している水道があるからです。
水道事業は、水道職員の長年にわたる奮闘により、安心・安全で低廉な水道が、それぞれの自治体の自然環境を活用しながら確立してきました。そして、災害や事故が発生したときは、24時間、季節を問わず、水道職員全員の協同の力で復旧への取り組みが行われています。
自治体の最大の責務は、「住民の福祉の向上」です。住民の「命の水」を、営利目的の単なる商品にすることは許されません。
京都自治労連 第1966号(2020年9月5日発行)より